こんばんは。
各地で雪みたいですね。
名古屋でも降るって噂を耳にしましたけど、体感気温的にはまだっぽい気がしますね。
リア充爆発とか別にどうでもいいんです。
僕には
嫁が居るんで(`・ω・´)
さて。
1年ぐらい前に途中まで書いてあった物。
ちょっと仕上げてうpしてみます。
こんな夜にぴったり☆
愛しい彼女とお読みに頂けたら幸いです。
ジャンル的には家族物。”B級スプラッター”。
と言ってもド素人が書いた物なので、過度な期待はしないでください。
”スプラッター”の意味を知らない人、”知らぬが仏”という言葉があります。
画像検索はやめた方がいいかも知れません。
まずは
Wiki等、活字で調べてから読むか決めて下さい。
恐らく15~20分ほどで読み終わるぐらいの量だと思います。
平仮名を多用しているのは仕様です。
では、始まり始まり~
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『おいしゃさんごっこ』
――1――
「ぼくのおとうさん」
三年一組 加納 祥太郎
ぼくのおとうさんは、おいしゃさんです。
だいがくびょういんではたらいていて、びょうきの人をなおしています。
むずかしいしゅじゅつをしていると、おかあさんが言っていました。
あと、おとうさんはえらいから、みんなにたよりにされていて、おしごとがいっぱいあるんだよと、言っていました。
だから、おとうさんは、にちようびもいつもおしごとです。
ぼくはすこしさみしいけど、おしごとをがんばっているおとうさんがだいすきです。
おおきくなったら、おとうさんみたいなりっぱなおいしゃさんになりたいです。
学校からの帰り道。祥太郎とその母、美那子は仲良く手を繋いで歩いていた。銀杏並木の葉もすっかり落ちてしまい、冷たい木枯らしが頬を撫でる。
「しょうちゃん、今日の作文上手だったわよ」
「ありがとう! ぼくね、大きくなったらおいしゃさんになるんだ!」
実際、祥太郎は父の仕事に興味があるようで、どんな仕事をしているか聞いている時がある。どの程度理解しているかは――いや、ほとんど理解できないだろう。
「頑張ってお父さんみたいな立派なお医者さんになってね」
無邪気に笑う祥太郎の頭を、優しく微笑みながら撫でる。しかし、美那子は心配もしていた。
確かに夫の浩次は立派な医者だ。四十代で外科部長になる程の腕と人望を持ち、部下や職員達からの信頼も厚い。遠方から噂を聞きつけて診察に来る患者も珍しくない。
しかし、少し働きすぎではないだろうか。元々身体は丈夫な方だが、やはり年齢には勝てない。医者というのは体力勝負でもあるのだ。
「おかあさん、きょうのばんごはんはなぁに?」
「そうねぇ、今日はシチューにしようか!」
「やったぁ!」
この満面の笑みのおかげで、美那子の心は癒されていくのだ。
「ただいまー」
「あ、おかあさん、おにいちゃんおかえりなさい」
「ただいま。裕美、お留守番してもらってありがとう」
「いえいえ、おにいちゃんのじゅぎょうさんかんだもんね。あたしももう一年生なんだから、一人でおるすばんぐらいできるよ」
「えらいねー、よしよし」
「えへへぇ~」
我慢強いわが子を心配しつつ、美那子の顔は穏やかな愛で溢れていた。ませた娘の成長を感じ、とても愛おしく思う。
「じゃあ夕飯の支度をするから、しょうちゃんは手洗いうがいして宿題やっちゃいなさい」
「はーい」
ドタドタと走る背中を見送り、台所へと向かう。
さて、今日ぐらい夫は帰ってくるのだろうか。
部長室で部下と共に資料をまとめる浩次。このペースなら、三時には終わるだろうか。二人でやるにはきついな。しかし明日の会議で使う資料だ。この方針が院内で通れば、職員の負担も減り、結果的に救われる患者も増えるだろう。
そんな事を考えながら休憩を取っていた時だった。
「加納先生、先生のところは結婚して何年になるんですか?」
「なんだ藪から棒に」
「いやね、僕んとこ来月で結婚して3年なんですよ。それで、プレゼント何あげたらいいかなって思いまして」
「指輪とかネックレスとかでいいんじゃないか?」
「いやぁ、アクセサリー類はもう散々あげてるんですよ」
「じゃあ鞄は?」
「それは去年あげました」
「鞄なんて何個あっても嬉しいもんだろ。あとはホテルのレストランでも予約しておけばいい」
「ホテルのレストランですか・・・。なんか小っ恥ずかしくないですか?」
「何ガキみたいな事言ってやがる。女は雰囲気が大事なんだよ」
「なるほど~。そうやって先生は数々の女性達を――」
