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金子浩久のブログ一覧

2010年12月31日 イイね!

プジョー 504クーペ 後編



 ふたりは、ちょうど504クーペから荷物を降ろし切ったところだった。
「珍しいクルマに乗っているね。僕は、このセダンを東京で乗っていたことがあるんだ」
 僕の504セダン経験には何も興味を示さず、しかし、自分の504クーペが他人から関心を抱かれるだろうことは十分に承知してそうな口振りで、男は返答してきた。
「3000ユーロで買った。大切に乗っていた個人からだ。こんな珍しいクルマは、中古車屋じゃ、売っていない」
 小雨がホコリと混じって、ボディにまだら模様を作っているが、コンディションはとてもいい。
「76年型だ。特に古いクルマが好きなわけじゃないんだけど、これの前はルノー9に乗っていた。お婆ちゃんから、もらった」
 道路の反対側から見た時は、男は50代以上に見えたが、30代であることは間違いない。西洋人は老けて見える。透明なフレームと四角いレンズのメガネが、顔付きを若く見せている。  
 パリで、何をしているのだろうか?
「今、ちょうど、引っ越してきたところなんだ。そこの建物にね」
 引っ越してきた!?
「北の方から引っ越してきたんだ」
 北って、パリの北、それともフランス北部?
「フランスの北の、小さな街」
「日本から来た、自動車ジャーナリストなんだってサ」
 傍らの女性に僕のことを説明しながら、開けたドアとAピラーに両腕を乗せ、ポーズを取ってくれる。
 はじめは取っ付きにくいけど、やり取りしているとサービス精神を発揮してくれる。フランス人に限らず、ヨーロッパでは、こういったシャイな人に遭遇することが少なくない。



「広告や風景の写真を撮っているの」
 黒のジャケットに小さな赤いチェックのアフガン柄のストールがよく似合う女性が、教えてくれた。
 カメラマンなのは彼女なのか、彼なのか。それとも、ふたりともなのか。
 訊ねてみようかと思ったが、微笑むふたりを前にしたら、そんなことはどうでもよくなった。笑顔には、パリでの新しい生活への希望が満ちていたからだ。
 手にしている荷物には、前に住んでいた部屋に張られていたポスターや写真、絵などが丸められたり、額装されているものもあった。彼らがどんな写真を撮るのか、見てみたい。
 ふたりと同年代か年上の504クーペとともに、パリで新しい生活を始めた彼らも新しい年を迎えているはずだ。2011年が、良い年になるといい。

 みなさんも、良いお年を!
 来年も、よろしくお願いいたします。




Posted at 2010/12/31 11:55:52 | コメント(9) | トラックバック(0) | プジョー | クルマ
2010年12月27日 イイね!

プジョー 504クーペ 前編




 ヨーロッパでも、古いクルマを眼にすることが少なくなってきている。
 新しいクルマが増えたのと同時に、ドイツを除けば、みんな自国のクルマに乗らなくなった。立派な自動車メーカーが存在しているフランスやイタリアでさえも、ドイツ車や日本車、韓国車に乗る人が増えてきている。これも、経済的、文化的グローバライゼイションの現れのひとつなのだろう。

 パリのポルト・ド・ベルサイユの前で信号が変わるのを待っていたら、眼の前の道路の右の方から、幅が狭い割にちょっと背の高い、昔のクルマが走ってきた。
 何だろう?
 近付いてくるに従って、角4灯のヘッドライトとフロントグリル中央の金色のエンブレムが見えた。
 僕の前のT字路を向こうの方に曲がっていった。プジョー504クーペだった。多くのボディバリエーションを持っていた504シリーズの中でも、カブリオレとともにエレガントなピニンファリーナルックを持つ2ドア4シータークーペだ。
 昔、東京で504のセダンに乗っていたことがあったので、走り去る504クーペに見蕩れてしまった。
 どんな人が乗っているのだろう?

 信号が青になった。504クーペが入っていった道はずっと先まで伸びていて、何の根拠もないけれど、もしかしたら、どこかに停まっているかもしれない。そう思うと、ノンビリ渡っていられなくなり、走り出した。
 小雨も降ってきた。パリの石畳が濡れると途端に滑りやすくなるのは、なぜなんだ。走り方が悪いのか、靴が悪いのか。パリに来るたびに、何度も滑って転びそうになっている。
 504クーペを、ちゃんと見るのは初めてかもしれない。
 博物館に展示されるほど古くはないし、プレミアム価格が付いてマニア同士で売買されるほど珍しいクルマでもない。
 セダンやステーションワゴン、ピックアップトラックなどの504はフランス以外の工場でも長期間に渡って作り続けられ、世界中で走っていた。しかし、クーペとカブリオレはイタリア・トリノのピニンファリーナ工場で製作されていた、ちょっとだけ希少なモデルだ。
 2車線の一方通行路を、小走りに入っていった。道路の両側には、びっしりとクルマが停められているが、今のところ、見当たらない。でも、見落としてはいないはずだ。
 行っちゃったのかな?
 工事用の衝立てで一車線塞がれているところで、道路がすぼまっている。あの向こう側から先を見て、いなかったら諦めて引き返そう。

