今回もブログを見て、ハンドルブレでお悩みのお客様が来店されました。タイヤを交換してから症状が発生し、かなり酷くとても走れるような状態ではないとのことです。車体ごと振動してしまいハイウエイシミー(高速域の微振動)所では無いとの事です。
並行輸入したミシュランのパイロットスーパースポーツ(PSS)を、普段ミシュランを取り扱っていないタイヤ屋さんで装着したとのことです。果たして原因は何でしょうか?※かなりの長文注意です。。。
車両はBMW 135i (e82)です。直列6気筒3Lエンジンにツインターボで300psオーバー、1.5トン程度の車重でFRレイアウトです。今回の車両はチューニングでトルクが50kgf・mオーバーとの事です。通常は試乗するのですが、今回は遠慮しておきました。
ホイールは純正18インチ タイヤはミシュランPSS 225/40ZR18 255/35ZR18 です。フロントブレーキは6ポットキャリパーです。
とりあえず現状把握の為に、BMW専用のハブアダプターとフランジプレートを使用してHUNTER
GSP9700 ユニフォーミティテスターにセットします。
タイヤに荷重を掛けながらユニフォミティを測定します。
フロントです。RFVが100Nと45N 重量バランスが60g以上ずれています。
GSP9700から何やらメッセージが。。。
詳細を確認すると2次RFVが悪いようです。簡単に言うと楕円形になっています。
さらにプロットを確認すると1回転中に2か所RFVピーク(黄色の丸印)が有ります。ホイールが変形しているのでしょうか?
リアです。RFVが70Nと120N こちらも重量バランスは滅茶苦茶です。本当にホイールバランスを取ったのでしょうか?
現状の結果です。重量バランスで60g前後、RFVが70~120Nでおまけに一番良い45Nのタイヤが卵型と言う廉価アジアンタイヤ並みの数値でした。ここまで酷いと普通に走行するのも困難だと思われます。
原因を追究するために
ユニフォミティマッチングで組立直します。
レバーレスタイヤチェンジャーでタイヤを外します。
ホイール単体のビードシート部の振れ(RRO)と重量バランスを測定します。
ホイール単体の重量バランスですが、結構悪いです。※赤丸の数字を覚えておいてください。
原因はこれです。外国ではTPMS(空気圧センサー)が義務付けられている事が多いので、センサーを装着した場合に重量バランスが取れるようにホイールを削って有ります。日本の場合はセンサーの周波数の関係で使用不可なので、センサーが付かない分重量バランスが悪くなってしまいます。 更に悪いことに、通常タイヤ交換をする場合にバルブ位置にタイヤの軽点を合わす場合が多いのでホイールの軽い部分とタイヤの軽い部分が一致してバランスウエイト(錘)がものすごく沢山付いてしまいます。※以前の
記事参照ください
良くバランスウエイトが沢山有るのはダメで、ウエイトを減らすように組み替えている方を見ますが、ほぼ無意味です。(資源的、見栄え的には有効)
バランスウエイト最小化のみに拘っているお店が有るとすれば勉強不足です。(私も昔はそうでした)この辺はその内ブログで取り上げたいと思います。
ユニフォミティマッチングでタイヤを組み込んでいきます。特にミシュランは組込みに秘密の方法を使います。組込み後再度測定してタイヤを位相合わせします。
ユニフォミティマッチング後の測定結果です。RFVが当初の100Nから30Nに激減しています。
特筆すべきは、重量バランスです。ホイール単体の重量バランスと比べて僅か3gしか違いが有りません。(ホイール単体の赤丸と比べてください)これはタイヤ単体の重量バランスがほぼゼロと言う事になります。ミシュランには軽点が必要ない事の現れです。
重量バランスは、1g単位でゼロバランスにします。 これを4本実施します。
装着時の
偏芯取付も微振動が出ますのでハブ廻りとホイールを清掃して固着防止グリースを塗布します。
RFV1次ピークを上死点にして装着します。
ユニフォミティマッチング前と後の結果です。左:施工前 右:施工後
RFVが激減しています。タイヤにより85%減になっています。
2次RFVが悪かった2番のセットも正常になりました。原因はホイールの変形ではなく組付け不良だったようです。
タイヤ、ホイール個別数値です。 ホイールの縦ブレ横ブレは0.17mm以内と良好です。BMW純正は精度、強度共に申し分ないです。タイヤ単体も20~70Nと流石ミシュランPSSです真円度が抜群ですので、バーデンでも一押しのタイヤです。唯一の心配はミシュランは右側通行用しか作っていないので個体差で若干左流れが有る場合が有ります。
RFV10Nとは、荷重された(走行状態)状態でのブレが僅か0.06mm程度です。回転させるとほぼ止まっているように見えます。
今回の振動の原因は、オーナー様が心配していた並行輸入のミシュランの品質ではなく、タイヤの組込み不良と思われます。特にミシュランやコンチネンタル、ピレリ等は、ホイールのリム形状により組込みに経験と技術が求められます。普通に組むとかなりの確率で篏合不良になりますのでご注意ください。(組み方でここまで変わるとは思いませんでしたが。。。。)
RFVが劇的に改善したので、オーナー様には”5m走行して頂ければ違いが分かると思います”とお伝えして納車しました。 数値的には250km/hオーバーでも問題ないレベルです。
念のため後日確認させて頂きました所”全くの別物になったみたいで、全く問題ない”との事でした。タイヤ交換後すぐに来ていただいて良かったです。RFVが悪い状態で走行してしまうとタイヤにクセが付いてしまい改善不可能になってしまいます。
オーナー様ご利用ありがとうございました。
バーデン一押しのミシュランタイヤですが、7/15までキャンペーンを行っております。
特にPSSを購入していただいた場合は、通常のタイヤ交換工賃でユニフォミティマッチングを行いますのでこの機会に是非ご利用ください。
Posted at 2012/07/01 17:49:53 | |
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ユニフォミティマッチング | 日記