潜入! トヨタ2000GT コレクション!! (３)

世界屈指のトヨタ2000GTコレクター“Ｓ氏”を最後に訪れたのは、もう１年以上も前の事。

あれから随分と月日が経過し、コレクションも増えたのではないだろうか。

S氏のことだ、年始恒例の日本国旗タイプの2000GTも入手したに違いないと思い連絡をとってみると、案の定、入手したとのこと。

早速取材の申し入れをすると・・・


「いつもアピタピアゴモデルじゃ詰まらないでしょ、たまには他の企画モデルでもご覧になりませんか？　とは言ってもこちらは状態が悪くて、丁度レストアしたところなんですよ。」


なんと、アピタピアゴの他にも2000GTをコレクションされていたのか！？　当然断る理由もなく、二つ返事でお願いしたのは言うまでもない。

そして案内されたのはレストアを施したという某整備工場の一角。

そこに佇むのはグリーンとライムイエローが鮮やかなトヨタ2000GT！
そう、スピードトライアルで数々の世界記録を樹立したマシンだ！！

たしかこのモデルは2015年１月１日にAEONで発売されたチューニングカーシリーズだ。

でも少しばかり様子が違うような気がするな・・・


「気付きましたか、レストアしたのはこのモデルなんですよ。」


そう言われて改めて観察してみると幾つものレギュラーモデルとの相違点を確認出来た。


まず目に付くのはサイドのスポンサーロゴだ。
そもそもこのモデルにはスポンサーロゴは無かった筈だ。





だがＳ氏所有車にはEsso、Denso、NGKのステッカーが貼り付けられている。


「そうなんですよ、まずはココが再現されてなかったことに不満を感じましてね。ならば、と再現したんです。
Ｅｓｓｏは画像データを入手出来たので容易に再現出来たんですけど、Ｄｅｎｓｏのロゴはあまりに旧過ぎた為にデータが何処にも無くて・・・仕方なく自前で作成しました。
ＮＧＫに至っては余りにサイズが小さかったもので、ペイントで色だけそれっぽく再現しました。遠目には判らないでしょ？」





確かにこの極小サイズなら色表現だけでも雰囲気は伝わるな。

ちなみにこのステッカーはスピードトライアルのスタート３０分前に急遽、貼られたらしい。

おや？トミカの2000ＧＴはサイドのリアガラスは無かった筈だが・・・


「そこも気に入らなかった所で、今回は透明プラ板で再現しました。左側のそれについては実車のスピードトライアル車に習ってボディ同色にしました。色味を合わせ切れなかったのは素人作業故のご愛敬ということでご勘弁を。」





よく見るとフロントの補助灯周りも雰囲気が違うな。
それにバグガードも再現されている。


「補助灯周りは透明パーツじゃなかったので立体感が出るようにペイントするとともに輪郭を修正しました。
それとこれも実車に習って補助灯を追加装着しました。ちょっとサイズが違いますがね。
バグガードは是非とも再現したかった部分で、今回のレストアでは個人的に最も気に入っている部分です。カッコイイでしょ？」


確かにバグガードが有ると無いとではディテール感に大きな差がある。これの再現は効果大だ。


「実はこのモデルを２台入手していたこともレストアに踏み切る理由になったんです。どうせなら２台を並べたところを記録されては如何ですか？」


さすがは2000ＧＴコレクターＳ氏。レストアまで見越しての入手とは恐れ入る。
申し出を有難く受け取り、２台を並べて頂くことにした。








うむ、こうして並べて見るといかに細かく手を加えているのか良く分かる。

しかし本来、スピードトライアル車は世界に１台しか存在しない筈。　なぜここに２台が並べられる状況が実現したのだろうか？



「実はスピードトライアル車はもう現存していないと言われているんです。
スピードトライアルが終わった直後、モーターショーに展示され、その後は全国各地のディーラーを巡って展示されたんですが、噂によるとアメリカに売却されてしまったそうです。
アメリカに売却される以前、カラーリングやフェンダー形状などが変更され暫くは日本国内のレースに出走していたようで、当時の姿を捉えた貴重な写真が残ってます。


愛知県のトヨタ博物館の開所にあたってスピードトライアル車を展示するために懸命に捜索したそうですが発見には至らず、仕方なくレプリカを製作したとのことです。
スピードトライアル車の行方は未だ不明で、つまりここに見られるスピードトライアル車は全てレプリカなのです。レプリカなら何台有っても不思議ではないでしょう。」









「本物のスピードトライアル車の写真と比較すると分かりますが、フェンダーやリトラクタブルヘッドライトのカバーの形状など相違点が確認出来、スピードトライアル車は試作車をベースにしていることが明らかです。」




何と、そんな事実があったとは知らなかった。


「さらに付け加えると、この個体は僅か数台のみ生産された最初期の試作車“280A/Ⅰ型”と呼ばれる試作1号車で、スピードトライアルに用いられる以前にレースの練習車としてサーキットを走行させていたのですが、走行中に燃料漏れを起こし、ピットに戻ってイグニッションを切った際のアフターファイアーで漏れた燃料に引火して燃えてしまったそうです。
暫くの間放置された後、スピードトライアルのプロジェクトが立ち上がり、ベース車両として、焼損したこの280A/Ⅰ型試作1号車に白羽の矢が立ったと言う訳です。」


興味深い事実だ。
他にも色々と知られざる2000ＧＴストーリーがあるのかも知れないな。


「事実、他にも興味を惹く話があるようですよ。フフ・・・」

今後もＳ氏の動向から目が離せないな。。









この取材を終えた３か月後
更に新たなコレクションを入手することになる・・・