タイトル画像は、発注しておいて届いた「センターレールをクォーターパネルに取り付けるボルト5本」と「センターレールにケーブルガイドを固定するナット3個」である。
さて、中期型のパワースライド用ドアを、ウチの前期型シエンタに物理的に載せられる確証(とは言っても100%では無いが)を得たので、無事に商談を取り付けて購入が決定。
これで電装系がクリア出来ない最悪の場合でも「やたら重い手動式スライドドア」で被害が済む(つーか、そん時は元のドアに戻すんだろうけど)
1つだけ注意しなければならないのは、購入したパワースライド用ドアの内蔵電装系が完動品であるかどうかのチェックは、配線をキチンと準備しておかねば出来ないワケで、購入からダラダラ時間が過ぎてしまうとクレームも付けられなくなるコト。
そんな事情もあるので、何としてでもドアを引き取りに行くまでに下準備を済ませておかねばならないので、一念奮起して頑張ってみた。
とにかく「何があって、何が無くて、何が必要なのか」から始めた。
シエンタのスライドドアは
以前にもバラした事がある常時給電ユニットという機構で車両側ハーネスとドアハーネスを常時接続してある。
ジャバラケーブルがスライドドアの下から伸び、開口部後端のスイングユニット内でカプラー接続されているのである。
カプラーは最大で2つ存在し、呼称は運転席側がJH1/JH2、助手席側はJI1/JI2となっていて、**1と**2は左右で同じカプラーセットであり、当然ながらピン番号の振り方も同じである。
JH1/JI1は、どのグレードでも必ず存在するカプラーで、パワースライド機能以外の配線を受け持っている(具体的にはパワーウィンドウ・ドアロック・イージークローザーコンピュータの電源など)
対してJH2/JI2はパワースライドドアを装備した側にのみ置かれる(はずの)カプラーで、それ以外の機能に関する配線は通らない。
パワースライドドアの配線図は左右各々3ページに分割されているのだが、それを1枚に統合し、JH1/2とJI1/2を通る配線のみカラーに分けて、ひたすら追っかける。
配線図のパターン配置が異なるので違う様に見えるが、シエンタのパワースライドドアは構成部品も配線も、ほぼ完全な左右対称の構成になっている。
よって配線に関してもピン配置以外は全く同じである。
判明したのは、
・パワースライド機能に必要な配線は全部で9本
(上の配線図でカラーになっている部分)
以下、JH2カプラー内のピン番号順に書き出すと、
01:+B(モーター駆動用パワー系BAT電源)
02:SPD(車速信号)
03:ECU-B(クローザーコンピュータ用のBAT電源)
05:CSW(パワードアコントロールスイッチ検出)
06:P+B(Pレンジ信号とフットブレーキ信号をダイオードでOR接続)
07:GAUGE(IGオンを検出するIG電源)
10:WLSW(ドアコントロールリレーからの開閉要求信号)
11:PB(パーキングブレーキスイッチ)
13:MSW(パワースライドOFFスイッチ検出)
・SPD/ECU-B/P+B/GAUGE/PBの5本は助手席側JI2カプラーから分岐でオッケー。
・01ピンの+Bはバッテリーから30Aヒューズ&それなりのスケアの配線を用いて新規に引かねばならない(JH1の2ピンに+Bが来ていてパワースライド化すれば余る事になるが、これは助手席側のJI1カプラーの+Bから分岐されたモノなので、横着して流用すると左右のパワースライドを同時使用した際にヒューズが飛ぶ事になるので注意)
・13ピンのパワースライドOFFスイッチ検出線も、単純に助手席側からの分岐で済ませると問題がある。
パワースライドOFFスイッチは、スライドドアクローザーコンピューターからの信号線をアースに落とすか否かを司るスイッチで、ここでアースに落としていればパワースライド機能はON、スイッチを押下しているとアースからカットされてパワースライド機能はOFFになる。
助手席側ではJI2カプラーで車両側ハーネスと結合した後に、一度フューエルリッド(給油口)オープン検出スイッチを経由してからOFFスイッチに向かっているので、OFFスイッチの状態に関わりなく給油口を開けた際には信号線がアースに落ちなくなって、OFFスイッチを押下したのと同じ状態になりパワースライド機能を停止させる仕組みである。
なので助手席側のJI2カプラー直後から分岐してJH2カプラーに渡してしまうと、運転席側スライドドアクローザーコンピューターまでも給油口開閉に影響されてしまう事になる。
フューエルリッドオープン検出スイッチを経由した後の配線を探すか、正規配線と同じくジャンクションNo.5(上の図のJ24)を探して結線すれば良いのだが、それよりも運転席側パワースライドドアの配線なので、運転席の目の前にあるパワースライドOFFスイッチに直接、配線して接続した方が手っ取り早い。
どうせ+B配線を、JH2カプラーからエンジンルーム内のバッテリーまで引かねばならないのだから、一緒に埋めれば手間は同じである。
・05ピンのコントロールスイッチの配線も、パワースライドOFFスイッチ検出線と同じ運転席前インパネまで引くのだから一緒に作業してしまえばよい。
・
10ピンのドアコントロールリレーからの開閉要求信号線が今回の作業で一番の問題点なのだが、ウチの場合は別制御にする予定だったので配線していない
ワイヤレス操作の問題
まずはシエンタのワイヤレスドアロックについて、なのだが、
トランスポンダキーのボタンを押すと、キー固有のIDとボタン種別情報が電波で送出される。
