「セダン感覚満点のステーションワゴン」
●イントロダクション
スギレン社長が
新しいレンタカーを
導入したというので早速借りて試乗レポートを書く事とする。
車種は1991年式 トヨタカリーナサーフ SX-リミテッド。
走行距離は9万km目前の4速AT車。
新車価格は166.2万円とのこと。エアコンは別で20万円したとしても
1800ccステーションワゴンのAT車が186.2万円は割安と言えるだろう。
参考までに現行型カローラフィールダー1.8Sはルーフラックつきで
195.8万円。安全装備分くらいの価格差か。
このサーフは山形県のとある商工会が所有していた個体とのことだ。
車体のあちこちに改造跡が見受けられたり
補修跡、あるいは補修されないへこみや傷が散見される。
我々が言うところのシケモクというやつだが、
スギレン社長は愛情をもってサーフと向き合い、
歪んだバンパーR/Fを力づくで曲げなおし、
削れたリアスポイラーをタッチアップし、
Rrワイパーアームを再塗装するなど、
徐々にコンディションを取り戻しつつある。
私は1980年代中期に設計された
あくまでもセダンが本流でバンベースに乗用車ムードを付加した
ステーションワゴンを体感するべくサーフを借り受け、
丸二日、300km程度運転する機会をいただいた。
●概要―T店のワゴンにはサーフが着くらしい―
主役のカリーナ・サーフ。
もはやどんな車なのか想像がつかない人も居ると思うので解説しておくと、
現行のアベンシスの礎となった車、カルディナの礎になった車、
つまり、トヨタの小型セダンであるカリーナのステーションワゴンだ。
1980年代当時、トヨタ店の若者向けステーションワゴンには
「サーフ」というサブネームがついていた。
恐らくサーフィンを趣味とする人が積載性に優れたステーションワゴンを
好むことから名づけられたことは想像に難くない。
カリーナ・サーフ以外にワンボックスのマスターエース・サーフ、
ピックアップトラックにFRP性のキャビンを着けたハイラックス・サーフがあったが、
最終的にハイラックス・サーフだけが後々まで残った。
●カリーナサーフの歴史
カリーナ・サーフは1982年、FR時代の60系にてデビューし、
FF初代の150系のモデルライフをカバーした。
1988年、FF二代目の170系でようやくフルモデルチェンジを果たしFF化されている。
つまり、
RVブームが到来する前のバンベースのステーションワゴン、
にセダンの雰囲気を色濃く残した旧時代のステーションワゴンと言うことになる。
その後の歴史を復習すると、1989年発売のレガシィの大ヒットを横目に
1992年に190系コロナをベースとしたカルディナを発売。
1997年に発売された2代目は欧州戦略車アベンシスをベースに
ステアマチックとターボエンジンで武装した上、バンボディとは決別した。
2002年に国内専用モデル(通称:座薬カルディナ)にフルモデルチェンジしたが、
並行してアベンシスを英国から輸入することで何とか正統派Dセグワゴンの座を守っている。
バンベースでワゴンを作りなれたトヨタだからこそ、
レガシィが持つクラスレスな雰囲気を超えることが難しかったのだと思われる。
また、低速トルクが重要でおっとりした操縦性が良しとされたステーションワゴンに
ターボエンジンを積み、動力性能や操縦性安定性をアピールしたレガシィの
やり方にトヨタや日産が追従することにも時間がかかった。
(カルディナに2000ccの3S-GEを積むTZ-Gが追加されたのは95年、
ターボが着いたのはフルモデルチェンジ後の97年であった。)
●試乗内容
1990年ごろから潮目が大きく変わったワゴン市場だが、
今回の170系カリーナサーフに乗れば
ステーションワゴンがブレイクする前夜の
「ステーションワゴンが当たり前ではなかった時代」
を垣間見ることが出来ると考えられる。
今回は平日の通勤と、
休日の職場の上司・先輩とそのご家族と行く
レクレーションにサーフを使用した。
●エクステリア
サーフはカリーナベースのワゴンボディである。
そもそもカリーナ自体がコロナと同機種化されており、
カリーナのベースがコロナとなっている。
ただし、カリーナはコロナよりも若い世代を
ターゲットに置いているため、アクティブな印象だ。
サーフは外観はバンと同じデザインだが乗用ユースを考えて
セダンに準じた装備が奢られている。
Frは
セダン上級グレードと共通である。
