
H.E.では明度に対する順応性も備わっています。例えば晴れた日の昼間に屋内を見ていて、そのまま屋外に目を向けてもキチンと見えます(多少眩しさは感じるかもしれませんが)。これがH.E.に備わっている明度順応です(走行中にトンネル内に入ったときなどに起こる現象の「暗順応」や逆の場合の「明順応」は、また別の話ですので触れません)。
C.E.では明度に対する順応性は基本的にはありません。例えば、画面の中に明るい部分と暗い部分が混在していた場合、その明るさの平均値を取るとか、明るい部分を優先する、あるいは逆に暗い部分を優先することで写真としては成立させることができます。しかし、明るい部分を優先すれば暗い部分は暗く沈み込み(俗にツブれると言います)、暗い部分を優先した場合明るい部分は真っ白になったり(俗に飛ぶとかトぶと言います)します。晴れた日中に屋内から屋外を撮ると仮定すれば、屋外を屋内はツブれ、屋内を優先すれば屋外は飛んで街並みなどの様子や色などが解らなくなってしまいます。平均値を取った場合に、そのカメラにおける再現性の範囲内であれば、明るい部分と暗い部分を同時に見せることは可能ですが、写真の仕上がりとしての良否はまた別問題になります。
余談ですが、日常的な明るさの範囲を御存知でしょうか?
晴天時の日中屋外は約100,000ルックス、夜の星月夜は約1/1000ルックス(ルックスは明るさの単位)です。これは比率にすると1億:1です。人間の目は虹彩の開け閉めでも目に入る光の量を調整していますが、それだけではありません。網膜の細胞の「感度」を変化させているのです。だから明るいところも、暗いところも見ることが可能になっているのです。
現在のデジタルカメラでは、画面内に明るい場所や暗い場所があった場合に、内部の処理で明るすぎることによって起こる「トビ」や暗すぎることによって起きる「ツブれ」を発生させないようにしています。「トビ」や
「ツブれ」は無い方が良いのは確かですが、暗い部分から明るい部分までが均一の明るさで再現されたのならば、それはそれで平板な写真になってしまうでしょう。画面の中に明るさの「差」があるがゆえに、二次元の世界でありながらもモノの立体感や、空間の奥行きを感じられるのが写真だとも言えるのです。
もう少し、この章は続きます。
ブログ一覧 | 日記
Posted at
2010/12/16 21:05:36