今回試乗したのはMスポ320i。ホイールは18インチでタイヤも太く、当然サスもMスポ用です。
当方が乗るF30・320dスポーツの17インチ・ノーマルサスと比べて、多少ハードなフィーリングを予想していたのですが、さにあらん。
ステアリングがとても軽い。ウチのF30とは段違い。
「フムフム、こやつらもついに観念したか」。
F30デビュー当時、E90乗りの方々が「F30はハンドルが軽るすぎる」と口々に言ってました。
が、こちとらベンツからの乗換ですからF30ですらクソ重い。
街中でこんな重いステアリング、いったい何考えてるんだBMWって会社は、と。
なので、今回とても軽くなったステアリングの感触に、良い意味で驚きました。
どうせまた「スポーティーな走りガー」と言って重ステだろ、と高をくくってましたから。
BMWもようやく古臭さい価値観を脱ぎ捨て、街中で快適に使えるステアリングにしたわけです。
これまでBMWは「ブレずにどっしり安定した操作感こそスポーティーさでしょ」と意固地な態度でした。
そのため街中で不釣り合いな重いステアリング感覚をユーザーに強いてきた面があります。
サーキット走行や峠道を楽しむ車種じゃあるまいし、どうなのそれって?
4枚ドアのオジサンセダンで必死にスポーツ性を求めても、乗るのは結局のところ「街」でしょ?と
ポルシェでもフェラーリでもロータスでもないでしょ?と
無論、3シリーズもオプションでサーボトロニック(車速感応)ステアリング設定はありました。
しかし3シリーズは標準ではありませんでしたし、付いていないのが当たり前の状況でした。
そのため街角で3シリーズを普段使いする大多数のユーザーが割を食ってました。
まさにニーズを無視した「裏切りの街角」状態です。
でも、これってなんのことはありません。
お得意の儲け主義よろしくで単にケチっていたわけです。いつものボッタリ根性ですw。
CクラスならW204から当たり前についているようなものがオプション扱いでした。
しかし今回はご破算にして一番安いSE(受注生産の廉価版)にまで、全車サーボトロニックステアリングを標準装備してきました。
「うちも重ステは廃止して、軟派な軽ステにしちゃいまーす、テヘッ」ってな訳ですw
古くからすっかり飼い慣らされたユーザーは、今度は軽いハンドルで混乱させられるわけです。
「軽いハンドルなんて走りのBMWじゃない(キリッ」と重ステ原理主義に洗脳された古臭いユーザーにしてみれば、
今回は真逆の「裏切りの街角」状態になるというわけです。
ベンツにコテンパンにやられて、アウディにも猛追され、ようやく頭の固い開発陣も観念して年貢を納めたようです。
Cクラスのステアリングなんて、とても軽く、女性でも片手でクルンクルン回せます。
新型G20の比ではありません。駐車など低速時の切り返しや交差点などで、とにかく楽チンです。
でも、それって本来は結構なことじゃないですか。
「街角」での使い勝手を優先した、良い意味での「裏切り」からの脱却。
今まで価値観が周回遅れで明後日の方向を向いてたBMWも、ようやく改心したようでメデタシ×2。
「乗り味・乗り心地」については相応に進化していますが、まあ予想の範囲でした。
18インチ+スポーツサスのMスポ試乗車は、スポーツというよりはとても高質で快適なサルーンカーという印象。
程よく締まってはいるのですが硬くはなく、よく動いて心地よくフラットに保ってくれます。
クラスアップのラグジュアリー感とでもいいましょうか。
でも、4-5年乗りまわして炭酸が抜けたような足回り+くたびれたタイヤのF30で乗りつけて、
ピカピカのニューモデルに突然乗るわけですから、乗り心地や足回りが程よく締まって感じるのは当たり前です。
お腹がダルダルして醜くなってきたアラフィフ女と、20代前半の張り艶パンパンのお姉ちゃんを比較するようなものですw。
ウチの嫁だって新品時はパッツンパッツンだったぜ、ということで新車試乗での乗り心地や足回りはやや差し引いて評価する必要があります。
従って脚については、常識的な範囲での正常進化、という評価に補正して納得しています。
それよりも今回のモデルチェンジで根本的な変化として、サス/ショックの良化より、
ホイールベースが長くなったこと ・ トレッド幅が広くなったことの恩恵を強く感じました。
この決定的な2点の変更によって、より路面に張り付くような安定した走りと無理のないコーナーリング感覚を得た感じです。
1クラス上のサルーンカー的テイストにかなり近づき、たとえMスポと言えどもかなりコンフォートな世界感を醸し出しています。
室内はかなり静寂な世界が広がります。とても静かな車になりました。
が、これは当然のことです。
以前は「500万円もする車が何故こんなにウルサイの?」という感じでした。
価格に見合うようマシになっただけのことです。今までが酷すぎました。
内装はベンツから学んで「ヒカリもの」を増やしてピカピカしていますw。
このまま後塵を拝して負け続けるわけにもいかないですよね。
ショボイ内装が代名詞だった3シリーズもライバルの成功のおかげで多少まともになったわけです。
F30ではメッキパーツで装飾する人が多かったですよねw 今後は不要になります。