ヘッドライトには樹脂レンズ製の幅広異形レンズを採用、
ラジエーターグリルにもヘッドライトと共通イメージの
アクリル製ガーニッシュを装着して車幅の広さを強調している。
バンパーにはターンシグナルと一体化されたフォグを設定。
また、フェンダーマスコットは車両感覚を助け、
カローラ系との格の違いを見せ付ける。
サイドは
センターピラーより後方が独自の意匠である。
その意匠のベースそのものはライトバン仕様と同じだが、
サーフはグリーンハウスがブラックアウト化され、
更に車両前後を貫くサイドプロテクションモールや
SURFのサイドデカール、ロッカーモールによって差別化が図られている。
特に今回試乗したSX-Limitedは
ルーフラックや
セダンのスポーティグレードと共通デザインの
フルホイールカバー、
LED式ハイマウントストップランプをインテグレートした大型Rrスポイラーにより、
商用イメージをほぼ完全に払拭することに成功している。
薄いルーフが一直線に後方に伸びる様子はなかなかスポーティだ。
Rrは兄弟者であるコロナ/カリーナバンとの共通のデザインのため、
差別化に苦労している部分だ。
特に、バックドアはFR時代のサーフ/バンと共通の意匠となっており、
部品自体をほぼそのまま流用している。
(先代サーフにはガーニッシュの設定があるが、2代目サーフでは
ガーニッシュを廃止し、2トーン塗装を施してワイド感を出している)
Rrコンビネーションランプの意匠自体は異なるが、
ライセンスガーニッシュ(バックドアオープナーも兼ねる)も流用され、
かなり金型費を節約できたに違いない。
こういう部分が「メインストリームじゃないからお金がかかっていない」と
言われかねない部分だが、サーフの場合専用大型Rrスポイラーを装備して
1970年代のバックドアを1980年代末期のデザインに化粧直ししている。
バックドアガラス周辺の意匠面をすべてRrスポイラーで覆うことで
角ばったデザインのバックドアアウター(板金)の意匠面を覆い隠して
丸みを帯びた新しいデザインに見せることに成功している。
●インテリア
インテリアも運転席周りは完全にカリーナセダンと共通である。
コロナの全面ソフトパッドのインパネでは無く、硬質樹脂と
ソフトパットを使い分けることでセグメントを明確にしている。
メーターは専用デザインを採用。大きなスピードメーターとタコメーターは見易い。
現代のようにマルチインフォメーションディスプレイの配置を考えなくて良い分、
すっきりとした構成にすることに成功している。
運転席に座った感じだとステーションワゴンを意識させることは無く、
完全に「セダン感覚」の印象である。
ちなみに助手席側に見えるCDプレーヤーはソニー製で
助手席シートレールに共締めするタイプの取り付けBRKTは
当時のカーオーディオ用のアクセサリーだ。
(当時の雰囲気を再現するため敢えて
2DINオーディオにしなかったというコダワリに脱帽。)
シート地はざっくりした感触で立体感のある生地を採用している。
写真ではグレーに見えるが、
良く見ると青や赤のカラフルな
色使いのグラデーションが施してあり若々しさや遊び心を感じさせる。
リアシート以降は専用設計である。
リアシートはリクライングはしないものの、
引き起こし式のダブルフォールディング機構が着いている。
この頃、法規でリア左右席の3点式シートベルトの装備が義務付けられたため、
3点式シートベルト(リトラクタはRrデッキサイドに配置)となっている。
また、ヘッドレストはセダンの固定式ピロータイプから
上下位置調整式の別体型に変更されている。
後席に座った印象は
足元スペースは十分で
セダンよりも
ヘッドクリアランスに余裕がある。
170系コロナ/カリーナセダンのRrシートバックは
カタログ値の室内長を稼ぐため、背中の丸みに反して後方に反っている
一方、サーフではしっかり背中を包み込む形状をしており、
人間を疲れさせずに運ぶという部分でセダン以上のポテンシャルを秘めている。
ラゲッジもフルトリム化され、
絨毯の裏側には吸音材がしっかりと貼り付けられている。
また、荷台の目隠しのためのロール巻き取り式のトノカバーも設定があり、
防犯目的以外にも「荷物とパッセンジャーが一緒に運ばれる感」の軽減に寄与している。
(残念ながらこの個体のトノカバーは欠品しており、
スギレン社長お手製のトノカバーが取り付けられていた。)
積載性の実力としては、ローディングハイトが非常に低く、積み下ろしが非常に容易。
