【まえがき】
大言壮語どおり、超大作を書く。
テーマは〝国際経済と我が国の安全保障に関する一考察〟だ。
本エントリのベースは、前回示したように仕事ファイルなので、専門的な言葉も多いかもしれない。
が、大風呂敷を拡げた割には、論理的には出来るだけ単純にするつもりだ。〝経済ネタはややこしい〟、という御指摘も多いので、解説もつける。
嫁にも理解できるように書くつもりだが、それでも理解しづらい処があったら、ご指摘くだされ。勿論、質問等あったら書き込んでくり。但し「文字が多い!」、とかいう類のご指摘については、対応致しかねる。
また、経済的にはすっごく初歩的なことも書くので、「しょーもないこと書くな!」と思われる方もおられるだろう。 しかし繰り返すが、本エントリは〝ハマーン様にもわかるように〟書くつもりなので、その点はご容赦しちくり。
なお、本エントリ含め今回の超大作においては、その文節ごとに重要度を★で示すことにした。
経済について一から見直したい、という諸氏は〝重要度★~★★★〟まで、すべてお読みいただくとよいかもしれない。
経営サイドにおられたり、経理とか財務とか実務でミクロ経済に携わっておられる方は、〝重要度★★~★★★〟をお読みいただければよいと思う。
金融業会におられたり、シンクタンクにおられたり、或いは社会科学の研究などに携わっておられる方は〝重要度★★★〟を読んでいただければ十分だと思われる。
【世界の現在】
今回のエントリーを考えるに、私たちが現在生きている時代が、どのような状態であるかをまず整理していただきたい。
1.インフレ(金融・為替)政策の説明(重要度★)
本稿を書いている2016年8月17日、ロンドン市場で、3週間ぶり1$が100円を割った。
また東京市場では、日経平均株価が273円安となった。
額面については驚愕的な内容ではないものの、これら数字はここ半年ばかりの経済トレンドを素直に繁栄した、典型的なサンプルと言えるものだ。
これを事例として扱い、現在の国際経済について語ろう。
今回の円高、それは(´・ω・`)というよりアメリカの方に原因がある。
ここ2年ほどの世界経済において一人勝ちしてきたアメリカでは、今月に入って原油在庫が(立て続けに予想を裏切って)過剰状態に陥った。また、昨日はコアCPI(※1)低下の報もあった。結果、NYダウは2週間ぶりに大きく値を下げた。
一国としては世界最大の市場であるアメリカはここ数ヶ月、モノ余り(=デフレ)で景気上昇に翳りが見えてきた。台所事情は厳しいとはいえ、11月の大統領選挙を前にして、アメリカはテーパリング(※2)に爪先を突っ込んだだけで、足踏み状態を続けるを得ない。
市場は、再度の利上げは難しい、と判断した。
だからドルの価値は上がらなかった。だから円が買われた。
利上げが難しい≒金融引締めをしない、ということは、その国の(というか政府の)資産価値が(他国に比して)相対的に下がる、ということだ。 国の資産価値が下がる、ということは、その国の通貨の価値(というか重要度)が低下することにつながる。
結果それは、その国にとっては海外(経済圏)から輸入する財や金融商品、サービスの値上がりを意味し、相対的に消費は国内(ないしは域内)のものへ流れやすくなる。輸出については(海外の買い手にとっては)値下げにつながる。また、金利は安いので国内にお金が流れやすくなる。
さらに(日本はより色濃いのだが)アメリカはQE(量的緩和)で、FRB(※4)が通貨供給量を爆発的に増加させたため、市場にはお金がイヤというほどばら撒かれている。つまり、アメリカという市場には、ドルという血液が山のように潤沢に流れているのだ。
こうなれば国内企業の売り上げも利益も増えるし、生産活動も闊達になる。
(人口が減ったり生産資源が空洞化するなど)唯物的に市場が縮小しない限り(※3)は雇用も促進される。設備投資もしやすくなる。