 この辺まで来ると、パリの華やかさは姿を消し、生活感が溢れ出てくる。歩道の幅は狭くなり、路上駐車しているクルマも、実質的なモデルばかりだ。
 日本では流行らない、リアウインドにガラスの代わりにボディと同じスチール板が嵌め込まれたバンやワゴンが、何台も行ったり来たりしている。建物の内装や電気工事業者のクルマだ。
 地味で流行とは関係ない商品しか並んでいない靴屋や洋品店のショウウインドの前で足を止めそうになる。
 これで経営が成り立っているんだろうか?
 まったく、大きなお世話だ。こういう店は、日本にもたくさんある。地域に密着して、やっていっているのだ。華やかなパリもいいけれど、普通の人たちが飾らず生活している空間にお邪魔して歩き抜けていく時も、パリを強く感じる。
 居た!
 メタリックが少し入った銅色の504クーペは、工事用衝立ての蔭に停まっていた。
 男女ふたりが、荷物を降ろしているところだ。道を渡って、話し掛けてみた。(続く)



Posted at 2010/12/27 18:36:32 | コメント(10) | トラックバック(0) | プジョー | クルマ
2010年12月21日 イイね!

ポルシェ 911カレラ



 クレイジーマドラスのハンチングキャップと、オーダーメイドらしき凝ったロンドンストライプのシャツが良く似合う持ち主のポルシェ911カレラ。
 リアウインドウのステッカーが『ニ十世紀少年』の「ともだちマーク」みたいだ。
 でも、これは由緒あるモナコ自動車クラブ発行のスパイクタイヤ装着中のシルシ。装着車の最高時速が90キロに制限されていることを周囲のクルマに知らせるためのものだ。
 この911カレラがスパイクタイヤを履くわけではなく、持ち主が2009年の「ラリーモンテカルロヒストリック」にマツダRX-7で出場した時に渡されたものを、思い出代わりに張っている。
 同ラリーは、その名の通りWRC(世界ラリー選手権)モンテカルロラリー出場から30年以上経過したクルマだけで競われるヒストリックイベント。
 1979年にモンテカルロラリーに出場した持ち主が、2009年にそのRX-7をレストアして30年ぶりに再び厳冬のモンテカルロを走った。その時の様子は、彼のブログに詳しい。
 プライベートながら7回もモンテカルロラリーに出場した、モータースポーツとクルマへの愛情とユーモア溢れる文章と画像がたくさん収められているので、お勧めです。
 そして、来年1月の同イベントには、今度は1972年型のダットサン240Zで出場する。
 240Zは自身で戦ったマシンではないが、72年にラウノ・アルトーネンとジャン・トッド組が総合3位に入ったマシンを“完コピ”して仕立て上げられている。
 ぜひ、楽しんできて下さい!
Posted at 2010/12/21 17:40:00 | コメント(5) | トラックバック(0) | ポルシェ | クルマ
2010年12月17日 イイね!

メルセデスベンツ 300SEL 3.5



 トランクリッドの右側にエンジン排気量が記されているメルセデスが特別な存在感を醸し出していた時代が、懐かしい。
 450SEL6.9、280SE3.5クーペ……。
 他にもありますよね?
 みなさん、よろしくお願いします(北畠主税さん方式)。
 昭和通りを、新橋から上野方面へ走っていたら、4台前に古いメルセデスが走っていた。青いボディに白いルーフ。
 右側に、数字のエンブレムがあった。 
 “3.5”なのか、“6.3”なのか?
 左側のモデル名も、よく見えない。
 もっと、よく見てみたい。
 でも、クルマが多くて近付けない。見失わないように付いていくのが精一杯だ。
 いくつかのアンダーパスをくぐったあと、メルセデスは左折した。こっちは、もう曲がれない。次の角で曲がって戻ろうとしたら、一方通行と進入禁止の連続。もう一周してきて、路地を探してみたけれども、見当たらない。
 どこかのガレージに収まってしまったのだろうか。
 こちらも移動中に偶然に遭遇したのだから、別に見失ったって構わない。でも、見てみたい。どんな人が運転していたのだろうか。
 四つ角をいくつか過ごした先に、居た!
 居た!!



 青と白のメルセデスはハザードライトを点滅させ、路肩に停まっていた。クルマを停めて近付いていくと、300SEL3.5だった。ドライバーは、運転席で当時モノらしき古いマニュアルを読んでいた。
「もう、5年ぐらい乗っています。同じように古いメルセデスを、ロスアンジェルスで10年ぐらい乗っていたんですよ。東京に戻ってきて、古いクルマが全然走っていないのにビックリして、探して乗るようにしたんです」
 持ち主のKさんは版画工房を主宰されている高名な方だった。
「東京って、古いクルマが走っていないんですね」
 Kさんは、とても残念そうだった。
 古いものが残っていない(残そうとしない)のはクルマだけではない。建物や景観に始まって、多くのものを簡単に見放してしまっているのが、残念ながら僕らの現状だ。
Posted at 2010/12/17 08:28:28 | コメント(8) | トラックバック(0) | メルセデスベンツ | クルマ
2010年12月13日 イイね!

BMW X6



 買い物客や観光客でゴッタ返すパリのサントノーレ通りで、ひとり黙々とボードにメモを記しながら進んでくる女性がいた。
 通りの両側の建物についてなのか、看板なのか、何かをチェックして書き込んでいる。
 BMW X6のかたわらで眼が合うとニコッと微笑んでくれたけど、仕事の手を休めずに、右を向いて左、左から右へと繰り返しながら、去って行った。
 ベストの鮮やかな色使いとテキパキとした仕事っぷりが、印象に残っています。


Posted at 2010/12/13 17:27:55 | コメント(6) | トラックバック(0) | BMW | クルマ
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