• 車種別
  • パーツ
  • 整備手帳
  • ブログ
  • みんカラ+
イイね!
2006年03月30日

その手柄は誰のものか・後編 ~日本のJ.Z.デロリアン~

その手柄は誰のものか・後編 ~日本のJ.Z.デロリアン~  (承前)
 さて2000GT。トヨタからプロジェクトに参画しヤマハに駐在したのはわずかに4人。彼らがいくら精鋭だとしても、4人きりで量産車は開発できない。ヤマハ技術陣の力は不可欠だった。

 最終的にトヨタ2000GTは、ヤマハの磐田本社に新設された3号館の工場で生産されることになる。けれどもヤマハにしたって当時はこんな自動車を生産した経験なんぞありゃしないのだ。
 昭和41年、ヤマハは社内に新たに自動車部を置いて2000GT「生産型」の開発に注力することになるのだが、やはり一筋縄では行かなかったようだ。
 自動車部初代部長となった長谷川武彦氏はヤマハ社内誌のインタビューに対して「いくらやっても合格品ができなかった」と述懐している。
検品で指摘された問題点を修正しようとするとかえって製品をいためてしまい、手直しするごとに倍々ゲームのように問題箇所が増えていったと。そして、それを乗り越える方策がどうにも見つからなかったのだと。

 結局、トヨタから「イタリアにあるカロッツェリアを視察してきたらどうか」と示唆された長谷川氏は、現場が困ってるときに外遊とは何事だとの社内の反発を振り切って渡欧する。
 レースで知己のあったジャガーを手始めに、わらしべ長者式に「どっかいいとこ紹介して」とその日暮らしに各国・各社を行脚したと言う。長谷川氏の視察の目的は、まず「カロッツェリアではどんな道具をどう使っているのか」を知ることだった。

 今でこそ世界に冠たる日本の自動車産業だけれども、たった50年前は「自動車って、どんな道具でつくるんですか?」という水準だったわけだ。その会社がバブルの頃にはF1のエンジンを積んだスーパー・スポーツまで市販前提で開発していたのだから、まったく時の流れと言うのは恐ろしい。

 ともあれ、曲折はあったもののトヨタ2000GTは昭和42年に発売された。定価238万円。この年の大卒平均初任給が2万とんで900円ほどだったそうだから、それを基準に考えると今なら2千万円を超える正札を下げてたことになる。ただ、昭和42年ごろの自動車の普及状況から想像すると、当時の人たちは僕らにとっての2千万円カーよりもはるかに手が届かないと感じた筈だ。

 ま、そんなお値段の車だから、買える客など数は知れている。製造されたのは全部で337台。コストダウンを図ったりもしたが焼け石に水、仕舞いにはセンチュリーやS800を開発・生産している関東自動車工業で、恰好のよく似た廉価版(2300GT)を作って売ろうとまで計画したようだが、これも頓挫。昭和45年に2000GTの生産は終了する。オリジナルの2000GT開発に携わった人の一人は「廉価版を作るなんて大愚行。頓挫してホッとした」などと言ってもいるようだが。

 そこで一番最初の問題に立ち返る。トヨタ2000GTは、誰が作った車なのか。
外形的にはトヨタとヤマハの共同開発である。だが生産開発の実働部隊の殆んどはヤマハ発動機の社員が占めた。工場も道具も生産もヤマハだ。
けれどもプランニングや舵取りをしたのはトヨタの河野氏、スタイリングはやはりトヨタの野崎氏、テストドライブはトヨタの細谷氏だから、トヨタが終始手綱を握っていたとも言える。
 でもトヨタ本体は2000GTのプロジェクトに積極的関与をしなかった。ヤマハの安川氏の回想から推測すると、河野氏が腕ずく&口八丁手八丁で自分の会社が首を突っ込まないようにしたようだが、いずれにせよトヨタ自動車工業本体は、脇役以下に見える。

 では、ボンド・カーにまで採用され日本の自動車産業史に燦然たる輝きを残したこの車を生み出した手柄は、誰のものなのだろうか。

 僕は、こう思う。トヨタ2000GTは、トヨタの車でもなければヤマハの車でもない。これは河野二郎の車なのだと。
 河野二郎と言うエネルギッシュで破天荒な人物が、自分の勤め先を炊きつけ利用して作り上げた、彼が個人的に夢見ていた「ホンモノのGTカー」なのではないか、と。その破天荒さを会社が許容した背景には、多分「もはや戦後ではない」と言う高度成長の波に乗った時代だったということもあるだろう。