「おい。俺は帰るぞ」
「・・・はい?」
「すまん。用事を思い出した。後は頼む」
「いや、頼むったって・・・。この量ですよ? 朝まで掛かっちゃいますよ」
「朝には終わるんだろう?」
「・・・僕の上司はどうやら人間に化けた鬼だったようです」
「鬼の居ぬ間にって言うだろ? 用事が済んだら、朝までには戻るから」
「いや、全然うまくないですから! ってもう行っちゃうんですか!」
「すまん、必ず埋め合わせするから」
悪い事をしてしまった。しかし、今日はどうしても帰らなければいけない。
今日だけは。
なぜなら――
「美那子、ただいま」
「お帰りなさい、あなた。二人とも寝ちゃったわよ。結婚記念日のお祝いするんだぁって言ってたのに」
そう言いながら美那子は食事の用意を始める。
「悪い。明日の会議で使う資料をまとめてたんだ。今部下に任せてきたから、また戻らなきゃいけない」
なるほど。道理で荷物が無いわけだ。
「そう。あんまり無理しないでね。ってこれじゃ、部下の人に無理しろって言ってるようなものね」
「まったくだ。とりあえず明日の会議が終われば雑務はひと段落するし、入院患者達も皆退院を待つだけだ。それでだ、今度の週末に久しぶりに温泉でも行かないか?」
「ほんとに? いいの?」
「あぁ。もう何年も旅行なんて行ってないだろう。部下達には話してある。大丈夫、何かあっても信頼できる仲間達だ」
「子供達も喜ぶわ」
「俺は美那子に一番喜んでもらいたいんだよ」
「また、そうやって口ばっかりうまいんだから」
浩次の隣に座る美那子。その身体を優しく抱き寄せ、そっと唇を重ねる。
どうにもならない仕事馬鹿な夫だが、家族の事もとても大切に考えている。
そんな夫を心の底から愛している事を、美那子は改めて実感していた。
――2――
朝食の準備をしていると、裕美が起きてきた。放っておいても勝手に起きて来て、気付いたらつまみ食いをしている。お腹を下しやすいのはその為だろうか。
「おはよう、裕美ちゃん。あれ? 今日はつまみ食いしないの?」
「そんないっつもしないもん。つまみ食いばっかりしてたら太っちゃうよ」
好きな男の子でもできたのかしら。
「おかあさん、なにニヤニヤしてるの?」
「なんでも無いわよ。朝ごはんにするから、しょうちゃん起こしてきて」
「はーい」
女の子の方が早熟だとは言うが、娘もそんな年頃になったのか。
・・・夫に話したら卒倒するだろうか。
朝食を食べていると、裕美が見付けて聞いてきた。
「おかあさん、そのネックレスどうしたの?」
「これ? 昨日お父さんにもらったのよ。またすぐお仕事に行っちゃったけどね」
「おとうさんかえってきたんだ! いいなぁ、あたしもあいたかったよ」
「ぼくもあいたかったなぁ」
「それで今度のお休みに、みんなで温泉に行こうって言ってたわよ」
「ほんと? やったーーー!!」
二人とも大喜びだ。しかし、一番楽しみにしているのは美那子自身かもしれない事を分かっていた。
祥太郎が学校から帰ると、裕美が一人でテレビを見ていた。美那子は仕事で、帰宅はいつも午後5時近くなる。まだ2時間も後だ。
「ゆみちゃん、なんのテレビ見てるの?」
「おにいちゃん、おなかいたい」
そう言ってへその下辺りを押さえる。顔色が悪い。相当辛そうだ。もっとも、祥太郎にはそこまで分からないだろうが。
「いつから?」
「あさから。でもだいじょうぶかなっておもって・・・」
「おくすりはのんだ?」
「さっきのんだ」
困った。頼りの母はまだ帰って来ない。祥太郎には成す術は無い。
――はずだった。
「わかった。ぼくがなおしてあげる」
「えっ? どうやって?」
「しゅじゅつをするんだよ」
「おにいちゃん、やったことあるの?」
「ないけど・・・だいじょうぶ。いつもおとうさんにきいてるからできるよ」
「・・・わかった。じゃあ、おにいちゃんにしゅじゅつしてもらう」
できると言ったものの、正直自信は無かった。それでも、妹を助けたいという一心で父の言葉を思い出す。
『まず、ベッドに横になって麻酔をするんだ。お茶碗みたいな物を口に被せる。そうすると患者さんは眠って、痛みを感じなくなるんだよ』
「ゆみちゃん、まずはそこのテーブルにねて。ますいをするから」
「うん・・・」
不安でいっぱいの裕美だが、兄を信じている。いつも使っている食卓へ、ゆっくりと横になる。
そして、お茶碗を口に。
「ねむたくなってきた?」
「んーん、ぜんぜん」
おかしい。やはり駄目なのか。諦めかけたその時、祥太郎はある事に気付いた。
「ここにすきまがあるよ。しっかりおさえなきゃ」
ぐっ!
