予め断わっておきますが、ひま人のための長〜い思い出話です。
時間のない方はご退場ください。
ほろ酔いは、中学・高校時代、兄の影響を濃く受けて、変なイラストを描くようになったり、思考回路もだいぶ他の人とは違ってきたりしていました。
そして、この時期はちょっと難しい本を読むのが「カッコいい」と思っていました。
背伸びしたい年頃ですから。
その頃、兄が心理学の本などを読みかじっていたりしまして、そんなところへの憧れみたいなものもあったでしょうか。
中でも難解だったのはニーチェの「ツァラトストラかく語りき」(上・下)でした。
新訳の「ツァラトストラはこう語った」というのも出版されていましたが、これはカッコ悪いので却下。
しかし、これが難しい上に、字体も旧漢字で本文の下に長い注釈がたくさんあり、「下巻○○○頁をみよ」などと飛ばされてばかりで全く先に進めず。
結局、中学卒業までに上巻がボロボロになりながら、上巻すら読破できず。
そのままずっと忘れていて、のちに突然思い出して漢和辞典を片手に読破したのは、すっかり大人になってからのことでした。
話がだいぶ逸れてしまいましたが、そんな中学・高校時代、結構ベタですが芥川龍之介や太宰治、坂口安吾、谷崎潤一郎、三島由紀夫なども好んで読んでいました。
名古屋市内の古本屋という古本屋を歩き回り、電車賃は使いたくないので通学定期の効く駅で下車して一日じゅう古本屋を巡って入するのは1冊50円か100円の文庫本。
芥川龍之介のハードカバーの全集が100円で買えたのは嬉しかったなぁ。
(これも昭和30年代初版の旧漢字体…)
後から思い出してみると、地下鉄の10駅分くらいは一度に歩いていたようです。
理系を挫折して美大へ進学した変人の生態です。
時を経て、大学生になり、免許をとり、クルマを買い、社会人になり、クルマを買い替え、転職し、クルマを買い替え、またクルマを買い替え…、そんな文学や哲学にちょっとだけ傾倒したことは遠い昔の記憶になっていました。
そして、いつのまにか30歳を過ぎて、当時の愛車はまだ EP91 スターレット グランツァVでした。
スターレットとしては最終となった前期型のターボモデルです。
それまで乗っていたGX81チェイサーGTツインターボのエアコン修理に行って、足回りの結構激しいゆがみを発見され、新車を衝動買いしました。
このスターレット、年間5000km程しか乗らず、所有期間は6年くらいで3万kmちょっとしか乗りませんでしたが、やはり溺愛していた「愛車」でした。
ある日、ずっと詰まっていた仕事が数日だけ緩くなった時期があり、何の用事もないけれど、当時の上司に「この週の土日の前後に有給休暇を合せて連休をとってみても大丈夫ですか?」と聞いてみると、あっさりOK。
4連休だから2日くらい思い切り遊んで2日は体を休めようかな、などと普通に考えていました。
しかし、ここからが僕の頭がおかしいというか、常人には理解されない部分。
本領発揮です。
ボンヤリ考えて…
そういえば昔、太宰治好きだったなぁ。
斜陽館て、まだあるんかなぁ。
そうか、旅館としてはやってなくても記念館・資料館になってるのか。
よし、行こ。
と、思い立ったのが金曜の夕方、出発したのは確かその夜20時頃。
車中泊、丸2日で日曜夜くらいに帰って来るつもりでした。
2日くらい思い切り遊ぶ…とは、こう言う意味なのでした。
高速道路?使いません。
当時、高速道路は「つまらなくてお金がかかる」から嫌いでした。
名古屋から青森まで下です。
大都会東京はコワいので通らず、日本海側国道8号線〜7号線です。
カーナビ?ありません。エネオスの全国版ロードマップのみ。
寄り道もほとんどしません。