幅に関してはバンが半楕円リーフ式であるのに対して
サーフはセダンと共通のストラット式独立懸架を採用しており、
サスタワーが張り出している。
この点はマイナスポイントになるがが、
絶対的な積載性はセダンとは勝負にならず圧勝だ。
ただ、現代のステーションワゴンと比較すると、
サブトランクが装備されない、コンビニフックが無い、
ラゲージネットを引っ掛ける場所が無いなど、
今なら当たり前のワゴン装備がついていないという部分は
それほどステーションワゴンが一般化しておらず、
設計者の思いがまだ至っていないという段階だったのだろう。
どう積むかではなく「積める」ことが最大の価値だったのだろう。
サーフに限らず、当時のセダンベースのステーションワゴンは
皆「セダン感覚」をアピールしていた。
この後、クロカンが流行したときも、ミニバンが流行したときも
「セダン感覚」というキーワードは良く目にした。
セダンとは違う価値を訴求するワゴンやクロカン、ミニバンであっても
あまりにセダンと違い過ぎるとユーザーは着いてきてくれないという配慮から
メインストリームではない車型では「セダン感覚」というフレーズは好まれた。
もっともセダンのパッケージングをベースに開発されたワゴンボディなら
「セダン感覚」から外れることはそうそう無いのだが。
●市街地試乗
エンジンに火を入れ、市街地を走行。
自宅近辺の生活道路は道幅が狭く、直角カーブも複数存在する。
こういう道路ではサーフの見切りのよさ、車幅の狭さが非常に役に立つ。
フェンダーマーカーが完全に見えて先端のイメージがつかみやすく、
車幅の狭さ(1690mm)はすれ違い時に真価を発揮する。
ボディサイズの小ささと言うのは本当に大切だ。
特にクオーターガラスも大きいので視認性は非常に高い。
ただし、
小回りは意外と利かず、Uターン時には注意が必要。
さて、停止から60km/hまでの速度域での走行は
非常にイージーだ。
少しアクセルを踏み込めばググッと車体を力強く引っ張ってくれる。
基本的に
2000rpm以上回す必要は無く、シフトショックもよく躾けられている。
現代のように燃費のためなら死んでも良い、という勢いのATではなく、
当事流の低燃費スケジュールに従って変速する。
すなわち、60km/h以下の領域ではトルコンの食いつきで加速。
アクセルオフでアイドリングまで回転を落として惰性走行。
速度はほとんど落ちないから、あたかも電車のようなフィーリングだが、
積極的に燃料カットすることはせず、可能な限りアイドリングの
少ない燃料消費量で
カーリングのように滑走する走らせ方が基本だ。
だから、発進後に希望の車速まで上げてやり、
後はスロットルを緩めて滑走すればよいのだ。
繊細なスロットル操作はここでは必要ない。
このフィーリングはMT車とは全く異なっており、独特のものだ。
個人的にはあまり好きではないが慣れれば
ショックレスかつイージーな走りが可能だ。
3速と4速の変速なんてほとんど分からないレベル。
「ざ総括」の両角氏に言わせれば、
「ズルズルにルーズなトルコンでダラダラと加速して、
アクセルを離すとアイドリングまで回転が急降下する。
全くケシカラン!
タイトなトルコンを持つVWを見習え」と一蹴されるのだろう。
確かに欧州のATと比べるとルーズだ。
車との対話、という意味では私も理解できるが、
一方でこの方が楽だという意見も私には理解できる。
1986年にトヨタがはじめて世に問うたハイメカツインカムエンジンは
3バルブOHC全盛であった1980年代、他社に先駆けて
4弁DOHCのフルラインナップ攻勢に出て人気を博した。
比較的的荷物や人を積む機会が多かったであろうサーフも
ハイメカツインカムが搭載されているが、
中低速トルクが十分で
2000ccの必要性を感じないほどの余裕度がある。
ところで、この時代のトヨタ車のアクセルには
隠れた機構
「おじいちゃんノッチ」があるようだ。
実はアクセルペダルをオフ点から
軽く一寸だけ踏み込んだ位置に
明確なノッチが設けられているのだ。
このノッチから踏力増やして更に踏み込むと通常のアクセルと変わらない。
このノッチはストロークで言えば
ほんの1cmに満たない程度の開度なのだが、
市街地走行ではこのノッチに引っ掛けておくだけで
かなりジェントルな走りになる。
スロットル開度がそんなに開いていないから穏やかに発進する。
その後、1600rpm程度でどんどんシフトアップし、