一個人に振り撒かれる資金が平均的に潤沢になるから、消費も拡大する。
つまり経済は活性化する。勿論企業の成績もよくなる。株価も上がる。配当も沢山出るし、余剰資金が更に消費へ回る。
大まかに言うと、コレがインフレ(金融・為替)政策だ。あくまで〝一部〟だが。
翻ってこの皺寄せは、その国以外の、その国から財や金融商品、サービスを買ったり、その国にこれらを売ったりする国にとっては災難だ。これらの国々は、輸出品は相対的な値上がりで買ってもらえなくなるし、輸入品は安くなるから国内品は売れなくなる。
あくまで結果だが、在庫調整や供給力の削減が進むまで、これらの国々の経済成長は鈍化する。
これは1930年代・・・金本位制から各国が脱却したことを皮切りに、各国が通貨安競争に陥り、極端な経済規模の縮小と資源価格高騰が発生、結果として帝国主義を助長した、という弊害を産み出した歴史をもつ。
だから、2013年のモスクワG20以来、各国はこの通貨安競争については〝表面上は〟忌避する方針を打ち出している(※5)。今年に入っての上海G20、そして先の伊勢志摩サミットでも〝通貨競争の回避〟が共同声明として打ち出されたのは、諸氏にも記憶に新しいと思う。
※1…エネルギーと食糧除いたインフレ率。高いほどインフレ率が高い=モノの価値が高い=物価高。
※2…金融緩和の縮小。本エントリではリーマン以後のアメリカ金融緩和の縮小を指す。
※3…日本の致命的問題でもある。
※4…アメリカの中央銀行。ドル通貨を発行するところ。
※5…では、日本のアベノミクス第1の矢もそうなのか?、となるが、これは違う(らしい)w。日本の異次元緩和は金利調整ではなくまた、上記輸出促進輸入制限のための為替政策ではなく、金融緩和による国内市場への資金流入と投資の活性化を目的としているからだ。緩和で円安になり、輸出関連企業が活性化するのは副次的結果論であって、目的ではない、というのがその理由w
2.円高と日経平均落ち込み(重要度★★)
話を戻そう。
上記の通り、金融政策と通貨供給量の緩和で経済を活性化させたアメリカだが、これは政府にとってはとんでもない出費となる。アメリカは毎年に渡るインフレ政策で巨額の資金を市場投入し、さらに財政政策も拡大した。同時に低金利を続ければ、資金調達に発行した国債の実質価値は上がってしまう。当然政府はお金が足りなくなる。
毎年巨額化する国債や政府系ファンドの利払いにも事欠くことになった。
一昨年あたりからはこれが数値的にも顕著になり、昨年は2度にわたってアメリカはデフォルト危機に見舞われた。
そう〝財政の崖〟だ。
幸いにして債務上限(※1)が議会で引き上げられたため、昨年来首の皮は一枚つながった格好だが、事態は基本的には好転していない。
だから、FRBは利上げをして、財政の健全化を進めたい。しかし、これを行えば市中金利は上昇し、消費は冷え込む。既に量的緩和(QE)は2014年の秋に終了している。
加えて、既に実行した昨冬の利上げは、世界同時株安…年明けの( `ハ´)ショックの引き金にもなった。
FRBは思案の為所にあった。
そこにおいての前述経済指標の悪化。
大統領選を控え、米民主党は何としても株価や失業率などをよい数字にしておきたい。
ために、アメリカは〝利上げには踏み切れない〟。
市場は、そう解釈した。
ドル高を誘導する大義が薄れてきた。ドルという通貨の価値は、上がらない方が国内経済にはよい。選挙勝つには経済悪化はさせたくないw
しかし、現実にアメリカ経済は勢いは、やや衰え始めた。
どうしよう?
( `ハ´)経済の壊滅(※2)から、EUや中東、日本といった消費市場は病気になっている。ASEAN経済共同体はまだまだ未成熟だ。
となれば、QEでばら撒かれたドルはどこへ向かうか?
