ブックレビューが溜まってきたのでそろそろ更新します^^;
小谷賢 著
「
日本軍のインテリジェンス なぜ情報が活かされないのか」
講談社
暗号解読など優れたインフォメーション解読能力を持ちながら、なぜ日本軍は情報戦に敗れたか。
日本軍最大の弱点はインテリジェンス意識の欠如にあった。
この本は、大日本帝国の情報戦に主眼を置きつつ、日本特有の情報の扱い方や現代の日本に於ける情報組織について書かれています。
とにかく今も昔も情報(諜報・防諜)関連はからきしダメな日本ですが、この本を読めばその理由(日本人の“性格”)が見えてきます。
日本で情報戦といえば、“一人で数個師団に値する”と言われた明石元二郎大佐や、陸軍中野学校などが有名でしょうか?
前者は戦略としての諜報活動の、日本における数少ない成功例(?)で、後者は秘密戦を戦うスパイの養成学校ですね。
さて、本書の中で著者は、日本の情報戦の弱点は長期的視野で国策を進める部署が無かったこと、情報の共有がし難い官僚縦割り型組織、そもそも情報を軽んじる精神などを挙げています。
(ちなみにこれらは現代日本にも当てはまります)
それぞれの根本的な原因や対策は、歴史上の事例によって説明されています。
また、昔から今まで情報の苦手だった日本がこれからどうするべきか、という問題も、歴史から得られる教訓を取り入れつつ、段階を追って進む方向を示しています。
個人的に興味を持ったのは、日本軍の暗号解読に関する部分です。
“旧軍は情報を軽視した為に負けた”ということがよく言われますが、実は半分正解であり半分は間違いなのです。
自分は以前読んだ何かの本からその内容を知ってましたが、日本軍は完全な暗号解読はできなくても、ある程度(そこそこ正確に)敵の作戦の予測はできたそうです。
というのは、米英軍のように暗号自体を解読してしまうのではなく、通信の発信源や量、方向、頻度等から、「いつ・どこへ・どの程度の戦力で」を大まかに把握していたそうです。
またこの方法に限って言えば米英よりも優れており、総合的には連合軍と比べても遜色ない解読能力だったそうです。
もちろんそれ以上に情報を軽視してたという部分が大きすぎて、目も当てられないのですが・・・(苦笑
諜報や謀略などの分野というのは非常にブラックで、あまり情報が出てこないためにわかりにくい分野ですが、日本の軍事史や政治史などを研究してる人には一読されることをオススメしたい一冊です。
また現代の諜報活動と情報収集や、国益に基づく長期戦略といった内容も深く研究されているので、是非そのあたりの関係者様にも読んでいただきたいです。
Posted at 2012/03/26 02:19:57 | |
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