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ナカピンのブログ一覧

2012年04月26日 イイね!

ブックレビュー第七弾

山中恒 著
子どもたちの太平洋戦争―国民学校の時代
岩波新書

戦争は子どもたちの遊びや暮らし、勉強に何をもたらしたか。
自ら収集した膨大な資料にもとづいて『ボクラ少国民』などを執念深く記録してきた児童読物作家が、海軍に憧れていた「少国民」としての体験をおりまぜながら、その成果のすべてをコンパクトにまとめた。


今や少国民という言葉を知っている人もかなり少なくなってきたのではないかと思いますが、戦時中の子どもたちの生活がどのようなものであったか、それがよくわかる内容になってます。
編年体形式で、時系列に沿って生活がどのように変化していったのか、作者の体験をもとに様々な史料を引用しながら説明してあるので、若い人たちにもにもわかりやすく書かれています。

戦時中の子どもの生活というのは、自分の世代からすれば(もちろん人によって違うが)祖父母がちょうどその時代にあたるため、話を聞く機会さえあれば、どのような状況だったのかを聞くことができます。
しかし、例えば都会と田舎など、子どもの生活にもかなりの違いがある為に一様にこうだった、と言うことはできないかもしれません。
この本では都会と田舎の生活の違いもかかれており、また疎開についても詳しく書かれています。
この点はケースバイケースなので難しいところですが、自分の祖父(父方も母方も)の話を聞く限りでは、この本に書かれている内容にだいたい合致するようです。

そしてこの本で一番魅力的だったのは、当時の小学生(国民学校生徒)の作文がいくつも引用されている点です。
これはなかなか見る機会が無かったので、目からうろこでした。
だいたいが賞を貰ったとかで保存されていた作文なので、当然ながら当時の状況に則って“良い子”になって書かれているので、その内容は書いた生徒の本心ではないかもしれません。
しかしながら、当時の生徒たちがどういう状況におかれていたのか、どういう子が“良い子”とされたのか、というのを知るにはとても良い教本になると思います。

あと余談ですが、70年前の小学生は、今の小中学生どころか、下手したら高校生や大学生でもわからないような難しい言葉を使っています。
例えば、当時の有名な標語である「八紘一宇」の意味、みなさんはわかりますか?
そういう子どもたちが大きくなって戦後の荒廃した日本を引っ張ってきたんだなと考えると、ブックレビュー六弾に紹介した技術者たちとともに、日本の復興の人的な基礎が見えてくる気がします。

ちなみに自分の両方の祖父はともに、戦後教師として長く勤めてきました。
どちらも戦時中の体験をもとに、「二度とあんな戦争をさせない為に」と教育を行ってきたそうです。
戦後の教育の良し悪しはここでは論じませんが、子どもが受けた戦争の影響というものが、その後の教育の基礎になっているように思います。

戦前、戦中の研究に従事している人(特に学生)には是非読んでほしい一冊ですね。
Posted at 2012/04/26 16:40:06 | コメント(1) | トラックバック(0) | 書評 | 日記
2012年04月23日 イイね!

ブックレビュー第六弾

柳田邦男 著
零式戦闘機
文春文庫

この高性能戦闘機が世に出るまでには、若い技術者たちの長く苦しい戦いがあった。技術後進国という厳しい条件下で、国家の存亡を賭け外国機を凌ぐ新鋭機が作り出される足跡を描いた長編ノンフィクションの傑作。

最初この本を見つけたときは、著者名を見て非常に驚きました。
・・・が、かの有名(?)な民俗学者の柳田氏ではありませんご注意を。
あっちは柳田國男、こっちは柳田邦男。あっちは民俗学者、こっちはノンフィク作家。
名前の紛らわしさは置いておいて・・・。

文庫サイズで約400ページなので、少し長めの本です。
しかし、1ページあたりの文字数が多いです。43文字×20行。
普通の文庫よりも文字が小さい上に、文庫にしては分厚いので、手に取るのは勇気がいりますね。
ただ中身はとにかく充実してます。長いんだから当たり前ですが(笑

ゼロ戦の本といえば戦記ものが多いですが、これはメーカー側のお話です。
あとがきによると、設計主務者の堀越二郎氏へのインタビューの時間は三、四十時間にも及んだそうです。
そのほかにも設計に携わった人へのインタビューを行い、膨大な証言を得て書かれたノンフィクションなので、内容の濃さは折り紙つきと言えるでしょう。
いかにして当時世界最強のゼロが生まれたのか、これを読めばその全貌が明らかになると思います。

あとこの本が面白いのは、あくまで開発物語であるが為に、真珠湾攻撃が一番最後のページに書かれているということです。
物語は堀越二郎氏が三菱で初めて設計の仕事に就いたところから始まるのですが、本の半分は、ゼロ戦よりも前の試作機のお話になってます。
失敗と成功の土台があった上で、ゼロ戦は作り上げられたということですね。