もうお判りだろう。
(なんか説得的な理由はないが)世界で最も安全な資産…1400兆もある個人資産、対外純資産世界一を担保にした通貨…(´・ω・`)の〝円〟に向かうのは必然なのかもしれない。
結果、円高になった。輸出株が下がった。
少子化で内需に乏しい(´・ω・`)は、海外の経済変動に敏感だ。
だから、日経平均全体が下がった。
この流れこそが、現在の世界経済の典型的な潮流なのだ。
(※1)アメリカでは、法律で政府の発行債券残高には上限が設けられいる。これを超えた債券発行を行うには、議会の承認が必要。
(※2)詳細は2月11日付拙エントリ
『【経済安全保障】( `ハ´)←オマエが悪い! 』参照のこと
3.相互依存(重要度★★)
金融・情報・人的資源・生産財の投資グローバリゼーションが急速に進んだ21世紀。ひとつの経済主体が調達し加工し消費する、財や金融商品、サービスなどは、最早自国調達に限る、なんてことは余程未開の土地でなければ成り立たなくなっている。
相互依存体制。
我々日本人だけでなく、アメリカ人も、欧州人も、BRICs(※1)やVISTA(※2)はもとより、あの<`∀´ *>(※3)でさえ、この流れに立脚して日々を送っている。
トルコ人が紡いだ糸を(´・ω・`)の商社が購入し、イタリア資本のヴェトナム工場でバングラディシュ人が加工し、これをアメリカ人が買い取って、ドイツで売る。代金はスイスの銀行で資産運用され、ロンドンの不動産投資に充てられる。
或いは、(´・ω・`)の売国企業が( `ハ´)に現地工場を建てて、そこで働く北<`∀´ *>が祖国に税金を納め、それがテポドンになって日本を狙う。
それは現在のグローバル体制おいては、一国の経済危機は、他国の経済にも簡単に波及することを意味する。6月のBrexitと円高、( `ハ´)ショックと資源国危機、ギリシア・ショックと欧州金融危機…枚挙に暇がない。
現在の世界は最早、一国単独のパフォームではその経済を制御ことはできなくなっている(※4)。
そしてグローバルに発展した情報通信テクノロジーの進化は、世界にバタフライ・エフェクト(※5)を頻発させている。一国レベルの経済変動が、多かれ少なかれ世界全体に影響を及ぼす。
その近年最大のものが、サブプライム・ローン破綻から生まれた世界経済危機。
すなわち、リーマン・ショックだ。
2008年の夏以降、世界では経済危機に対するため、中央銀行を主体とした協調介入体制が常態化している。
それはリーマン・ショック以降、ギリシア危機と欧州債務危機、( `ハ´)ショック、そしてBrexitに対し〝名目上は〟それなりに効果を上げてきた。
特に2013年の( `ハ´)ショックに始まった資源国の深刻なデフレに対し、日銀、FRB、ECU(※6)は協調、政府と一体となった金利政策と大規模緩和でデフレ対策を行い、各国内の需要を喚起した。それは大きな消費トレンドを生み、世界全体の需要を下支えした。
リーマン危機以降世界経済を牽引してきた新興国が、( `ハ´)バブルの崩壊と共に急速に供給過剰状態に陥り、消費は鈍化、世界経済全体が再び暗黒時代を迎えようとするなか、世界経済の下支えしたのは、先進国中央銀行の協調政策だった。
基本、現在も世界の経済秩序は、先進国中央銀行による大規模緩和によって辛うじて支えられている。
※1…経済新興国のこと。ブラジル、ロシア、インド、( `ハ´)のこと。
※2…経済新興国のこと。ブラジルとかアルゼンチンとか、トルコや南ア、インドネシア。他にもCIVETSとかNEXT11とか、いろいろある。
※3…「世界がウリから孤立している」
※4…基軸通貨、エネルギー源は自前生産、資源も域内経済圏に豊富にあり、生産年齢人口(=14歳~60歳)も上昇、人口も多く、基軸通貨自前、世界最強の軍隊を持っている、という某国を除く。