「いたい! おにいちゃんいたいよ! くるしいよ!」
「だいじょうぶ! すぐにねむたくなって、いたくなくなるから!」
そばにあったクッションで顔全体を覆いながら、押さえ続ける。
「んー! んーっ!」
まだか。
「んー! んー・・・ん・・・・・・・」
しばらくすると裕美はおとなしくなった。
「ゆみちゃん? ねむたくなった?」
返事は無い。
「これ、いたい?」
試しに頬をつねってみたが、やはり反応は無い。
「ますい、せいこう・・・かな」
『次に消毒をして、お腹を切るんだ。この時少し血が出る。でも、お腹を切って悪い部分を取らないと、ずっと痛いままだし、何より痛いのが広がってしまうんだ』
消毒液は、自分が怪我をした時に母が使ってくれた。裕美の服をまくり、その小さくて真っ白な腹にかける。部屋に消毒液の臭いが充満した。
『切るときはなにをつかうの?』
『メスっていう道具だ。カッターナイフぐらいの大きさで、小さい包丁のような物だね』
「カッターナイフはつくえのひきだしに・・・」
あった。危ないから一人で使ってはいけないと、母に言われていた事を思い出す。しかし妹を助ける為だ。そんな事に構ってはいられない。
刃を伸ばし、へその下辺りへとあてがい、ゆっくりと力を入れる。
――パキンッ!
折れてしまった。
どうしよう。妹を助けられない。いや。
台所から包丁を持ってくる。祥太郎の手にはまだ大きい。
「ちょっと、大きいな。いたっ」
誤って手を切ってしまった。血が滴る。その赤色が、祥太郎に恐怖心を抱かせた。
妹を見ると、いつもより一層白く見える腹を出して眠っている。
「ゆみちゃん、ちょっと血が出るよ。でも、いたいところをとってあげるからね」
そう言って自分を奮い立たせる。もう、覚悟は出来ていた。
もう一度へその下辺りへと垂直に包丁を立て、体重をかけて差し込む。
ズズッ・・・
傷口から滲みはするものの、思った程血は出なかった。そのまま包丁を前後させながらゆっくりと下腹部へと切り口を広げて行く。
部屋には、消毒液の臭いをかき消すように鉄錆の臭いが充満していく。
「これぐらいでいいかなぁ」
『お腹を切り開いたら、悪いところを探すんだ。予めレントゲンを撮ったり、患者さんに聞いたりして予想をしておく』
レントゲンという物は良く分からないが、妹はへその下をさすっていた。
「たぶんこのへんに・・・」
傷口に手を入れ、奥を探る。何か、柔らかい物に触れたような気がした。
「これ・・・かな・・・」
外に出そうにも身体の中で繋がっていてどうする事もできない。
力任せに引っ張り出すと、黄色い脂肪と共に血が顔中に掛かる。
「うわぁっ」
それは今まで見た事も無いような物体で、まるで何十センチもあるカブトムシの幼虫のようだった。妹の身体の中へと繋がっている。祥太郎はそれが妹の痛みの原因であると確信していた。それ程までに禍々しい物体だった。
「これをとれば、ゆみちゃんは治るんだ」
いくら引っ張っても出てくる。だから妹はいつもお腹が痛いと言っていたんだ。
「このっ・・・このっ・・・」
祥太郎は既に全身真っ赤に染まっていた。裕美が寝ている食卓からも血が滴り落ち、床は赤々と染まり、所々に脂肪が浮かんでいた。
祥太郎が力を込める度、裕美が弱々しく揺れる。
その顔に、表情は無い。
――3――
「昨日は祥太郎の好きなシチューだったから、今日は裕美の好きなオムライスにしようかしら」
嬉しそうに夕飯の買い物をする美那子。
職場では、さっそく同僚にネックレスの事を言われてしまった。夫婦円満の秘訣? そんな事、とても恥ずかしくて言えやしない。
それは同時に、女性としての若さを保つの秘訣でもあるのだから。