60km/h手前の速度域まで緩加速し、静々と走る。
市街地走行レベルなら、おじいちゃんノッチに
足を乗せて置けば事足りてしまう。
希望の速度までこのノッチのまま加速して
後はアクセルオフすればその速度で惰性走行することになる。
このノッチに足を乗せている状態で運転すると
何だか枯葉マークのおじいちゃんが
運転しているような運転スタイルになる。
だから
おじいちゃんノッチと名付けてみた。
私は後ろに車が居ないときなどは努めておじいちゃんノッチを使用していた。
運転のリズムが穏やかでとても
おおらかな気持ちで運転できるからである。
元気に加速したいときはそこからちょっと踏み込んで2500rpm程度まで
回してやれば十分に事足りる。
このおじいちゃんノッチは1994年の40系カムリの1800cc車にも着いていた。
このカムリはかつて私の祖母が乗っていたが、借りて運転すると全く同じ
ノッチがあり、埼玉の田舎道をのんびり走るには最適だった。
今回のサーフにもついていたということで、敢えて意図しているのではだろうか。
アクセルペダルを設計した人に真意を聞いてみたい気がするが、
トヨタのアクセルペダルの事で・・・なんて問い合わせたら、全力で
「わかりません」とか「そのようなことはございません」とか否定されそう(笑)
参考までに、駐車時におじいちゃんノッチに
足を載せた状態でのエンジン回転数は2600rpmであった。
●高速試乗
市街地から、郊外の幹線道路に入った。
この道路はだいたい60km/h+αで流れており、
サーフもこの流れに乗ることは容易だ。
この速度域になると
ロックアップが作動する。
ロックアップされると大体1500rpm付近で
エンジンがグッとトルクを出しながら車体を引っ張る。
ロックアップオフ状態で3速→4速の回転落ちの度合いと、
4速ロックアップオフ状態からオン状態の回転落ちの度合いを
見比べると、後者の方が大きくトルコンのルーズさと言うか、
ギアレシオのワイドさが強調して感じられた。
ロックアップがあるおかげで
実質的には擬似5速ATのような乗り味と言える。
ちょっとアクセルを踏み増した程度だと、
ロックアップは外れないので
アクセル踏み増し分はそのままトルクが増える。
エンジンが十分に中低速型なのでこのような設定が可能なのだろう。
高速道路のICから本線に合流する。
加速車線への合流ではレッドゾーン付近まで試してみた。
サーフの4S-FE型はハイメカツインカムエンジンのため、
高回転域では特別な高揚感は無い。
VVT-iがあるわけでもないので中低速型の設定にしてあるので
あまり4000rpm以上回しても4A-GEの様な旨みは無い。
本線を100km/hで走行するとエンジン回転数は2200rpm近傍を示す。
この状態ではロックアップは常時オンで
MT車と変わらない感覚で走行できる。
アクセルを踏みましてもそのまま加速し、
アクセルオフでもロックアップは外れないからエンジンブレーキが利く。
市街地でのトルコンのルーズ差と比べると、全く正反対の性格で
これも設計者が明確に意図して設定された性格なのだろう。
高速走行ではステアリングが軽めの設定だが、安定感が無いわけではなく
これで十分と自信を持っていえるレベルだ。
この速度域では少々のエンジンの音がするのと、
Aピラーのバイザーから風切り音が進入してくるが、
ステーションワゴンという車型に起因するような音は特に感じられなかった。
一度、PAに立ち寄って再び合流路へ。
今度はやさしく合流することを試みたが、
65km/h付近でロックアップが作動して
加速度はヘナヘナーっと減ってしまった。
そこからはアクセルを踏み増して100km/hに到達した。
サーフのATはコンベンショナルな油圧式ATなので電子制御は介入しない。
このため、明らかな加速中でもアクセル開度と車速からロックアップを作動させてしまう。
そこまでの勇猛な加速と比べると一気に勢いが無くなるので違和感が無いといえば嘘になる。
本来ならば80km/hくらいまではロックアップオフで加速したいが、
そのためにはもう少し強めにアクセルを踏み込まないとダメでうまくリズムが合わなかった。
高速本線上では余程の事が無い限りロックアップオンで事足りる。
メーカーに言わせればキックダウンが必要ないほど
4S-FEは中低速のトルクがあるということなのだろう。
更にアクセルを踏み続けていけば、
追い越し車線の流れをリードすることは容易だ。