※5…「ブラジルでの蝶一匹の羽ばたきが、翌月のテキサスでは砂嵐となる」
※6…欧州中央銀行。EUの金融を統括する統合型の中央銀行だが、事実上ドイツ第4帝国のATMでもある。
【反グローバルの流れ】
しかし2016年現在、世界は再び転機を迎えようとしている。
ここからは、その変化と背景について述べることとする。
1.中央銀行協調時代が終わりつつある(重要度★★★)
前節で私は、現在の世界経済秩序は各国中央銀行の協調によって保たれている旨、綴った。
しかし、この体制ができて10年も経たぬうちに、時代は再び混沌の様相を示し始めている。そう、ラオウ亡き後の世紀末のように。
それは、ナショナリズムとグローバリズムの
相克。
確かに、経済のグローバリゼーションが内包する価値観、すなわち 『市場競争こそが、個人の自由を最大限実現し、かつ自由主義と民主主義を結び付ける(『ケインズの予言 幻想のグローバル資本主義』佐伯啓思 著)』という〝アメリカ的一神教的〟ドグマは、国境を越えて〝万人への平等〟を保証したかのように見えた。
しかし実際は、中西輝政先生が予言したとおり、〝グローバル化が進めば進むほど、ナショナリズムは鼓舞され輝きを増〟したのが現実だ。
Brexitだけではない。諸氏ご存知の通り、クリミアとウクライナ(※1)、ISISの台頭、イタリア北部同盟・フランス国民戦線・オランダ自由党とEU(※2)、アセアン経済共同体の発足、ユーラシア経済共同体等(※3)等等。
一旦は〝経済的豊かさ〟をエサに〝アメリカ的価値観〟すなわち〝一神教的幸福のドグマ押し付け〟を受け入れ続けてきた各国、各民族がここ数年、連鎖的に多極化を進めている。
それは再び世界のブロック化を推し進め、そして前述のようにリーマン後の対応で〝カネがない〟アメリカは、これを黙認している。
結果、中央銀行による世界同時協調に綻びが見え始めたのが、今年だ。
現在はG7(※4)が〝表向き〟辛うじて世界の経済秩序崩壊を防いではいるが、既にドイツ第4帝国と愉快ななかまたち、イギリスはこの体制と距離をとろうとしている。
近年ではアイケングリーン(※5)など通貨安競争の自然収束を肯定する識者への注目が集まっているのも、この風潮に乗ったものなのかもしれない。
我々は、グローバル化した市場のなかにありながら、再びブロックごとの通貨切り下げ競争に向かおうとしているのかもしれない。
それは、〝汎ユニバーサル経済システムのなかでのナショナリズムの相克〟という、矛盾に満ちた、いかにも混沌とした態様を想像させるに十分なものだ。
ブロック化は、中央銀行協調体制を破壊するかもしれないのだ。
※1…EUへの帰順を求めるウクライナ政府(トルコ系とハプスブルグ家マンセーの人たち)に対し、ロシア系移民の多いクリミアが独立を求め分裂。
※2…実質ドイツ第4帝国の傀儡と化した自国の、独立を求めている。
※3…反アングロサクソン型グローバリズム、反EU≒ドイツ第4帝国。ロシアが提唱する旧CIS(独立国家共同体)をメインとしたブロック経済圏。( `ハ´)のシルクロード経済圏と連携しようとしている。
※4…先進7カ国財相・中央銀行総裁会議。ロシアはクリミアの独立を支援して世界に迷惑をかけたから、今はハバチョにされている。
※5…偉い経済学者。リフレ派といわれる金融緩和による経済成長を唱道。
2.反グローバルの原因(重要度★★★)
このように、グローバル化が席巻し、一旦は秩序立てられたかのように見えた世界経済ではあるが、それは近年になって、まるで内乱のようにうねうねとした〝文明の衝突〟の顔を見せるようにもなった。
この原因は何か?