その電波を、運転席前のインパネ内にある「ドアコントロールレシーバー(以下レシーバー)」が受信し、レシーバーに最大4つまで登録できるIDと照合する。登録されているキーIDであれば、そこで初めてレシーバーから「ドアコントロールリレー(上級車種ではボディコンピュータと称されるユニット)」へ、押されたボタンの種別コードが有線通信で送られる。
ドアコントロールリレーは押されたボタンの種別に対応して、ドアロックやアンロックなどの処理を行うが、パワースライド系ボタンに関しては単純に押された事のみをスライドドアクローザーコンピュータに知らせる。
これが10ピンの開閉要求信号である。
で、何が問題かと言うとウチのシエンタは前期型、つまり運転席側パワースライドドアの設定が無かったモデルなので、運転席側パワースライドボタンのあるトランスポンダキーを用意してレシーバーに登録したとしても、
1:レシーバーがボタン種別信号をドアコントロールリレーに通信してくれるのか
2:そもそも配線されていない開閉要求信号線を接続したとしても、ドアコントロールリレーが要求信号そのものを出してくれるのか
1または2、もしくは両方に引っ掛かる可能性があるワケで、その場合にはドアハンドル操作とコントロールスイッチ操作ではパワースライド開閉が出来るが、リモコン操作は不可能ってコトになる。
まあ、それでもメリットは十分だし、それで良ければ10ピンは放置すれば配線は完了だ。
万が一、上の理由で動作しなかったとしても、レシーバーとドアコントロールリレーを両側パワースライド装着車と同じモノに替えれば、キチンと動くハズ。
ただし、それらを新品で揃えると数万円の出費となるし、ハゲ競売などで中古を探すにしても目的の品番のモノが出るまで待たねばならない。
んで、とりあえず最も上流のレシーバーから調べる事にした。
まずはコイツが運転席側パワースライドボタン押下を受信して、ドアコントロールリレーに通信してくれていなければ話は始まらない。
前期型Xリミテッドで使っているレシーバーは89741-46020である。
そこで中期型以降のレシーバー品番を眺めてみると、
両側パワースライドドア装着車にも同じ品番のレシーバーが使われている。
これでウチの前期型Xリミテッドのレシーバーでも「運転席側パワースライドボタンのあるトランスポンダキーに対応している」のと、「運転席側パワースライドボタンの押下情報をドアコントロールリレーへ通信してくれる」ことが確実になった。
後はドアコントロールリレーが対応してればバンバンザイ。
まずウチのシエンタに使われているのは85980-52150だ。
んで、全年式をザーッと見ていくと、品番下位には52140/52150/52270の3種類しか無い事が判る。
この3種類が使われている年式やグレードを見比べると、ある答えが簡単に見えてくる。
52140:全年式を通してパワースライドドア未装着車用
52150:前期型のみ、助手席側パワースライドドア装着車用
52270:中期型以降、パワースライドドア装着車用(片側のみも含む)
※2012/4以降の無印DICEには52270が使われているが、これはXグレードと違いDICEはメーカーオプションで両側パワースライドドアを装着可能な為と思われる
つまりウチの前期型シエンタに使われている52150は、明らかに「助手席側パワースライドドアのみ専用」の可能性が非常に高いと言うコトだ。
なので、中期型以降で助手席側パワースライドドア装着車(=52270が使われているハズ)の場合には、ドアコントロールリレーのカプラーの24ピンに090型メス端子を挿して、自前で配線を引っ張ってくればリモコン制御が出来る可能性が高い。
もしくは上述の、必要な9配線が最初から配置されていて、JH2カプラーもあるのかも知れない(中期型以降の当該部分を見た事無いので判らない)
いずれにしても、前期型シエンタはそのままで運転席側パワースライドボタンにリモコン対応するのは無理と判断せざるを得ない。
繰り返しになるが、リモコン操作以外のドアハンドル/コントロールスイッチ操作のみで良ければ、この配線は放置で構わないし、そんなに困る事でも無い。
結局、ウチの場合は
コレがあるので、純正ドアコントロールリレーによる制御では無く、助手席側パワースライドと同じ様に自作マイコン回路の空き出力を利用してドアコントロールスイッチの直接制御で対応する事にした。
レシーバーとドアコントロールリレー間に走る通信線のうち、データ送信用のRDAに割り込んで一旦マイコン回路でトラップし、必要に応じてドアコントロールリレーにコマンドを丸投げしたり、マイコン回路側で処理したりしている。
現状でも、助手席側パワースライドボタンを押した場合には、レシーバーから送られたボタン種別データをマイコン回路でトラップしたらそのままドアコントロールリレーには送らず、ロック中ならアンロックボタンのニセ種別データをドアコントロールリレーに送出してアンロックさせ、その後にパワースライドコントロールスイッチを「押したことにして」スライドドアを操作している。
つまりリモコンによるパワースライドドア操作にはドアコントロールリレーを使っていないワケで、同じコトを運転席側パワースライドドアにも行えば良い。
(詳しくは
この辺りで)
幸いにも回路設計時にマイコンの空きピンがあったので、ドアコントロールスイッチ制御やスライドモーター検出も2系統分を載せていたもんだから、今回はそれを使ってお手軽に行うコトにした。
晴れて配線関係にもメドが付いたので、必要になるカプラーやスイッチ関係も発注し、いよいよ事前の配線製作に入ったのである。
※ハゲ競売でゲットしてLED照明化を施したアイシス用のドアコントロールスイッチたち。左のスイッチは使いません