
七帝に向けて同期2人(110氏&もちを氏)が後輩に喝を入れていたので、自分もちょっと先輩風を吹かせてみようと思います。
とは言え、自分は恥ずかしながらジムカーナはあーだこーだ...とか団体戦ではどーのこーの...とか言える立場ではないので、自分なりに、後輩たちにアドバイス出来ることでも語ってみようと思います。
題して「コドラのお仕事」
まずはコドライバーとは、
ラリーで助手席に乗ってドライバーにあーだこーだ指示を出す人のことです。
ちなみに英語でCoには「一緒に」とか「協力して」とかいう意味があります。(例/Coworker=一緒に協力して仕事をする人=同僚) つまり、コドライバーとは「ドライバーと一緒に協力してラリーを進める人」のことです。
そんなコドラのお仕事は、
基本的には道案内・ペースノートを読む・正しい時間にTCに車両を入れる(時間管理)の3点です。場合によっては「猿でも犬でも出来る!」なんて言われることもあります。しかし、極めて行くと上記3つの仕事だけでもかなり奥が深いし、それ以外にもたくさんの仕事があります。
まずは道案内。
トリップメーターと睨めっこしながらコマ図の通りに車両を運ぶ仕事です。
基本的には単純な仕事ですが、車両のファイナルギアが変わっていたり、タイヤ外径が純正と大きく違っていたりするとちょっと大変です。
スタートから2〜3のコマ図までに車両の特性を掴む(距離が多めに出る/少なめに出る、とか、出来るならざっくりとしたK値を出す)ことが重要です。そうすることで不用意なミスコースを防ぐことが出来ます。
続いてペースノートのリーディングについて。
ロストしないことがもちろん大切ですが、ロストしないためにどうするか、とか、ロスとした時にどうするか、という対策が必要です。
まず、ロストしないための技術について。ぶっちゃけ、コドラがロストする原因はドラとコドラの感覚の不一致です。そこで自分は、レッキ中に自分の感覚よりもすぐに次が来る場面には下線を、自分の感覚よりも時間が経ってから次がやって来る場面には⚪︎印を付けています。こんな感じで

あるいは、ドライバーが読む直線が自分の感覚よりも長い場合(例/ドライバーは30と呼んだけれど、自分には50のストレートに見える)にはそのストレートの距離(30)を⚪︎で囲んだりもします。
また、⚪︎印は「ココは一息つく所だよ」という目印でもあります。
次に、ロストした時に素早く復帰する技術について。
まずはレッキの時に、目立つコマ図や橋、ダンロップテープ、特徴的な看板などをノートに記録しておきます。目安としては1〜2kmに1つくらいが理想ですが、目立つ場所、記憶に残りやすそうな場所だけ記録しておけば良いです。それをロストから復帰する時の目印にします。タイトコーナーやロングコーナー、長いストレートなどがロスト復帰の手がかりになることも多いので、それも意識しておくと良いかも?
ロスト防止の為にカーブミラーをノートに取る人もいますが、カーブミラーはあまりにも多すぎて、ミラーが有るのに取っていなかったり、ミラーが無いのにノートに記録していたりという事が多かったので、現在はあまり利用していません(不確実な情報ほど自信を喪失させてしまう、逆効果なものである)。
それと、コドラがロストする時、それはノートの先読みをし過ぎていることが大概です。そこで、万が一ロストした時にはドライバーが追い付いてくるまで落ち着いてその場で待ってあげることも大切です。
それから、ノートリーディングに関して重要な事をもう一つ。
ラリーを安全に、確実に走り切る為に、「安全な方向に読み間違える事はあっても、危険な方向には絶対に読み間違えるな」ということです。
例えば、きついコーナーを小さい数字、緩いコーナーを大きい数字で表すクルーがあったとして、右4を右2と読み違えるのは(ノートを信頼してもらうために極力あってはならないけれど)仕方ありません。しかし、右2を右4と読み違えては絶対にいけません。
あるいは、右3ショートを(舌を回し切れずに)あえて右3と読むのは仕方ありません。しかし、右3ロングをうっかり右3ショートと読み違えては絶対にいけません。
危険な方向への読み違えは、即リタイアを招きます。ラリーは完走してナンボの競技なので、リタイアに導くような読み違えは絶対にあってはなりません。
続いて、時間管理について。
ただ時間通りにTCに着けば良いや、と言ってしまえばその通りなのですが、
その為に、アイテナリーが出た時点で「ココは距離がある割に時間が厳しいから、SS⚪︎〜TC⚪︎へは急がせた方が良さそう」とか考えられるセンスは重要だと思います。
また、「この区間は時間の余裕があるからメットを外しても良さそう」「この区間はタイスケが厳しいからメットは被ったままで移動しよう」という見極めは非常に大切です。後述のドライバーへのねぎらいとも被りますが「ここからは余裕が有るので、この辺でヘルメット外して楽になりましょう。」なんて言葉をドライバーに出せればGoodです。
さらに、全日本のような長いラリーなら、タイスケが出た時点で「この区間は時間の余裕が大きいから、ここのリエゾン中にタイヤ交換して次のSSはニュータイヤで走れたら良いかも?」なんて考えを馳せることも大切です。
続いては応用編(?)