それは、グローバリズムそのものが生まれ持っている矛盾にあると思われる。
確かに、経済のグローバル化を推し進めた大きな要素のひとつに、情報技術の革新が挙げられる。それは金融資本をワープさせるように、瞬時に地球の裏側の資産を買い付けることも容易にしたし、異なる言語間の意思疎通も促すことになった。私たちは今や、地球の裏側の情報を現場で見るより簡単に入手できるようになったし、外国の通貨をクリックひとつで大量に買い漁ることもできる。
しかし同時にそれは、為政者やリーダーたちを〝名目だけの経済成長〟に拘泥させる危険性をはらんでいる。
経済成長率、為替、実質賃金、GNI(※1)、物価指数、ビッグデータ、株価、住宅着工件数、DI(※2)、小売売上高、ジニ係数(※3)…確かにこれらは一国、或いは一企業、一個人の〝表面的豊かさ〟つまり〝アメリカが唱道する豊かさ〟を推し量るには十分すぎる数字指針ではある。これ等が当たり前のように、瞬時に、空間を超えて手に入り、これをもとにマクロミクロの経済主体を動かすのは合理的であり、おそらくは正しい。そう、〝カネこそすべて〟であれば。
だが、所謂これら〝情報〟は、経済を包み込んで成立する〝社会〟というものから、我々の視点をずらしてしまう危険性をもはらんでいるのだ。
グローバル経済のなかで、経済の名目数値を向上するために、つまり富の豊かさを蓄積するために、万物の情報化は日々弛みなく進められる。
更には生産財(※4)における技術革新は、人的教育水準や技術水準、言語文化の違いさえ超えて、つまり国の枠組みを超えて、人的労働資源の平準化を可能にしてきた(※5)。
つまり、
・制度的にグローバル化の括りがなされた生産市場、消費市場において、
・経済主体はリアルタイムに必要な情報を収集し、判断し、投資を行うが、
・その生産活動あたっては、投資先における人的生産性の高さ低さは技術革新でカバーできるから、
・手元で入手できる情報により、より低コスト地代の生産地を目指すし、低労賃の人的資源を入手する。
結果、世界中…比較的治安が確保された中心国では、コーポレートランド(※6)化が進み、この経済主体の本国には資金が還流されて富の蓄積が進み、生産地の雇用は確保され、所得水準も上がって、飛躍的な経済成長を遂げるに至ったのである。
これが難民を生んだ…もとい、これがグローバル経済を生んだ歴史である!
が、ここで矛盾が発生する。
前述のように、グローバル化というものは、シェンゲン協定(※7)を例に挙げるまでもなく、単に経済先進国から中進国以下の国々への財や資本の移動を意味しているわけではない。
逆に、生産財の所在地が先進国にあれば、その国にとっての低賃金外国人が〝移民化〟して流入することもある。
問題は、ここで発生する。
移民を受け入れる先進国側国民にしてみれば、彼等は基本、カネや富に縛られて移民の生活スタイルにあわせる必要はない。自国は移民を受け入れているのであって、彼等に対して労働力を要求することはあっても、彼等のランドになってやる必要は、当然ない。
カネ払う方が偉いのだから、彼らにあわせてやる必要はないわけだ。
しかし現実には、特にムスリム系移民や( `ハ´)系移民は、自分達の閉鎖的ソサエティを構築し、その国においての彼らの居住地を〝実効支配〟してしまう。
自国の中に、異国が出来る。それも異民族の。治安も悪化する(※8)。
更には自国民との同化によって、移民の勢力は徐々に多数派を形成していく。彼等にとっては都合のいい、しかし本来の国民にとっては不利になるような政策がどんどん実施されていく。しかもその原資は、彼ら〝本来の国民〟が払う税金だ。
何より、たとえその国の出生率(※9)や名目上の経済成長は果たせても、その恩恵にあずかるのは移民を雇用し管理するホワイトカラー層(※10)。
高度に技術化され、低労賃で生産活動を行う大企業は儲かるが、伝統的な地域産業は駆逐されてしまう。
もともとその国で暮らしていたブルーカラー層は職をなくし、当該国民においての貧富の格差は拡大する(※11)。
彼らのプライドも、生活も、グローバリゼーションのせいでズタズタになってしまう。
興味深いデータがある。
