前回のブログでは、TL4の3・4速のシンクロが痛む理由の仮説を、ギアの配列を見てわかったと書きました。
結論から先に書くと、「アイドラーギアとシャフトの間に(6速を除く)ベアリングがなく、ブッシュになっているためフリクションが大きい」ことに尽きると思います。

この写真では、下側がクラッチにつながるインプットシャフト、上側がデフにつながるアウトプットシャフトになります。左側から1速・後退・2速~6速の順にギアが並んでいます。写真に写ってはいませんが、これとは別にリバースギアのユニットがあります。
TL4は日産とルノーが提携した後の2005年に採用されたトランスミッションです。なので今では古い設計のものです。
現代のマニュアルトランスミッションでは、アイドラーギアの軸受けにローラーベアリングが使われていて、フリクションロスの低減に寄与しています。ここのフリクションが小さいと燃費に影響します。常時嚙み合わせ式のトランスミッションでは、駆動力が繋がっていない段のアイドラーギアは、シャフトに対して空回りしているからです。
シンクロは、シャフトに嵌合したハブスリーブ側に付いています。シフトフォークに押されたハブスリーブが、シンクロを空回りしているギアに押し付けて、アイドラーギアの回転数をシャフトの回転数と同じになるように同期させ、一致するとハブスリーブの内側に刻まれた溝がギア側の溝に嚙み合って駆動力を出力側のシャフトに伝達します。(ボルグワーナー式シンクロの場合)
問題は空回りしているアイドラーギアです。これがフリクション無く軽く回っているとしたら、シンクロが押し付けられることで回転数が同期する際に軽い力で済みます。ところがここのフリクションが大きいために、強い力でアイドラーギアを押し付ける必要があります。
それだけでもシンクロのブレーキ面の負担が大きいわけですが、そのアイドラーギアの回転数は、TL4の場合はタイヤの回転に同期しているアウトプットシャフトに嵌合したギアに常時噛み合っている(=同期すべきインプットシャフトに対して回転がギア比の分だけ低い)ために、シンクロにかかる負担はさらに大きくなるわけです。
ただでさえスポーツエンジンのRSですから、エンジン回転を上げてギアチェンジすることも多いので、シンクロの負担はさらに大きくなります。
そのためにルノーは、負担の大きい3・4速のシンクロだけ柔らかい真鍮から固い鉄へ素材が変わり(シンクロの歯の摩耗を抑えるため)、一方でギアを摩耗させないためにブレーキ面は柔らかめの素材を貼り付ける対策をとった、という仮説を立てています。おまけにご丁寧にハブスリーブのキーのバネの強さまで固くするほどの気の使いようです。
ちなみに同じトランスミッションを、カングーやティーダ、セニックなどに使っていますが、この対策をしているのはクリオ/ルテ3だけです。
(※のちに調べるとルノーのフルエンスという車の6MTも同じ対策品が使われていました。)
つまりは構造的な問題なのですが、何か対策はしたいと思います。どういう対策がいいのか、シンクロを痛ませない注意点は何か、次の記事に書きたいと思います。
Posted at 2023/09/30 22:32:30 | |
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