エンジンの回転もそんなに上がらないので気がつくと、おっとっと…という速度域に到達する。
やはり高速道路と市街地走行では明確にATの設定は変えられている事が分かった。
まるでジキルとハイドのようだ。
●山岳ワインディング路
高速を降りて、山道へサーフを走らせた。
サーフなのに海じゃないのかよ、丘サーファーか!という突っ込みはご容赦願いたい。
高速を降りてすぐの国道は信号が多く、50km/h制限の生活道路。
こうしたシチュエーションでは「おじいちゃんノッチ」をフル活用。
町の中心部を抜けると、川沿いを延々と走る。
制限速度規制の解除看板が表れて段々と車の流れが速くなる。
前にも後ろにも地元民風の車がいて、結構な勢いで走る。
サーフも流れに乗っていたらロックアップが作動した。
アクセルオフをしてもロックアップを維持するので、
再びMT車フィーリングで走行することができる。
段々とコーナーが増えてくるが、
サーフは車高の低さからか
姿勢自体は安定している。
現代の車高が高い車と違い、元々の資質として
コーナリングのロールは抑えられているのだ。
ただし、あいにくサーフのサスペンションは
全てが抜けている状態で、
エア(だけ)サス状態。
コーナリング中に橋の継ぎ目などを通過すると、
接地感が希薄になるシーンも見受けられた。
直線路でロックアップオン、コーナー直前でアクセルオフして減速、
立ち上がりでアクセルオン、再びロックアップ、という運転を繰り返していると、
徐々に上りがきつくなった。
「遅い車は登坂斜線へ」という看板が目に入るが、
サーフはロックアップ維持のまま坂を上りはじめた
4Sエンジンが頑張っていたが、途中でロックアップが外れた。
そこでトルクが増幅されて再びロックアップ車速に到達すると、
機械的にロックアップオン―再び失速してしまった。
登坂走行でロックアップのオンオフを繰り返すのは
機械式ATの典型的な欠点として既に語りつくされているが、
登坂車線が設定されるような上りではどうしても負けてしまう。
それ以外では持ち前のトルクで切り抜けてしまうのだが。
そこでO/Dをオフにして走らせると、
不要な変速を禁止して坂を上り切ってくれるが、
車側で上り坂を判定する登坂制御は
サーフの登場から10年は待たねばならない。
当時の技術で解決案を探すと、変速点を高回転寄りにする
ECT-Sのスポーツモードが着けば問題が無かっただろう。
市街地ではズルズルトルコンで快適、
高速でも強固なロックアップで快適、というサーフだったが
やはり、その遷移領域をうまくぼかすところまでは
サーフは対処できていない事が分かったが、
個人的にはむしろ2013年に1980年代ATの
語りつくされた悪癖を体感できた経験こそがプライスレス。
●目的地到着
長野県のとある別荘地に到着した。
夕方5時を過ぎてあたりは真っ暗である。
国道から脇に逸れて目的のロッジを探す。
真っ暗な森林地帯に似たようなロッジ。
少々不安になるが、交差点を曲がるときのコーナリングランプが
とても有効な装備であることが分かった。
さて、いかにも
1980年代リゾート的なロッジに到着。
到着しているはずの先輩方は居らず私が第一着。
山道を楽しみすぎたのか早く到着した。
フロントで夕食のBBQ用の食材を受け取ってラゲッジに載せた。
さすが荷物を載せるというシチュエーションではサーフに死角なし。
バンパー上から開く低いローディングハイトは積みおろししやすかった。
フロントからBBQ場へサーフを走らせたが、
室内は野菜の匂いが充満した。
よくステーションワゴンを敬遠する人がセダンを選ぶときの理由として
「ワゴンだと荷物の匂いとか音がキャビンに入ってくるから嫌」という事を挙げる。
今回、野菜を積んでみてその人が敬遠する理由も理解することが出来た。
気にしない人は気にしないだろうし、気になる人はすごく気になるのだろうと思う。
到着後は、旅の相棒サーフのことは忘れて
BBQを楽しみ、ロッジでは夜遅くまでお酒を飲みながら先輩方と語りつくした。
●帰路+おまけ
翌日、温泉に入り、りんご狩りを楽しみ、
10時にはチェックアウトを済ませ、来た道をサーフで帰る。
窓を開けると都会の汚い空気とは一線を画すおいしい空気が肺を満たす。
良いペースでコーナーを抜けてこちらに帰ってくる途中、
行きつけのカローラ店の
サービス担当者から電話がかかった。
車を路肩に寄せ電話に出ると、
「ノイマイヤーさんご注文の部品が入荷しました!」とのこと。
