2011年01月31日
杉太郎と松太郎の、
おはなしです。
あるムラにふたりは、
同じお母さんから、
同じ日に生まれました。
はじめに生まれたのが杉太郎で、
あとから生まれたのが松太郎でした。
杉太郎はつるっと生まれたのですが、
松太郎は暴れたので、
お母さんは死んでしまいました。
ふたりは、
同じ顔をして同じ声だったので、
ムラの人々は気味悪がりました。
やがて、
杉太郎はイド掘りの職人になりました。
腕もよく、
ムラびとはたくさんイドを掘ってもらいました。
松太郎は仕事もしないで、
盗みに入ったり博打をしたりしていました。
ムラの人は、こう言います。
『杉ちゃんはいい子なのに、
松ちゃんは違うね、
杉ちゃんだけだったらよかったのに。』
そして、
ある日、
杉太郎がお嫁さんをもらうことになりました。
ムラの人々はこれを祝って、
盛大に宴会をひらきました。
杉太郎は松太郎をこれに招待しました。
だって、兄弟ですから。
松太郎は、
それが気に入りませんでした。
宴会の場所につくと、
松太郎はお嫁さんを斬って殺してしまいました。
杉太郎はなにも言いませんでした。
それが、
松太郎はもっと気に入りませんでした。
松太郎は、
『ばかやろう!』
と言って、
どこかに行ってしまいました。
杉太郎はお嫁さんの傷に、
イドの水をかけてあげました。
すると、
お嫁さんは息を吹き返し、
何にもなかったように元気になりました。
松太郎のいなくなったムラは、
平和な日々が続いていました。
それから何年も経ったある日、
杉太郎は突然、
ううううう・・・・・
と、苦しみだして、
床に臥してしまいました。
奥さんの看病の甲斐もなく、
杉太郎は死んでしまいました。
奥さんは悲しんで泣きながら、
イドの水を杉太郎の口にふくませました。
しかし、
杉太郎は生き返りませんでした。
杉太郎の顔は、
まるで松太郎の顔でした。
だって、兄弟ですから。
Posted at 2011/01/31 09:39:18 | |
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