’73 トヨタ カローラ 4ドアセダン 1200 デラックス 4速MT (30)


① 成り立ち
800cc級小型車のパブリカと、1500cc級乗用車のコロナとの中間車種として、1966年(昭和41年)に初代E10系を発売開始。
小型車としての機能主義に徹したものの販売台数に繋がらなかった初代パブリカの教訓から、お手頃価格で豪華さを望む日本人の心理を突きながら、高速道路の整備が進みつつある中で高速化志向が高まることを想定して開発され、ライバルの日産サニーよりも100cc多い排気量をバックに、1969年から2001年までの33年間、新車販売台数1位の座を守るベストセラーに輝いた経歴を持っています。
今回紹介するのは、2代目に当たるE20系で1970年にデビュー。2度のMCを経た後期モデルの73年式になります。
この頃から、初代セリカなどに搭載された1.6L・DOHCを移植したレビン・トレノが追加されるのですが、今回は一般ファミリー向けの3K型1.2L・OHVに4速MTが組み合わされた仕様です。
② 運転環境
昔の日本車なので、シートのクッション抜けがあったり、調節機能が極めて限定されているにも関わらず、現行140・150系や先代120系より遥かに車両感覚が掴みやすくて乗りやすいほど。
なんと言うか、この時代のクルマはあくまでもエンジニアの発言力が強くて、「素人は黙ってろ」的なところで、さほど歪にならずに済んでたかと。
シートベルトは3点式ながら、自動巻取り機能のELRでないため、安全装備はそれなりですが…。
③ パッケージング
安全装備といえば、後席シートベルトの存在が確認できず、今の時代に4・5人で乗る際には、それなりの安全対策は必要な模様です。
それを除けば、驚異的にコンパクトで軽量なボディなFRということで、今や特殊なスポーツカーの専売特許となってしまった「人馬一体感」に溢れていたのです。
しかも、一般ユーザー向けの大衆車で、という贅沢付きで。
④ パワートレイン
シリーズ中、最も排気量の小さい1.2Lながら、低速トルクの太い実用向けなエンジン特性で、カタログスペックでは、信じ難いほどの軽快な加速性能を持っています。
というか、今時のエコカーと称するCVT車のほうが、余程出足鈍くて遅いくらい…。
先日乗ったミニカF4は、超低速向けで高速道路向きではどう考えてもないけど、このカローラなら80km/h巡航も何とかなりそうな予感で、1台所有でこなすなら、カローラの方が向いてるかと。
⑤ ハンドリング
シンプルなシャーシ構造で、ノンパワステで細身のタイヤで、今時のクルマではあり得ないソリッドな乗り味が魅力です。
大径で細身で見た目やる気のなさそうな純正ステアリングですが、パワステに頼らない取り回し性の確保や、ドライバーがしっかりとステアリングを切らせる、いい意味でスローなハンドリングも、見どころです。
これに強馬力で重いエンジンを積んで、ワイドタイヤを履いたスポーツグレードだと、運転が相当な重労働になることが容易に予想がつき、これに対処するが如くパワステが普及する歴史を踏んできた今となっては、そのベーシックさが返って非常に貴重な存在になってきています。
ただ注意点として、4輪ドラム式ブレーキのため(フロントディスクはハイデラックス以上からでしたので…。)、ブレーキングするには相当な踏力が必要です。(ブレーキアシスト慣れした、急ブレーキ禁止の観念に犯された右足の持ち主は、特に注意が必要です。)
⑥ 判定
:文化遺産
もし最初に乗ったのが27レビン・トレノだったとしても、この判定だったと思います。
ただ、27は中古車市場でも人気でハチロクに次いでタマ数が多い物件。
それだけに、ベーシックな1.2Lを積んだ仕様は忘れがちな今のクラシックカー市場だからこそ、大切にしたい物件の1つなのです。
わたしがここまで、20系カローラに乗ってここまで持ち上げているのは、単にアンティークだからでも物好きだからでもないのです。
