過去においてネジ式車高調の経験はあるのだが、アッパーマウントは純正流用だったので特にそのマウント形式に関して気に留めることはなかった。しかし、ブリッツZZRを購入してからというもの、やたらとフロントストラットのアッパーマウントの事が気になり始めた。マクファーソンストラットの場合、ダンパー周りも重要な構造部材の一つだし、マウントの良否は即、転舵の良否に繋がって来るからね。
メーカーを問わず純正ストラットの場合、大容量のラバーの中にスラスト方向でセットされたシールドベアリングが組み込まれていて、そこに大きな荒巻用のスプリングシートと合流したダンパーロッドの先端がナットで締結される仕組みとなっている。また、マクファーソンストラットは構造上、ステアリングの転舵に伴いダンパー周りも回転せざるを得ないので、アッパーマウントに組み込まれたベアリングがその大きな役割を担う。
この純正マウントは100点ではないだろうが、ダンパー作動性・転舵・静粛性等の乗り越えるべき様々な問題をそれなりに解決してくれる優れ物だろう。
では、純正流用・ピロアッパー・ラバーアッパーに大別できる車高調の場合はどうか。純正流用は特にデメリットらしきものはないが、ピロアッパーやラバーブッシュアッパーは結構問題を抱えているように思うがどうだろうか。
ピロアッパーはダンパーロッドが拘束されずに済むのでダンパー作動性に関しては理想的な構造なのだろうが、周知のごとくボディには厳しくボールの耐久性も低い。ただし、短期間ながら経験のある私に言わせれば、ダンパーさえまともであれば乗り心地においては問題なし。とは言え、金属だけの物を一般ユーザーが使うことはやめるべきだろうね。まあ、純正ラバーブッシュアッパーのスラストベアリングをピロに置き換えた様な製品もあるけどね。
そして、静粛性の為にBLITZやHKS等多くのメーカーが採用しているラバーブッシュアッパーマウント。この形式は見て直ぐに判ると思うが、ラバーマウントはダンパーのみであり、純正のアッパーとは構造が別物と言ってもよい。良く言えば、プリウスで話題となった所謂「入力分離式」。悪く言えば、リジット形式ダンパーのスプリングシートに摩擦軽減素材を加えただけの安物。
何故スプリングシートの上下に摩擦軽減素材を足さなければならないのかと言うと、ダンパーロッドとスプリングが分離した状態でアッパーマウントにセットされるから。(もっとも、この形式は本来のマクファーソンストラットの姿らしいが。)
詳しく説明すると、ダンパーはアッパーマウントブッシュにリジット締結されてもケース内でスラスト回転できるが、ボディに固定されたアッパーマウントとスプリング同士はそう容易くスラスト回転できない。これはマクファーソンストラットの宿命。そこで、スプリングシート上をスプリングが回転し易いようにナイロンやテフロン製の摩擦軽減素材が必要になって来る。一般的に、水や粒子が侵入し辛いアッパーシート側にはスラストベアリングシートが使われていてスプリングのストレスを少しでも軽減させようとの対策がなされている。
でも、このスラストベアリングシートとやらはほんと、どのメーカーの車高調もちゃちいね。へビィデューティーにガッチリした物を奢ればコストが跳ね上がってしまうので出来ないんだろうけど。しかもロワシート側は単なるナイロンやテフロンのシートを重ねただけの物。そりゃあ、スプリング単体だけを回せば簡単にスラスト回転するけど、車載状態のようにアッパーマウントを押さえてロワブラケットを回すとそう簡単に回らないって! 終いには、ブラケットとケースの締結がいとも簡単に緩んでしまう始末。現実の荷重走行状態では尚更でしょう。転舵にも悪影響だね。ロワシート側にもスラストベアリングシートを挟む裏技も見掛けるが、耐荷重性能が飛躍的に向上しない限りは付け焼刃的な対処法でしかないような気がするけど。
それにこの「車高調用入力分離式アッパーマウント」はスブリングが別体であり応力が軽減されるとは言え、作動性に於いてはかなりダンパーロッドには厳しそう。
と言うことで長々と書きましたけれど、そんなところにも気を止めて、正しい車高調選びをしましょうね。因みに私の理想とする車高調は、-2cm基準の減衰調整付きネジ式で純正アッパー仕様。やっぱ安全走行上、ブラケットとケースを別体にしてはいかんよね。どうしても全長調整にするのであれば、かち割りブラケットのボルト止めにしないと。何処とは言わんが、強度の要であるブラケット内のネジ切りが全面なされていないなんて不真面目過ぎる。
Posted at 2017/03/25 02:10:34 | |
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