震災から7ヶ月を過ぎた昨日、栄村にて復興へ向けたシンポジウムが行われました。
表題としては
『復旧、復興へ向けた現状と今後の課題』
というものでした。
信濃毎日新聞の記事
シンポジウムはパネルディスカッション形式で行われ、司会には震災以前から栄村で活動をされて来た信州大学農学部の木村先生、パネラーには村内の被害の大きかった地区から4名と信州大学農学部の内川先生が参加し、会場には村内外から100人近い人が参加しました。
また栄村長、信州大学の副学長も参加されました。
まずは内川先生から信州大学の主導による農地被害調査及び被害報告と課題、またその過程においてのある集落の積極的な取り組みの報告がなされました。
続いて4人の被災者のそれぞれの現在までの状況報告、そして今現在、これからの課題、不安などについての報告が有りました。
それぞれの方が農業をなりわいとされておるなかすべての方が住宅は半壊判定以上、さらには農地や水路、農業設備、施設に多大な被害を受けておられ、さらには商店の激減による不安など現在も続くご苦労をお話しされました。
(農地に関しては現在やっと復旧作業がはじまり、予定とされている今年中の整備は物理的に無理だという見解も聞かれ(作業は天候、雪に左右され、遅くとも来年5月31日までに完成させるとの事でしたが)最悪作付けができない事も想定した計画が必要ではないかという提案もなされました。また被害を受けた水路や農作業小屋、農業設備、集落施設や神社などへの支援、また原型復旧よりもより良い耕作地への整備の拡大などは現段階での復旧費用の対象とならない事への課題も取り上げられました。)
壇上に上がられたみなさんの印象に残りました言葉をいくつか挙げますと、一人の方が言われた
『農業設備にも多くの被害が有り、田んぼを治してもらっただけでは農業はできない。今年の農業はマイナスマイナスマイナスです』という言葉。
そして別の方が言われた
『自分達で水路を作り開墾した田んぼには愛着が有る。』
という言葉。
また
『不安がつのり眠れずに睡眠薬を処方していただいた』という言葉。
そして
『壊れた農業設備にこれから投資をしてもそれを回収できるかわからない。現在は無職。今後考えていた人生設計が大きく狂わされた』
という言葉。
他にも多くの切実な思いが語られましたがどれも当事者にならなければ感じる事のできない言葉でした。
そしてそれを自分を含め会場の多くの方が逃れられない現実として受け止めた事と思います。
そしてそれは集落や各戸において違いが有り、またその事を始めて知ったという方も多かったと思います。
前回6月の復興ビジョン懇談会でも示されたのですが、『震災復旧だけではない、より良い未来の栄村へ』としての復興へと歩みを進めるにあたり、それぞれの地区そして個人の現状の把握と情報の共有化がやはり重要なのだと再認識させられました。
ですが今まではそうは思っていても、それを取り仕切るためには膨大な人手と時間が必要な事も課題だと思っていました。
ですが今回、信州大学の全面的な協力によりそれが実現する事となりそうです。
副学長さんも力強く宣言をしてくださいました。
地域、個人ごとに異なるであろう現状の詳細な実態把握の上で、今後の復興への課題を浮き彫りにし、夢の有る復興ビジョン、スローガンと具体的な方策(既存の制度にとらわれず、無い制度は強く訴えて作って行く)を考えて行こう、という提案がなされました。
また詳細な調査と実態把握が必要だと提案された内川先生、木村先生より
『住民、行政、研究者、そしてそれらをつなぐコーディネーターの4者の連携が重要であり、今後この関係を築いていくべきだ』という提案がなされました。
この中では現在コーディネーターを確定できてはいませんが、震災直後から現在まで、村の状況、情報を発信し続け、勢力的に外との関わりを持って来た栄村ネットワークさんの名前が上げられ、今後何らかの形で栄村ネットワークさんがコーディネーターに関わって行くのではという期待もあげられました。
信州大学の全面的な協力を元に今後の栄村を考えていける事は少なからずとも住民に対して希望を与えるものになったのではないかと感じました。
また木村先生などからも、使途を明確にし呼びかけた事による全壊した青倉公民館再建基金への支援金の多さと関心の高さ、栄村ネットワークさんの情報発信による震災の知名度向上による部分も多い、村への義援金の多さ(現在9億円ほど)は、栄村に関心を持ち応援してくれる人の多さを物語っているとも主張され、情報を明確に発信し伝えて行く事の重要性もとなえられました。
しかし最後に惜しい事として、村長の最後の言葉に『4者連携』や『復興ビジョン』という言葉が聞かれなかった事が有ります。
木村先生、内川先生らの投げかけ、今回のシンポジウムの流れから、『皆で協力しましょう』や『お任せします』といった言葉が首長から聞かれなかった事は誠に残念で有ると共に、住民と行政の間の溝(現場におられる方はそれこそ住民の為に大変な思いをされていますが)を少なからず感じてしまいましたが、ここにも課題が見えた事は収穫としていかなければならないと思いました。
いずれにしても信州大学の全面的な協力を得て、(もちろん住民、行政、コーディネーターにはこれからも大変な労力が求められる事ですが)栄村の復興が具体性を帯びて進められる事になったと感じられるシンポジウムでした。
補足はできませんが、各先生方がお使いになったスライドを以下に掲載します。
(こちらにもございます)
まずは木村先生によるシンポジウムのねらいについて。
続いて内川先生による『農地災害調査から見えた村の復興のありかた』
Posted at 2011/10/17 11:58:01 | |
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栄村地震 | 日記