先ほど読み終わりましたので早速レビューをば。
NHK取材班 編
「
太平洋戦争 日本の敗因〈3〉電子兵器「カミカゼ」を制す」
角川文庫
サイパン戦の天王山となったマリアナ沖海戦。
勝敗を分けたのは、新兵器のレーダーとVT信管。
電子兵器の差であり、兵器思想の差であり、文化の違いであった。
タイトルの如く太平洋戦争における電子兵器に関する本です。
その中でも特にマリアナ沖海戦に焦点を当て、米側の防御作戦(レーダー探知、直衛戦闘機、対空砲撃)について、科学的な視点で書かれています。
十数年前の本ですが、電子兵器の開発や運用における日米の比較としてはとてもわかりやすい一冊です。
第二次世界大戦に於いて、アメリカの三大発明といえばレーダー、VT信管、そして原子爆弾と言われています。
その中でもレーダーとVT信管(+戦闘機)について、日米双方の元軍人、技術者、研究者に取材を行っており、当時の開発環境や運用状況が良くわかる内容となっています。
当時、日本の科学技術は欧米に比べ圧倒的に劣っていたと思われがちですが、実はレーダーも含め、世界に大きく後れを取っていたわけではないみたいですね。
特に、一部のレーダー技術(マイクロ波発生器)においては世界に先駆けて発明されていたとか。
また、自分はこの本を読んで初めて知ったのですが、日本もVT信管(近接信管)の研究をしていたというのには驚きました。
アメリカ式のように電波を使うのではなく光線を利用した信管で、爆弾の先頭に取り付け、光を発してその反射光を利用して標的との接近を感知するそうです。
科学技術自体はそこまで劣ってなかった日本が、何故こうも軍事技術に於いて欧米と差が開いたのか?
その答えを本書では日本の組織と思想に求めています。
一つは縦割り方式の組織体系で、陸軍と海軍が数少ない研究者を取り合い、それぞれが同じような研究を行い、陸海軍間で情報や技術の共有がなされなかったこと。
また研究を分野ごとに完全に仕切ってしまい、統合的に技術を扱う環境に無かったことだそうです。
この辺はレビュー第三弾に書いたインテリジェンス(分析情報)の取り扱いとまったく同じ状況ですね(苦笑
もう一つは、攻撃一辺倒の思想です。
レーダーのような防御兵器は必要ない、とにかく“攻撃こそが最大の防御”といった思想が技術研究を妨げていた、とのこと。
一応この点に関してはじっくり守りに力を入れる余裕が一切無かった状況なので仕方の無い面もある、と書かれていますが、攻めることができなくなった時に、すぐ思考回路を切りかえれなかった軍上層部には問題があると思います。
大まかな内容を書きましたが、文庫本で222ページとマンガ並にとても軽い読み物なので、当時の電子技術、電子兵器についての入門として読むには向いてると思います。
この分野の知識に疎い自分でも、じっくり読んでも二時間もかかりませんでした。
当時の日米両軍の最前線の体験談も沢山載っているので、単純に読み物としても読み応えがあります。
Posted at 2012/03/28 04:07:05 | |
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