しかし、せっかくなので海沿いを走りたくなると、たまに国道から逸れます。
太宰治の作品に出てくる場所だけは一瞬だけ立ち寄りながら思いを馳せます。
千畳敷、鯵ヶ沢、五所川原、そして金木へ。
省略し過ぎのようですが、一人でずばーーっと走ってるだけですので、道中の約20時間は特筆事項がありませんで、斜陽館に到着です。
あれ?何か門が閉まってるぞ。
向かいの土産物屋が開いていたので、入ってレジのおねえさんに聞いてみると、
「15分程前に閉館しましたよ。17時までです。」
「えーーっ!名古屋から車で来たんですけどね。残念。宿泊する予定はしていないので帰ろうかな。」
「お時間あるのでしたら、宿お調べしましょうか?近いところ、安いところ、きれいなところ、ご希望言っていただければお調べします。せっかく来られたんだし。」
ということで、全く予定外でしたが、近くの安い宿で宿泊することに。
おねえさんにこう言われなければ、本当にそのまま帰るつもりでした。
宿の名前は覚えていませんが、お世辞にもキレイとは言えません。
トイレの便器はひび割れ、表には拾った野良犬を飼っており、まったく人になついていません。
しかしまあ、僕には十分、というか、ピッタリです。
結構好きな感じ。
夕食は何でも良いと仰るならお出しできます、ということであまり鮮度が良さそうにはみえない刺身(スーパーで買った?)がメインで、瓶ビールを1本いただきました。
翌朝一番で斜陽館を訪れ、ひとまわり。
ノートに記帳しておきました。
帰り際に、もう一度土産物屋に行くと昨日のおねえさんがいたので、一言お礼を。
「おかげさまで楽しめました。ありがとうございました。」
「それは良かったですね。もしもう少しお時間あるなら、竜飛崎まで行ってみたらいかがですか?本州の先端ですよ。」
という言葉を受け、せっかくなので行ってみることに。
せっかく泊まったこともあり、太宰の作品にもちょっとあった場所だな、と。
スターレットを走らせ、突き進み、徐々に案内標識の残りkm数表示が減ってきます。
で、残り3kmくらい?になったところでストップ。
あれ?何か門が閉まってるぞ。
降りて看板をみてみると…
「冬期閉鎖期間中3月○日まで」
って、あと3日じゃん!雪なんて微塵もないじゃん!!
ということで竜飛崎はあきらめて帰路につきました。
竜飛崎寸前まで行ったこともあり、帰路についたのは午後だったような気がします。
予定より1日遅れてしまいましたが、予備日の月曜午後に帰宅。
ほろ酔い流の一人旅は、だいたいこんな感じです。
この時の記憶で言うと、新潟がとてつもなく長く、真っ暗闇な1本道、信号もほとんどなく、自分の頭もクルマもおかしくなってしまいそうな気がしました。
走っても走っても、出てくる標識の地名は新潟県のものでした。
タイミングもあるかもしれませんが、行きも帰りも新潟を越えられずに力尽き、車中で明け方に数十分だけ仮眠をとりました。
きっと日中に走ったところで、まわりは田んぼばっかりとか、なんにもないんだろうな。
帰り道、新潟を超え、上越から長野県に突入したときの清々しい感じが印象的でした。
新潟県を悪く言ってしまいましたが、実は母の出身地でもあり、僕にとってはそれなりに思い入れのある地なんですけどね。
こんな感じで、このスターレットもなかなか思い出深いクルマです。
以前ちょっと記載したように熊本県荒尾〜愛媛県松山の旅(もちろん?下です)も、こいつと一緒でした。
M3を含めて、他のクルマでは、ここまでのバカはやっていません。
2度にわたって伊良湖到達できず、の思い出も、こいつでした。
燃費もよくて、ほんとにいいクルマでした。
ちなみにこのスターレット グランツァVも、前期型でMTの出物をネットで探しまくってた時期がありましたよ。