
皆様、遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。
今年も、よろしくお願いいたします。
さて、新年早々ですが今年もおっさんの戯言をアップさせて頂きます。
お正月の昼間の電車の車内は静かだった。
私の正面の座席にはおそらく70代後半あたりかと思われる老夫婦が仲よく腰を下ろしていた。
そのほほえましい姿を何の気なしに眺めていたのだが、改めて見ると、この夫婦なかなかの美形である。
昔はさぞかし美男・美女のカップルだったに違いない。
特に、旦那は目張りでも入れようものなら歌舞伎の舞台に立てそうな風情である。
それに、茶を基調としたズボンとセーターの組み合わせの上からたぶんカシミヤだろうと思われるグレーのマフラーをサラッと巻きつけたところなどなかなかのダンディぶりでもある。
しかし、どこか体がわるいのか座席に座りながらも手にしたステッキを放そうとしない。
横にちょこんと座った夫人が、やや体を斜めに向けステッキに預けた旦那の腕に両手を添えていたわるような視線を投げかけている。
その夫人がまた、きものを着せて髪を結い上げでもすれば小唄の師匠か置屋の女将に見えなくもないといった趣でその歳にしてなお、そこはかと漂ってくる色香の名残のようなものを感じさせる。
薄紫に染めた白髪の感じも鼻にちょんとかけたような遠近両用と思われる眼鏡のフレームもなかなか上品でセンスのよさを思わせる。
いい感じに年輪を重ねた夫婦なんだなぁと私は見るとはなしにその様子を眺めていた。
やがて駅が近づいて電車はスピードを落とし始めた。
次ですね。
夫人が窓の外に目をやりそわそわとし始める。
荷物を持って席から立ち上がろうとする夫人を隣の旦那が まだまだ というふうに手で制して言う。
おまえはほんとにせっかちだねぇ。
ゆっくりでいいんだよ。ゆっくり、ゆっくり。身の丈に合わせて、ゆっくり。歳をとったら気持ちに体を合わせるんじゃなくて体に気持ちを合わせなくちゃいけないよ。
この旦那 凄いことを言うなぁと感心しながらなおも見ているうちに電車は駅構内に滑り込み車輪にブレーキのかかる音が響く。
さぁ 着きましたよ。
夫人は立ち上がって腕に添えた手で旦那の体を支え立ち上がらせようとする。
早くドアの前に立たないとと旦那を急かす夫人。
おそらく旦那はそんなにすばやく動くことができないのだろう。
しかし、それでも旦那は悠然と座席に座ったままそんな夫人をなだめるように言うのである。
まだ、まだ。 ちゃんと止まってからでいいんだよ
でも、降りる前にドアが閉まっちゃいますよ。
ドアなんて待たせとけばいいんだよ。ドアより人間のほうがエラいんだから、、、。
う~ん凄い人だ、、、である。
それでも気が急いてオロオロする夫人に旦那が言った言葉がさすが粋を心得たと思わせるひと言で私は感服つかまつったのであった。
ちゃんと止まる前に立ち上がるとつんのめるだろ? つんのめってこけちゃうとカッコわるいだろ?
まだカッコなんて気にしてるんですか?
そりゃそうだよ。死ぬまで気にするさ。俺がカッコわるいとおまえだって恥ずかしいだろ?
私はその心意気に参りました、、、。
最後までみて頂いた皆様ありがとうございました。
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Posted at
2015/01/08 20:06:51