グローバリゼーションを推進した張本人、情報革新と生産財の技術革新の最先端を行く、アメリカのデータだ。
「2008年以降に創出された雇用の4分の3近くが大卒以上の労働者に行き、同年以降に製造業セクターで失われた雇用のうち、(雇用が)復活したのはわずか38パーセントだ」~UBS銀行 Mark Haefele氏~
「アメリカでは、いまや人事総務や経理部門さえA.I.に雇用を奪われている。例えば、管理者が取り決めた人事考課内容をA.I.が就業者別に分析し、昇給から賞与までが自動的に算出されている。最早ホワイトカラーといえど、リューチンワークに従事する者は安心などしていられない。A.I.の発達は、彼等の仕事を奪っていく。残るのは低賃金で、機械でさえも採算にあわない仕事だけだ。それは当然、低賃金の移民労働者に奪われていくだろう」~青山繁晴先生の選挙演説~
トランプは言った。「I would certainly implement that. Absolutely. There should be a lot of
systems, beyond databases. We should have a lot of systems.」
訳 (国民データベースに、イスラム教徒であるかどうかを付記すべきかどうかについて)「絶対やる。データベース登録にとどまらず、もっと多様なシステムも展開せねばならない」
産みの親たるアメリカさえも例外ではなく、世界ではグローバリゼーションへの反抗が始まった。
同時にグローバリゼーション即ち数値上の成長を希求するがあまり、本来の国民をないがしろにしてしまった政治システムに対する、不信感が増大してゆく。
それはナショナリズムと結びつき、グローバル経済からの〝政治レベルの脱却〟となっていく。
グローバル化を否定した国々の経済活動は、一国のみでの単独の道を選ぶか、或いは同質的な民族や地域、文化をもった国々と結びついてブロック化し、成長を保持しつつ民族的結束を強めていく。
こうして世界は多極化していく。
何度も言うが、経済がグローバル化しているからこそ、協調した金融政策は意味を持つ。何故ならグローバリゼーションの産物たる相互依存体制のなか、一国において発生する危機は、全世界的に影響を与えるからだ。
一国に端を発し、全世界に影響を与えていく危機を封じ込めるには、国境を越えられない一国単位の対応力では、当然無理。
だから〝みんなで何とかする〟。
そのための協調体制だ。
一方で、多極化した世界を支配するのは、ブロックごとのエゴだ。
だから、そこに協調は生まれない。
金融協調政策は、通用しない。
これが中央銀行協調時代の終わりにつながっていく。
※1…国民総所得
※2…日銀曰く、企業の業況感や設備、雇用人員の過不足などの各種判断を指数化したもの、だそうだ。
※3…説明がめんどくさいので理論は端折る。簡単に言うと、この数値がでかいと所得の格差が大きく、小さいと社会の経済格差が小さい。
※4…生産物やサービスをつくるための固定資産。原材料、土地、建物、生産設備やサービス提供機器など。但し、グローバル化であってもさすがに土地は移動できないw
※5…熟練の知識化はド素人をプロ並みの職人に仕立て上げる、とP.F.ドラッカーはのたもうた。確かに、今やカメラなんてプロカメラマンのパラメータを打ち込むと、ウチの嫁が撮った写真も一気に上級へベルのものになるし、ヨシムラやノジマの機械曲げ集合管だって性能的には手曲げのそれとそんなに変わらない。旋盤加工の職人芸も、いずれ3Dプリンターによって誰でもコピーできるようになる。
※6…雇用と高い給与をエサに、現地雇用者の国の文化や慣習を否定させ、本国のビジネススタイルにあわせさせるという新植民地主義。但し、前時代的なものと違って、富の配分は労働者と雇用者側の同意によって決定される。たとえば、イスラム教国家において、欧米キリスト教国家資本の食品加工企業が現地工場を建てたとする。イスラム教ではぶーしゃん(^(○○)^) は身が汚れる元であるから触りたくないはずだが、給与が高いならしゃーない、とこれを喜んで加工する。こういうのが常態化したものがコーポレートランドだ。
※7…EU経済圏において、多国間の人の移動の自由を担保した協定。必ずしもEU加盟国=当協定加盟国、ということではない。