純粋に、人とクルマとが一体になって会話がダイレクトに出来る、今のクルマが忘れてしまった価値を持っているから、なのです。
その意味では、よりコンパクトで端正なデザインである初代の方が、よりピュアでしょう~。
そこで、ジャパンよりもハコスカが持てはやされる現状と同じことが起こるのですが…。
さらに、この個体。まだまだ現役でしっかり走れるのです。
これが、ボディが錆で遣られてエンジン機関の調子が悪ければ諦めも付くのですが、このまま廃車にされてしまうのは、どうにも歯がゆくて仕方ないのです。
わたしが、このカローラを買取できれば、当時の福山ナンバーのまま継続できるのに…、そう思えてならないのです。
もし買取できるのであれば、今乗ってるシルビアを手放しても、全然惜しくないのです。
2010年03月14日 加筆訂正あり
’86 トヨタ センチュリー Eタイプ 3速ATコラム (30)


① 成り立ち
初代センチュリーがデビューしたのは1967年で、2代目クラウンをベースにV8エンジンを積んだ「クラウンエイト」の後継として、世界の高級車に匹敵するモデルとして本格的に投入され、1997年に2代目に移行するまで長年に渡って製造されました。
主に法人ユーザーに使用されることが多かったことで、今回紹介する物件のように、年式の割りに驚異的に綺麗な物件が目立つ傾向にあります。
平成に入って、3ナンバーサルーンが大衆化されて失ったものが、このセンチュリーにはある、そんな気がします。
② 運転環境
最高級車なのにチルトステアリングがなかったり、今時のミニバン体型の正反対で、全高が低くてステアリングコラムも低いけど、車両感覚が驚異的に掴みやすいボディ形状で、クッションがしっかりあって、しかもコシのある極上なシートのお陰で、今時の下手な高級車よりも、運転しやすさでは圧倒しているくらいです。
③ パッケージング
日本人好みの水平基調なデザインで、トランクスペースは深さがない分劣るものの、後席居住性に大きく配慮している証拠として、あえてフロアを高床にして、後輪駆動車にありがちなセンターフロアの出っ張りをなくして、後席3人掛けが楽にできるところは、さすがVIPカーといったところでしょうか?(ビップじゃないよ。)
シート表皮はブルーの布地でしたが、これなら下手な革シートより余程座り心地が快適で、高級ですら思いましたね。
あと、昭和の名残で三角窓が付いているけど、これエアコンがない時代には重宝してたアイテムだったのですね。
さすがにこの年代になるとエアコンは普及していたのですが、それでもエアコン使用を控えるには便利なアイテムです。(バックドアのガラスが開閉できるハイラックスサーフも以下同文。)
④ パワートレイン
低中速トルク重視に徹したV8・4L・OHVで、Dレンジホールドで十分満足のいく、ゆったりした乗り味で、むしろ高級車のベンチマークのような乗り味です。
これが、やれ直噴だ8段だ電動パワステだエアサスだで、むしろ歪になっているのが、今の高級車ではないかと。
⑤ ハンドリング
実をいうと、V12になってからの2代目に少しだけ乗った経験があるのですが、ステアリングインフォメーション面で言えば、今回乗った方がむしろ情報が掴みやすくて乗りやすかったくらいです。
何気にクラウンにも言えるんだけど、90年代に入ってからのモデルよりも、むしろ80年代以前の方が乗ってて気持ちいい。
おそらく、ボールナット式がいい味を出しているのかも…ですね。
⑥ 判定
:ベンチマーク
乗り味面で言えば、1000万円級高級車を上回っているのですね。
おそらく、スポーツカーのような走りやら、小型車並みの低燃費とか、求められているうちに歪になったのでは…と思えてならないのです。(輸入車も含めて。)
というわけで、このセンチュリー。
少しでも速く走らせようとするとグラングランロールするだろうし、燃費もチェロキー並みで5~6だろうし…。
アウトバーンほどの高速域には通用しないだろうし…。
日本の街乗り走行する限り、それがどうした…ですけどね。
2010年05月31日(月) 執筆