上記基礎編以外のコドラのお仕事としては、
ライバルのタイムの集計、SS中のノートの修正、ドライバーのマインドコントロール、ドライバーをねぎらうこと、ドライバーの走りの分析、天気予報、などです。
まずは、ライバルのタイム集計について。
エントリーリストが出た時点で、前もってこんな表

を作っておき、合間合間でライバル達のタイムを聞いて自分たちとの差を明確にしておくことが大切です。近年ではオフィシャルがラリー中に速報を出すところも増えてきましたが、そのような情報提供が無い場合、敵を知っておくことは非常に重要です。"覚えておけ!ラリーは情報戦だ!!"
次に、ラリー中のノートの修正について。
これは賛否両論あると思いますが、自分は、同じSSをリピートする場合は極力危なかった場所やもっと行けた場所をSS走行中にノートに記録して、次のSSに活かせるようにしています。
(例/右4ロング→右4ロング出口滑る、右3→右3ショート、など)
本当はドラとコドラの合意の上でノートを変更すべきなのですが、ドラはSS中はそれどころでは無い事が多いので。。。
ただし、ドライバーが一番しっくり来るノートをコドラが勝手に改変してはいけない、という意見もあるので、コドラの勝手なノート修正に関しては賛否両論あると思います。
続いて、ドライバーのマインドコントロールについて。
先ほどのライバルのタイム集計ともやや重なりますが、ライバルとの差をどんな風にドライバーに伝えるべきか、というのは、ドライバーによって様々です。「誰に⚪︎秒勝った/⚪︎秒負けた」と具体的に伝えるのがいいドライバーも居るし、負けた事は大々的に伝えて勝った時はそんなに褒めずに競争心を煽るのがいいドライバーも居るし、逆に勝った時だけ大袈裟に伝えて、負けた時にはさほど大ごとにせずに気持ち良くドライバーを走らせてやる(コドラは太鼓持ちになり切る)のが良いドライバーも居ます。ライバル達との状況をどんな風にドライバーに伝えるか、ドライバーの性格や能力に合わせて見極めるのも、コドラの大切な役目です。
それから、
ナイトラリーや大きな遠征を伴う大会(全日本や七帝戦など)では、ドライバーをねぎらうことも大切なコドラの仕事になってきます。具体的には「疲れた時は遠慮なく言ってね。運転代わるから。」とドライバーに伝えるだけで、ドラとコドラの信頼関係は大きく変わってきます。
ただし、長い遠征ではコドラ自身も疲れることも多いです。そこで自分は「移動中寝てるかもしれないけど、それは君が疲れた時にすぐに代われるように生気を養ってる訳だから、疲れた時は遠慮なく起こしてね!運転代わるから。」と言って、自分の休憩をとることにしています。
次に、ドライバーの走りの分析に関して。
人間、熱くなると分からなくなってしまう事は沢山あります。例えば、タイムを出そうとするあまりにブレーキングを突っ込みすぎて、立ち上がりが伸びずに却ってタイムが落ちてしまうように。そんな時、コドラは客観的な立場になってドラに適切な指示を出すべきです。また、ドライバーがビビってタイムが出せていない時には「もっと思い切っちゃって良いんじゃない?」という風に、ドライバーに発破をかけることもコドラの大切な役目です。ただしこの時は、ドライバーの最大限の能力をきっちりと見極める事が大切です。ドラの能力を超えた指示を出すと、それはリタイアに繋がるので。
また、人によってはGPSロガーのデータをコドラが管理して、ドライバーやマシンの特性をコドラが把握することもあるようです。
僕が見聞きした事例として、とあるインテグラからデミオに乗り換えたクルーのコドラが「ドライバーさん、面白いデータが取れました!GPSロガーの低速域の車速データを見ると、インテよりデミオの方が速いです!」と言っているのを聞いたことがあります。軽い車の方がタイトなコーナーでは速い、というのは一般的に言われています(インテ:約1000kg,デミオ:約850kg)が、それをデータとして示したのは見たことが無かったので個人的に衝撃でした。また、それまでの自分はGPS等の分析はドライバー任せにしていたのですが、同じ仕事をコドラがやることも出来るんだ、と思えたことも、新鮮でした。
最後に天気予報について。
ラリーでは、サービスパークでは晴れてたのに山は雨、とか、今は晴れてるけどスタート時刻には雨が降る、とか、スタートは晴れてたけどゴールは雨、なんて事は茶飯事です。そこで自分は、スタート前に雨雲レーダーを見てその先のコース周辺の天気予報をしています。
現在、気象庁やYahoo!、ウェザーニュースなどがタイムリーな雨雲レーダーの様子を公開しています。そして、30分前、20分前、10分前の雨雲レーダーの記録と現在の降雨の様子を見れば何となくその先の傾向が掴めて、10分程度後の雨の予想をすることが出来ます。
僕はウェザーニュース提供の雨雲レーダーを使って、SSスタート〜SS中の気象予報をしています(なぜウェザーニュースかと言うと、iPhone用アプリの出来がすこぶる良いので。ただし、どのサービスを利用するかは人それぞれ、自分が使い易いと思うものでいいと思います)。
ほんのスタート10分前にこれからの天気が分かって何の役に立つか!?(タイヤ交換や空気圧の調整などは、5分や10分ではどうしようもない事が多い)という意見もありそうですが、心理状況が結果を大きく左右するのがラリー。この先の心構えが出来ているかどうかで、ラリーの結果は大きく変わってくるのではないかな、と思います。
このように、簡単なようで奥が深いのがコドラのお仕事。
これから七帝戦を迎える後輩たちには、この記事を参考にして頑張って貰えれば幸いです。
また、上記に有ることやそれ以外のことについて質問や意見があったら、部内者部外者拘らず気軽にコメント下さい。それがお互いに成長出来ることだと思うので。よろしくお願いしますmQm