モータージャーナリスト　町山絢香のブログ一覧

　今日の五選
　　　　　　（５）
１２・８１２・４１２・１１１２・４１２・１１

　今日の圏外；；

１２・８１２・１１１２・２１２・１１

’０１　日産　セドリック　セダン　２．０ＬＰＧ　カスタム　４速フロアＡＴ　（１０）


　今回取り上げるセドリックは、普通にタクシーとして使われた個体であり、走行３７万ｋｍながら内装も綺麗で、まだまだ現役とした活躍できる状態にありました。

　というのも、何もタクシーがしたくて取り上げたのではなく、シンプルな構造をした小型ＦＲとして貴重な存在でありながら、自動車雑誌などのインプレッションで取り上げられることもなく、辛うじて高速有鉛デラックス誌でネタになるくらいで、実際に自家用車として使うにはどうなのか、カーマニア程知る機会が少なくて不明な点が多く、次第に無関心か、関心があってもその素振りを見せられない、という状況だったかと思います。

　本ブログを含めて、数台Ｙ３１セドグロを取り上げてきましたが、いずれも６気筒エンジン搭載の豪華グレードで、タクシー用に用意された直４ＬＰＧを取り上げるのは今回が初めてです。

　これまで６気筒の豪華仕様で乗る限り、どうしても内外装の質感やシート本体の出来でトヨタのクラウンに見劣りすることが多く、中々好印象とまではいきませんでした…。

　そして、今回の個体は下から２番目のカスタムでフェンダーミラーやグリルにはメッキがあるものの、シート生地は塩化ビニールレザーで、プロの道具として耐久性を重視した作りになっております。

　運転環境で言うと、車両感覚がつかみやすいのは言うまでもなく、シートクッションが柔らかめなところはあるものの、豪華仕様のベロア調の必要性を感じさせないもので、初期型タクシー仕様からあったタクシーインパネで肉厚が薄いため、ドライビングポジションの面でも優位にありました。（６発モデル最後のインパネと運転席エアバック付との組み合わせだと、ステアリングが手前にありすぎて、余儀なく寝そべり姿勢を取らざるを得ないところがありました…。）

　後席の印象についてですが、残念ながら背もたれを寝かせること＝リラックスという固定概念が強かった昭和時代を象徴するものになってしまっていますが、それでも居心地としてはファブリック地よりも好印象だったくらいでした。

　走った印象としても、ナンバーなしの状態なので敷地内のみとはなりましたが、カタログスペック８５馬力の割にはＡＴでも出足はそこそこ良く、８０扁平１４インチの細めのタクシータイヤと柔らかめの脚でステアリング操舵力は劇的に軽く、７０年代車の低グレードのようにノンパワステでも十分に行けるのでは…と思ったほどです。

　また、ＡＴそのものも上級のＶＧエンジン車を除いてフルレンジ電子制御を行わないシンプルな方式で、下手に素人受けを狙っている部分がないため、トルコンの繋がりも比較的自然な印象で、これならＭＴ派であっても一定の納得はしてもらえるものか、と思います。

　また、タクシーとしての耐久性を重視して意図的にボディ剛性を落としている傾向があり、それでも柔らかめの脚と細いタイヤとの組み合わせで、多走行中古車に有りがちな経たり感が感じられなかったことから、強馬力に剛性の高いボディ・脚に太いタイヤへと進化の方向性が向きがちではあるけど、長くＦＲの走りを楽しむのであれば、そうした進化と逆行していくのが、ひょっとしたら最も賢明な方法ではないか…と思ったほどです。

　その意味では、例えトヨタが来年８６を発売して喝采を浴びたとしても、未だ新車で買えるＹ３１セドリックの存在意義は、引き続き高いものがある、と確信しているのです。