せっかくステーションワゴンに乗っているのだからと、
持ち主に断りを入れた上で直接カローラ店へ。
荷物を載せた後は、おじいちゃんノッチを活用していつもの駐車場へ戻った。
(この部品自体は後日活躍します。)
燃費は正確ではないが10km/L程度。
カタログ値は11.6km/L程度ということで、まぁまぁ実力値か。
今のように燃費に命を駆けた時代ではないので数値自体はそんなに良くないが、
オーナーの話によると、埼玉まで新東名でトルクに乗せて走らせれば
リッター15km/Lを超えるという。
●まとめ
1991年式のカリーナサーフでロッジに遊びに行くという
絵に描いたようなワゴンライフを堪能できた二日間だった。
当時の若者向けセダンをベースにステーションワゴン化したサーフ。
この車に乗れば当時ステーションワゴンがブレイクする前の姿を体験できた。
ワゴンならではのユーティリティという面では低く広い荷室に最も価値がある。
そして乗り味そのものは、
セダンと共通のメカニズムを流用することで
セダンとの違いが見当たらないほどセダンライクな性能を実現している。
私は同じ170系後期のカリーナセダンにも乗ったことがあるが、
乗った感触は誤解を恐れずに言えば全然変わらない。
ワゴンボディの重さがあるかと言えば、トルクのあるエンジンのおかげでそれも感じない。
「ほら、セダンと変わらないでしょう」と精一杯アピールしていて、
Rrサスペンションまで変えているので
ハードウェア的には「ワゴンだから××」という部分がほとんど無くなっている。
というより、バンとは大きく異なる車に仕立てられているのだ。
カリーナサーフはその後カルディナにフルモデルチェンジされていることからも、
決して失敗作だったということではないが、決してメインストリームにはなれなかった。
それだけ、この時代はセダンに対する信頼が揺るぎなかったということなのだろう。
セダンを横目に見ながら作るからこそ、ブレークスルーが無かったのかもしれない。
久しぶりに1980年代後半の1800cc車に乗る機会を得たが、
この時代の1800ccは
1970年代設計の1800cc車と比べると
圧倒的に速いし、現代的な乗り味にアップデートされている。
現代の1800cc~2000ccの車と比べても走りに軽快感がある他、
燃費最優先のCVTでは無いので力強さでも劣っていないのが意外かもしれない。
動力に余裕のあるエンジンを低回転で回し、軽快にスイスイ走るキャラクターは
現代の安全対策で重くなった乗用車が犠牲にしてしまったものだともいえる。
現代のDセグワゴンの子孫であるアベンシスワゴンには
先輩が新車で購入していて1時間ほど試乗したことがある。
2010年代の自動車の横並びで見れば悪くないが、
カリーナ・サーフと比べてしまうとどうしても鈍い印象を持ってしまう。
ボディサイズが大きくなってしまったのにエンジン排気量も上がらないし、
燃費を気にしてエンジンの実力も出せない状況では仕方ない。
カリーナ・サーフに乗っていると
クルマなんてこれで良いじゃん、と思ってしまう。
楽だし、速いし、十分広いし。
安全性の低さなんてぶつからなければ良いじゃん。
燃費の悪さなんて、
みんなどうせ運転の仕方が乱暴なんだから変わらないじゃん、
というダークサイドに陥りそうになる。
しかし現代車だって遊んでいるわけではない。
今ある法規や規制値を満足しつつ、今ある技術力で商品を組み立てると
こうなるほか仕方が無いのだという現代の状況があるのも事実だ。
20年以上前のカリーナが現代車顔負けの走りをしてくれるということは
まだ、良いクルマをつくる余地が十分に残っているのだという証拠にもなっているのだ。
話が発散しつつあるが、私自身はカリーナサーフは大いに気に入った。
後席とラゲッジの広さは友人と連れ立って出かける際はより役立つだろう。
また、トルクで走らせる4S-FE型エンジンのキャラクターも魅力度が高い。
サーフは今後ともオーナーの元でこまめに改修を重ねて大切にされるだろう。
さて、先回の記事を読んでいただいた方からは
「レガシィの記事だと思った」というクレームが来そうな予感がするが、
知人がサーフを購入したことを機会として、
レガシィ以前のステーションワゴンを体験し、
ポピュラーじゃなかったステーションワゴンがポピュラーになろうと
必死にセダン感覚を追求した姿を探るのも面白いと考えてこのような内容になった。
結果は普通に余暇を楽しんできました~という中身の無い日記ですみません。