デザインとしては相変わらずプアーで年寄りくさい感じですが飽きはこないでしょう。
サイドブレーキが無くなり、コクピット周りがやっとすっきりしましたが、シフトレバーがまだあります。
「もうすぐ2020年代、こんな前時代的なものさっさと無くせよホントにもー」と言いたいです。
相変わらず古臭い概念に縛られて、時代に対して先手をビシッと打てません、この会社。
レバーがとにかく不恰好、違和感全開、浮きまくり。アルピーヌA110見習ってこいよ!てなもんです。
それからセンターコンソールをドライバーへ向けて斜めにするのは、いい加減止めたら?と思います。
はっきり言ってデザインセンス崩壊の根源となっています。
昔のBMWが全部斜めだったわけではありません。BMW 2002 turbo なんかはこんな感じでした。
シンプルイズザベストの極みです。何も問題ありません。
前を見て運転するわけで、コンソール周りはチラ見する程度の話ですから、真っ直ぐで十分。
以前2002を彷彿とさせるオマージュのモデルが発表されました。
どうせなら3シリーズはここら辺をお手本というかベースにして原点回帰して欲しかったです。
(2シリーズがあるから無理か)
ちなみに3シリーズは最初の初代E21からコンソールが斜め向きでした。
見てください、この鬱陶しい醜さを。造形美の崩壊です。
美学はないのか?と問い詰めたくなります。
こんなチグハグなものを、なぜ2019年まで後生大事に守っているのか、さっぱり意味が不明。
平面作りのショボ臭い円型メーターパネルをようやく捨ててデシタル化したのですから、
他も部分も新しい感覚で大胆に刷新して欲しかったです。
エクステリアについては、Mスポの外観は押しの強い顔で好き嫌いはあるとおもいます。
エレガントさはなくマッチョで無骨な路線になりました。Mスポの顔は悪くありません。
しかしスタンダードの顔はかなりブサイク。もうこの手のグレードごとの差別化というかギミックは止めたほうがいいと思います。
全体のシルエットですが9センチ近く全長が伸びて肥大化の一途を辿っています。
オジサンカーなわけですから、オジサンのニーズにマッチさせてきました。
動力については、新型3シリーズ(G20)のガソリンエンジンはトルク感があって乗り易く仕上がっています。
いい感じです。ディーゼルもこれから届くようですから、そちらも今後が楽しみです。
さて、今回のフルモデルチェンジですが、
・静寂な居室になって
・ハンドル操作が低速域で楽になって
・安全性が高くなって
・室内も広くなって
・車格もぐっと上がり快適になって
・操作系も機能がたくさん増えて
・成金的にピカピカパーツもたくさん盛って…
と、めでたしめでたしなG20新型3シリーズなわけですが、腑に落ちない根本的な疑問が残ります。
そもそも3シリーズって?という疑問。
新型G20の基本コンセプトは火を見るより明らかです。
「より大きく・より上質に・より快適に」を訴求しています。
簡単に言えばヒエラルキー上位である5シリーズへとそのまんま指向が向いているわけです。
でも、より大きく上質で快適なものが正義なら、素直に5シリーズ買えば?ともおもうわけで、
じゃあ3シリーズが持つ本来の個性は何処にいってしまったの?と、根本論に戻されます。
今回のG20の価格は1つオプション乗せたら価格は600万円を楽に超えてしまいます。
一方で、5シリーズ523i Mスピリットが698万円です。みなさん乗換時にどうしますか?
どうせ5シリもお得意の超投げ売り値引きがあるし「だったら5シリーズ買った方がいいじゃん」と。
家の車庫サイズの問題さえなければ、相成りますよね。
G20の全幅は1827mm。G30が1860mm。ことここに至ると体感的な差はもう感じにくい。
コンパクトなサイズ感がもたらす、普段使い/街乗りでの軽快な小気味よさが3シリーズ本来の真髄だったはず。
実はF30を所有して日々感じるのは、快適さと引き換えに失った小気味よさという真髄の足りなさでした。
5シリーズを目指すのではなく、既出の2002オマージュやM2の方には向かないの? BMWさん。
とにかくデカけりゃ偉いと勘違いのアメリカと中国が販売の主戦場ですから、しかたないのかもしれませんが、
大きくて豪華なオジサンセダンへのコンセプトを由とするなら、それは売り手も買い手も5シリーズという商品に任せるべきかと。
「広さはバッサリ切り捨てたけど、軽快だし濃いね」と言われるようなモデルチェンジをして欲しかったです。
サイズが無理ならせめてパワーウェイトレシオ大幅向上とか商品に説得力を持たせられなかったのでしょうか。
2012 F30 BMW 320i M spo 1540kg/184ps 8.36kg/ps 燃費16.4km/L 494万円
2019 G20 BMW 320i M spo 1560kg/184ps 8.47kg/ps 燃費15.2km/L 583万円
7年経って100万値上げした結果が、PWどころか燃費まで悪化かよ、と!!!
いろいろと改良され、更に大きくなり、よりラグジュアリーな路線へと成長したG20新型3シリーズ。
高級サルーン張りの快適さと引き換えに「失った肝心なもの」は未だ取り戻せずにいます。