「そうだ、浩次さんの好きなホルモンも買って行こう。あの人、これとビールが大好きなのよね」
子供達ももう何年か経てば恋をし、結婚して家族を持つだろう。愛する人との時間、家族の温もり、そういったかけがえのない物の存在を知る。
それらを守る為に全身全霊を注ぐだろう。
そしたら私達夫婦は、再び2人で仲良く余生を過ごそう。
「裕美の初恋の相手、どんな子だろう。うふふ」
そんな事を考えながら、家路を急ぐ美那子だった。
――4――
祥太郎が帰宅してから2時間近くが経過し、食卓の足元には、赤い海の中に幾つかの物体が散らばっていた。
やわらかそうなそれは赤黒く血に濡れ、ぬらぬらと光を反射している。
裕美の身体はすっかり細くなり、首から下は真っ赤に染まっている。対照的に顔は日本人形のように白い。
濁った瞳が宙を見つめている。その網膜には何が映っているのか。
祥太郎は少し疲れていた。1時間以上も妹の身体から異物を取り出しているのだ。子供の体力が持つはずが無い。
夢中で作業を続けて居た為か、気が付くと左手の小指と薬指が無くなっていた。痛みは感じて居ない。
その顔は少し疲れて居たが、同時に笑顔でもあった。
「もう、いいかな」
これで裕美は元気になるはずだ。今までのようにお腹が痛いと泣く事も無くなる。
今度の旅行も、きっと楽しんで行ける。
「おとうさんが言ったとおりにやったんだ。ほめてくれるかな」
『麻酔は時間が経つと切れるんだ。切れると患者さんは目が覚める。それまでに傷口を縫合しなければいけない。針と糸で縫って、血が出ないようにするんだ』
結構な時間が経過している事は祥太郎も自覚していた。早くしないと裕美が起きてしまう。
焦って食卓から飛び降りた時、足を滑らせて赤い海に倒れてしまった。鉄錆の臭いにむせ返る。
こんな所でぐずぐずしていられない。針と糸を捜さなければ。
体操服のゼッケンを縫い付けてくれた時の事を思い出す。確か母親が持っているはずだ。
――5――
エレベーターから降り、鍵を取り出す。
チリンッ・・・
キーホルダーが取れた。裕美とお揃いで持っている物だ。
「あぁあ。裕美に謝らないと。浩次さん、直してくれるかしら」
部屋の前に着いた時、美那子は気付いた。変な臭いがする。なんだか生臭い。
鍵を回し、扉を開けた時だった。
「うっ!!」
瞬間、強烈な臭いが美那子を襲う。
生肉が腐ったような臭い。まともに息ができない。
「しょうちゃん!何があったの!?」
「あ、おかあさん!おかえりなさい」
我が子は全身真っ赤に染まっていた。左手からは、ボタボタと血が垂れている。
「しょうちゃん・・・手・・・」
「て? うん、だいじょうぶだよ!」
言葉が出ない。目が血走り、歪な笑みに覆われているしょうちゃん。指が2本無いのに、何が大丈夫なのか。
それに全身血まみれ。見た所他に大きな怪我は無いように見えるが、じゃあ一体これは誰の血なのか・・・
「裕美ちゃん・・・は・・・?」
「いましゅじゅつちゅうでねてるよ。ぼくがなおしてあげたんだ! それよりおかあさん、はりと糸はどこにあるの?」
「――っ!!」
息を飲む。
美那子は、全てを理解した。
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※登場する人物名は、全て架空の物です。
また、著者は専門家では無い為、実際とは間違った表現がある可能性がある事をご了承下さい。
読んで頂いた方、ありがとうございました。
いかがでしたでしょうか?
終盤、ちょっと駆け足で終わらせてしまいましたね。
感想なんぞ頂けると喜びます。
あと、挿絵なんかどなたか描いてみますか?w
ではでは、よいクリスマスをお過ごしください☆