※8…スウェーデンのストックホルムでは、犯罪率が5年で7割がた増えた。
※9…(´・ω・`)の左翼は、フランスは福祉政策で出生率が増えたとドヤ顔しているが、実は増えてるのは移民の子供で、本来のフランス人は子供を産まなくなったというw
※10…頭脳労働者、管理側の人と思えばいい。現場の人はブルーカラーという。
※11…Brexitの原因のひとつとされているが、実はイギリスはもともとブルーカラー層がかなり少ない。国民投票での離脱派の大多数は、大英帝国の酔いから醒められない老害である。
【駄菓子菓子】
1.後戻りはできるのか!?(★★★)
それでも、疑問は残る。
私はグローバリゼーション、そして相互依存というものを、全面的に否定することはできない。しかしだからと言って、その国の経済や社会を破壊してしまうような奔流を認めてもよいとは思えない。
確かに、グローバリゼーションが産む弊害は看過できない。
貧富の差を拡大し、ひとつの国家をガタガタにし、先人が築き上げた社会さえも崩壊させる危険性を捨て置いて良い筈がない。
しかし同時にそれが、曲がりなりにも世界経済全体を底上げし、結果として世界秩序に貢献してきたことを否定することもできない。
その恩恵は、富の蓄積だけではない。
ギリシアのように、イタリアのように、危機に際しては他国から積極的な援助を受けた国もある。
オーストラリア、ブラジルのように、他国資本を受け入れたことで産業転換に先駆け、新たな雇用を生み出した国もある。
私たち(´・ω・`)も、東日本大震災の折、本気の円高是正を受けた。
国際経済は、キレイごとでは済まされない。
協調介入は、〝放っておけば自国が損害を蒙る〟体制=グローバル経済システムがあるからこそ発動するし、効果も発生するのだ。
言わば、グローバリゼーションに参加するということは、その国の経済が生きていくための、保険保険契約のようなものだ。
何より重要なことは、(好むと好まざるにかかわらず)我々は既に、その船に乗ってしまっている、ということだ。
世界経済の大海のなか、一度乗った船から飛び降りてしまえば、当然荒波にも呑まれる。飢えと乾きにさいなまれる。
その苦しみを、痛みを、我々は受け入れることが出来るだろうか?
覚悟することだ。
その先駆け、EUというシステムから離脱したイギリスよ。
Brexitに賛成した51.8%、2400万人の人たちよ、世界への影響は兎も角として、あなた方はこれから先、祖国が蒙る様々な困難を受け入れることはできるのか?
ポンド安で株価は復活したが、君達は同時に15%の価値を失った。
ロンドンという金融の牙城から、資金がどんどん流出している。
10万単位の失業者が発生し、しかも悪性インフレの嵐が吹き荒れ始めた。
ユーロ経済圏は6パーセントもの市場を失い、対英輸出の多いスペインの経済は更に悪化するだろう。
高騰していた地価は下がり、資産デフレは著しい。
スコットランドは離れていく。
何より相互依存から離れた今、あなたたちの国の巨大な財政赤字に対して、もう誰も助けてはくれない。
あなた方は、多くの国の恨みを買うだろう。
離脱を投じたイギリス国民よ、あなた方は本当に〝正しい選択〟をしたと思っているか!?
残留を支持した若者たちに対し、責任を取れるか!?
正しいことをしたというのなら、すべてを受け入れることだ。
2.嵐のなかへ(★★★)
世界は混沌に向かおうとしている。
そこには、従来のような一元化された秩序はないだろう。
既に同じ経済システムに乗ってしまっている以上、(´・ω・`)もまた、例外ではない。
本年10月、イタリア憲法改正。
同11月、アメリカ大統領選。
17年3月、オランダ国政選挙。
同5月、フランス国政選挙。
同9月、ドイツ国政選挙。
国家の誇りを守るか?
経済的合理性を重んずるか?
世界はいま、Point of no return.
幸いにして我が日本は、イギリスと違って今のところ、特に何か大きな柵(しがらみ)を抱えているわけではない。
だから、十分よく考えることだ。
ひとつ、いっとく。
人間、〝食えなくなったらオシマイ〟だぞ!?
第一章おしまい…残り、あと4章くらいか。