ひとつ気になったのは、またもや軍内部や陸海軍間の縦割り統治、セクショナリズムの問題が取り上げられてるという点です。
ここ数冊、自分が読んできた本にはすべてこの問題が出てくるのです。
全部ジャンルが違うのに・・・(汗
それだけ当時の日本の中で、大きな問題だったということですね。
このセクショナリズムについては、まとめるだけでも卒業論文になりそう?
まぁ自分は別の内容をやりますが(笑

技術大国と言われた日本が、いかに技術を磨いてきたか、その原点を垣間見ることができる一冊です。
ゼロ戦を始めとした軍用機設計というものがどういうものだったかというのはもちろんのこと、当時の技術者の生活、仕事、苦悩など、人間に迫る内容なので読みごたえは抜群です。
自分のような文系の人間には、理系の人間とはこうも凄いのか、というのが良くわかって勉強になりました。
Posted at 2012/04/23 03:31:43 | コメント(1) | トラックバック(0) | 書評 | 日記
2012年03月29日 イイね!

ブックレビュー第五弾

秦郁彦 編
太平洋戦争のif(イフ)―絶対不敗は可能だったか?
中公文庫

太平洋戦争の重要な各局面における「イフ」を論じることで歴史の真実に迫る。
厳密な史料分析をもとに第一線の研究者たちが挑んだ、意欲的な太平洋戦争史。


この本は“ご法度”とされる歴史のifに大真面目に取り組んだ本です。
ifというと架空戦記などを思い浮かべますが、この本はまったく方向性が違います。

半藤一利氏が寄せている序文の一文を引用になりますが・・・。

本書は巷に氾濫しているSF的、荒唐無稽としか言いようのない戦記とはまったく質を異にする。
空想によって造られた新兵器とか、現実には存在しない人物とか、考えられない超ならびに非現実的な戦略戦術構想などとは、本書の各章は無縁である。
どの章も歴史的真実をしっかりと踏まえている。


とあるように、秦郁彦氏をはじめとした一流の研究者が、史実に即して当時採りえたifや、実際に検討された作戦などを検討してまとめています。
内容は全部で10章にわけて、7人の研究者が分担してそれぞれ1章、乃至2章を書いています。
いわゆる架空戦記とは違い、当時実際に検討されていた作戦が実行されていたらどうだったか、といった内容など、とてもリアルなifとなっています。

この本の中で自分が一番興味を持ったのは、海大方式による図上演習です。
これはifとは違うのですが、海軍大学校で実際に行われていた図上演習(シミュレーション)の方法を元に、実際に研究者達がハワイ作戦とミッドウェー作戦の図演を行う、というものです。
言ってしまえば超リアルなシミュレーションゲームなのですが、当時の図演の流れや作戦研究の方法がわかる上に、当時の指揮官の心境を擬似的に体験できるという内容です。
読み手にもその緊張感が伝わってきてなかなか面白いです。
ハワイを始めとしてミッドウェーやレイテなど、後知恵的にあの時ああすればと後世の人は考えがちですが、情報が極端に制限された当時の指揮官が、どういう心境で意思決定を行ったかが本当によくわかります。

この本を読んで、歴史の“なぜあの時○○を・・・”を論じることは、“なぜあの時そうしたのか”を理解する上で重要なことだとわかりました。
海大方式図演はとても面白いので、戦史研究をしている人は是非どうぞ。
Posted at 2012/03/29 22:12:18 | コメント(0) | トラックバック(0) | 書評 | 日記
2012年03月28日 イイね!

ブックレビュー第四弾

先ほど読み終わりましたので早速レビューをば。

NHK取材班 編
太平洋戦争 日本の敗因〈3〉電子兵器「カミカゼ」を制す
角川文庫

サイパン戦の天王山となったマリアナ沖海戦。
勝敗を分けたのは、新兵器のレーダーとVT信管。
電子兵器の差であり、兵器思想の差であり、文化の違いであった。


タイトルの如く太平洋戦争における電子兵器に関する本です。
その中でも特にマリアナ沖海戦に焦点を当て、米側の防御作戦(レーダー探知、直衛戦闘機、対空砲撃)について、科学的な視点で書かれています。
十数年前の本ですが、電子兵器の開発や運用における日米の比較としてはとてもわかりやすい一冊です。

第二次世界大戦に於いて、アメリカの三大発明といえばレーダー、VT信管、そして原子爆弾と言われています。
その中でもレーダーとVT信管(+戦闘機)について、日米双方の元軍人、技術者、研究者に取材を行っており、当時の開発環境や運用状況が良くわかる内容となっています。

当時、日本の科学技術は欧米に比べ圧倒的に劣っていたと思われがちですが、実はレーダーも含め、世界に大きく後れを取っていたわけではないみたいですね。
特に、一部のレーダー技術(マイクロ波発生器)においては世界に先駆けて発明されていたとか。
また、自分はこの本を読んで初めて知ったのですが、日本もVT信管(近接信管)の研究をしていたというのには驚きました。
アメリカ式のように電波を使うのではなく光線を利用した信管で、爆弾の先頭に取り付け、光を発してその反射光を利用して標的との接近を感知するそうです。

