柳田邦男 著
「
零式戦闘機」
文春文庫
この高性能戦闘機が世に出るまでには、若い技術者たちの長く苦しい戦いがあった。技術後進国という厳しい条件下で、国家の存亡を賭け外国機を凌ぐ新鋭機が作り出される足跡を描いた長編ノンフィクションの傑作。
最初この本を見つけたときは、著者名を見て非常に驚きました。
・・・が、かの有名(?)な民俗学者の柳田氏ではありませんご注意を。
あっちは柳田國男、こっちは柳田邦男。あっちは民俗学者、こっちはノンフィク作家。
名前の紛らわしさは置いておいて・・・。
文庫サイズで約400ページなので、少し長めの本です。
しかし、1ページあたりの文字数が多いです。43文字×20行。
普通の文庫よりも文字が小さい上に、文庫にしては分厚いので、手に取るのは勇気がいりますね。
ただ中身はとにかく充実してます。長いんだから当たり前ですが(笑
ゼロ戦の本といえば戦記ものが多いですが、これはメーカー側のお話です。
あとがきによると、設計主務者の堀越二郎氏へのインタビューの時間は三、四十時間にも及んだそうです。
そのほかにも設計に携わった人へのインタビューを行い、膨大な証言を得て書かれたノンフィクションなので、内容の濃さは折り紙つきと言えるでしょう。
いかにして当時世界最強のゼロが生まれたのか、これを読めばその全貌が明らかになると思います。
あとこの本が面白いのは、あくまで開発物語であるが為に、真珠湾攻撃が一番最後のページに書かれているということです。
物語は堀越二郎氏が三菱で初めて設計の仕事に就いたところから始まるのですが、本の半分は、ゼロ戦よりも前の試作機のお話になってます。
失敗と成功の土台があった上で、ゼロ戦は作り上げられたということですね。
ひとつ気になったのは、またもや軍内部や陸海軍間の縦割り統治、セクショナリズムの問題が取り上げられてるという点です。
ここ数冊、自分が読んできた本にはすべてこの問題が出てくるのです。
全部ジャンルが違うのに・・・(汗
それだけ当時の日本の中で、大きな問題だったということですね。
このセクショナリズムについては、まとめるだけでも卒業論文になりそう?
まぁ自分は別の内容をやりますが(笑
技術大国と言われた日本が、いかに技術を磨いてきたか、その原点を垣間見ることができる一冊です。
ゼロ戦を始めとした軍用機設計というものがどういうものだったかというのはもちろんのこと、当時の技術者の生活、仕事、苦悩など、人間に迫る内容なので読みごたえは抜群です。
自分のような文系の人間には、理系の人間とはこうも凄いのか、というのが良くわかって勉強になりました。
Posted at 2012/04/23 03:31:43 | |
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