 僕には河野二郎と言う人物が、GMを辞めて自分の理想の車を作ろうとしたロマンチスト、ジョン・ザッカリー・デロリアンと二重写しになって見える。もちろんそう結論付けるには、河野二郎氏がどういう人物だったのか、もっとよく知らなければならない。
 だけれども、男の胸には浪漫のかけらが欲しいのだ。会社を焚きつけ、ほとんど誰も買えないような値段の、自分のドリーム・カーを思いのままに作っちまった熱い男がいた。そう思うと、何だかワクワクするではないか。
ブログ一覧 | 日本の車 | 日記
Posted at 2006/03/31 03:04:18

イイね!0件



今、あなたにおすすめ

ブログ人気記事

バッテリー、その後
パパンダさん

皿川の水門閉めんでも良かったんじゃ ...
楽農家さん

愛車と出会って7年!
ゆッけ1111さん

南米旅行その13 9日目午後 @ ...
happy37さん

待ってました♫ 〜 冠雪 富士山🗻
pikamatsuさん

WRXオーナーズミーティング201 ...
黒金山都さん

この記事へのコメント

2006/03/31 10:51:42
読ませていただきました。
同じ製造業として僕も情熱を持って
作りたいものが見えてくるようになりたいですね!
物づくりの誇りと現実を垣間見た気がします。
コメントへの返答
2006/03/31 12:38:08
思いのほか長い文章になってしまいまして…。
不思議なもので、車の場合、モデル・チェンジのルーティーンや販売政策的な発想から誕生した車と、作り手側に「想い」があって生み出された車では、なにかしらニオイが違うように感じられることがあります。
僕などは、8代目スカイラインGT-Rと9代目(および10代目)スカイラインGT-Rの間に、その「ニオイの違い」を感じてしまったりします。
そういうのって、性能じゃあないんですよね…。真摯な想いと言うのはやはり伝わるものなのでしょうか。

「頑張れば必ず明日はもっとよくなる」と信じられた昭和30~40年代という時代背景もあったのだろうと思いますが、これを書きながら、時には暑苦しいと感じるくらいの情熱って、やっぱり必要なんだよなと考えました。
2006/04/01 09:31:58
河野氏が2000GTを作る切欠を与えたのが、黎明期の日本のモータースポーツ界に君臨したレーサー、故浮谷東次郎だったという記事を、持ってる書籍だったか雑誌だったかで読んだことがあります。 確か当時のトヨタ(第2回日本グランプリ頃・※)には他社に追従するような性能を持った、レースにも”使える”エンジン(車)が存在せず、浮谷氏の「トヨタにホンダのエンジンを積んでレースに出たら勝てる」という破天荒な物言いにも関係してるとか…

※・第2回日本グランプリは開催されること無く、船橋サーキットのこけら落としレースと変わったそうです。

河野氏、鬼籍に入られたのですね。知りませんでした…
コメントへの返答
2006/04/02 16:09:52
うーむ、ここに浮谷の名が…。そういえば、2000GTをボンド・カーにする際にユニバーサル映画とトヨタの間に立ったのはレーサーの福沢幸雄だったらしいですね。違ったかな?

しかし、草創期のレースは混沌としていて面白いです。式場壮吉と生沢轍の「友情のグランドスタンド前」とか、2000GTの出走が主催者権限の横車押しだったとか、今だったら批判の火の手が上がるようなことも、なんだか許せてしまうような。

確か徳大寺有恒氏も、当時本名でコロナに乗ってレースをしていたはずですね。
現在価格を調べてみる

おすすめアイテム

 
 

プロフィール

「そろそろ寝ないとなー。あした、絶対仕事が面倒くさいことになるの確定だから。」
何シテル?   09/17 23:51
曲面の綺麗な旧い車が好き、エレガンスのある車が好き。そんなこんなでユーノス500に乗りつづけ、もう……何年だ?  気がつけば屋根のない車まで併有。いつまで乗り...
みんカラ新規会員登録

ユーザー内検索

<< 2019/11 >>

     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

リンク・クリップ

Automotive Design 
カテゴリ:新しい車関連
2003/08/09 00:21:12
 
All The Web 
カテゴリ:便利
2002/12/27 14:03:26
 
Hubble Space Telescope Public Pictures 
カテゴリ:科学・文化・芸術
2002/11/08 15:59:43
 

愛車一覧

マツダ ロードスター マツダ ロードスター
2005年10月、発作的に衝動買いしてしまいました。 いい車だなぁと思ってはいたものの所 ...
マツダ ユーノス500 マツダ ユーノス500
気が付けばデビューはもう19年前。 最新の車とは比べるべくもありません。 ガタガタゴトゴ ...
マツダ ランティス マツダ ランティス
俄かオーナー経験は僅か3週間で終わりましたが、とてもいい車です。 代車だったので、コンデ ...
マツダ アテンザ マツダ アテンザ
例によって例のごとく、借り物の車での「パートタイム・オーナー」です。レンタルしたのは10 ...
ヘルプ利用規約サイトマップ
©2019 Carview Corporation All Rights Reserved.