科学技術自体はそこまで劣ってなかった日本が、何故こうも軍事技術に於いて欧米と差が開いたのか?
その答えを本書では日本の組織と思想に求めています。
一つは縦割り方式の組織体系で、陸軍と海軍が数少ない研究者を取り合い、それぞれが同じような研究を行い、陸海軍間で情報や技術の共有がなされなかったこと。
また研究を分野ごとに完全に仕切ってしまい、統合的に技術を扱う環境に無かったことだそうです。
この辺はレビュー第三弾に書いたインテリジェンス(分析情報)の取り扱いとまったく同じ状況ですね(苦笑
もう一つは、攻撃一辺倒の思想です。
レーダーのような防御兵器は必要ない、とにかく“攻撃こそが最大の防御”といった思想が技術研究を妨げていた、とのこと。
一応この点に関してはじっくり守りに力を入れる余裕が一切無かった状況なので仕方の無い面もある、と書かれていますが、攻めることができなくなった時に、すぐ思考回路を切りかえれなかった軍上層部には問題があると思います。

大まかな内容を書きましたが、文庫本で222ページとマンガ並にとても軽い読み物なので、当時の電子技術、電子兵器についての入門として読むには向いてると思います。
この分野の知識に疎い自分でも、じっくり読んでも二時間もかかりませんでした。
当時の日米両軍の最前線の体験談も沢山載っているので、単純に読み物としても読み応えがあります。
Posted at 2012/03/28 04:07:05 | コメント(0) | トラックバック(0) | 書評 | 日記
2012年03月26日 イイね!

ブックレビュー第三弾

ブックレビューが溜まってきたのでそろそろ更新します^^;

小谷賢 著
日本軍のインテリジェンス なぜ情報が活かされないのか
講談社

暗号解読など優れたインフォメーション解読能力を持ちながら、なぜ日本軍は情報戦に敗れたか。
日本軍最大の弱点はインテリジェンス意識の欠如にあった。


この本は、大日本帝国の情報戦に主眼を置きつつ、日本特有の情報の扱い方や現代の日本に於ける情報組織について書かれています。
とにかく今も昔も情報(諜報・防諜)関連はからきしダメな日本ですが、この本を読めばその理由(日本人の“性格”)が見えてきます。

日本で情報戦といえば、“一人で数個師団に値する”と言われた明石元二郎大佐や、陸軍中野学校などが有名でしょうか?
前者は戦略としての諜報活動の、日本における数少ない成功例(?)で、後者は秘密戦を戦うスパイの養成学校ですね。

さて、本書の中で著者は、日本の情報戦の弱点は長期的視野で国策を進める部署が無かったこと、情報の共有がし難い官僚縦割り型組織、そもそも情報を軽んじる精神などを挙げています。
(ちなみにこれらは現代日本にも当てはまります)
それぞれの根本的な原因や対策は、歴史上の事例によって説明されています。
また、昔から今まで情報の苦手だった日本がこれからどうするべきか、という問題も、歴史から得られる教訓を取り入れつつ、段階を追って進む方向を示しています。

個人的に興味を持ったのは、日本軍の暗号解読に関する部分です。
“旧軍は情報を軽視した為に負けた”ということがよく言われますが、実は半分正解であり半分は間違いなのです。
自分は以前読んだ何かの本からその内容を知ってましたが、日本軍は完全な暗号解読はできなくても、ある程度(そこそこ正確に)敵の作戦の予測はできたそうです。
というのは、米英軍のように暗号自体を解読してしまうのではなく、通信の発信源や量、方向、頻度等から、「いつ・どこへ・どの程度の戦力で」を大まかに把握していたそうです。
またこの方法に限って言えば米英よりも優れており、総合的には連合軍と比べても遜色ない解読能力だったそうです。
もちろんそれ以上に情報を軽視してたという部分が大きすぎて、目も当てられないのですが・・・(苦笑


諜報や謀略などの分野というのは非常にブラックで、あまり情報が出てこないためにわかりにくい分野ですが、日本の軍事史や政治史などを研究してる人には一読されることをオススメしたい一冊です。
また現代の諜報活動と情報収集や、国益に基づく長期戦略といった内容も深く研究されているので、是非そのあたりの関係者様にも読んでいただきたいです。
Posted at 2012/03/26 02:19:57 | コメント(0) | トラックバック(0) | 書評 | 日記

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「足車のF31をスタッドレスに履き替え完了。これで来週の寒波も楽しめそう」
何シテル?   12/16 15:02
一浪一留一休中退、青春大いに謳歌、人生大いに負組 趣味は歴史、軍事、時々アニメ アイマスP引退 彼女はドイツ生まれの大食い病弱お嬢様 大...
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