2015年03月30日
街中を歩いていると男に声をかけられた。「俺も警察なんだけど。」たまたま観光に来ていた,違う地方の警察官だった。
「何かよれた奴居たけど,ありゃやっちゃった方がいいんじゃない?」
「あ,ほんとっすか。お疲れっす。うちの方で面割っときます。まだこの辺,歩いてらっしゃる?」
「ああ。2時間は居んじゃないかな。」
「了解。一応分かんなかったら,それをお知らせに上がりますね。シャブで2時間かかることは無いだろうから,たぶんお食事には間に合うと思います。」
その時,「部長。」と少し大きい声で呼び止められた。部下の巡査長だった。
「シャブっつーか麻薬っぽいけど,この見える辺りでは一番とっぽい野郎が居ます。いま,新人に秘匿で追っ掛けさせてます。」
「何だよ。ハーブかあ?」声をかけられた巡査部長はつぶやいた。
「何か気になるな。」
デートしていたが,シャブ中に目がないので妻に先に店に行かせて警官たちを追った。
「気になっちゃった。邪魔しないから見させて。」
「あーどうもありがとうございます。自動車警ら隊の巡査部長の者です。」
「あーそうだったんですか。出戻りでマルボーの警部補の者です。よろしく。」
「そうですか。上官だ。」
「会社違うんだから気になさらないでください。」
「元々シャブですか?」
「シャブやって窃盗かじってからマルボー行ってコーキそんで高速ちょっと行ってから今度は署のシャブの専務で,やりすぎて本部のマルボーに飛ばされた。」
「それ,普通の異動なんじゃないですか?」
「俺はシャブと麻薬が好きだから。特にシャブが大好きだから,それ分かってて発令したんなら俺には左遷みたいなもんだよ。この年じゃ,地域課も行けないだろうしマルボーなんてお先真っ暗だ。」
男が捕捉された。巡査部長が「やれ。」と号令して職質が始まった。
開口一番,「麻薬は分かるんだけど,覚醒剤やってないかの職務質問,事情聴取ですー。」
「あ?
おとといもやられたよ。ちょっとやりすぎなんじゃないの。え?お巡りさんよー。」
「それ,うちの会社で?それは,ほら,麻薬とか大麻とかハーブの職務質問でしょ。
いま,うちらは覚醒剤一本で勝負してんだよね。麻薬だの大麻だのだったら引き下がるから,お願い,覚醒剤に付いて教えて。知識不足なもんですいませーん。」
「何だよ。てめぇらよ。調子づいてんじゃねえよ。こら。」被疑者は一瞬後ずさりし,何気無くポケットを触った。
思わず休日の警部補が叫んだ。
「おい,てめえこの野郎。諦めて出せよ。てめえ。」
「何言ってんだよ。この老いぼれ刑事が。」
「あー?てめえ刑事刑事うっせぇんだよ。好きでやってねえんだ,こっちはよ。さっきもすれ違いしなに小言でほざきやがって。いい加減にしろよ,この野郎。」
警部補が被疑者の首もとを掴んだ。専務とキソーと仲の悪かった警部補が激昂。
「や...やばいっす。幾らこう言う町中のバンカケでも。」
巡査部長が制止に入ると,たまたま暴れた被疑者の拳が当たった。
「てめえ。やりやがったな。逮捕しましょう。
この野郎。尿も車も鞄もズボンも押収だ,バカ野郎。」
「お前もやるねえ。今度,お前の自宅に酒送ってやるよ。どこだよ。」
警部補が巡査部長に言った。巡査部長が「こちらです。」とメモを見せた。
「家内に言ってすぐに手配するよ。」
Posted at 2015/03/30 20:30:13 | |
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2015年03月22日
「畑113から畑。」
「畑113どうぞ。」
「了解。現在,神町横口通りの7丁目交差点前にて,指令4771,詳細不明通報に臨場しましたが,通報者,覚醒剤との事でして,事情聴取が困難中。応援要請を頼みたい。どうぞ。」
丁度,管内の二人の交番警官が付近にいた。
「あ?どいつが行ったんだよ。」
「たぶん奴ですよ。」
奴とは30歳の巡査部長の事だ。度々問題を起こす。鈍感なものだからそこが問題なのだが,上官は何故か叱らない。
署内は多くのシャブ嫌いが居た。シャブ好きの自分等は署内で少数派だった。警察で少数派と言うことは,嫌われもの集団と言うことだ。
少し歩いていくと現場に差し掛かった。既に奴と仲のいい署の専務が来ていた。巡査部長を味方して通報者を説得していた。
交番警官は巡査部長と同い年の警部補だった。覚醒剤で二度表敬されていた。
「お兄さん,事情を聞かせて。」反応し,詰め寄るシャブ嫌いたちをもう一人の連れてきた警官が制止する。
「ゴタゴタうるせぇんだよ。この人の話が聞こえねぇじゃねえか。」
「なんだ。この野郎。てめぇ,俺は専務の係長だぞ。生意気な野郎だな。」
「てめーこそ,なんだ。仕事もろくにできねー分際で,餌だけは一人前食らいやがって。殺しと強盗ばっかりやりやがって。」
「おい待てよ,こら。警察が自作自演してるみたいな言い方しやがってよ。」
「実際どうなんだよ,てめー。捜索も事情聴取も下手くそな,ただ飯食らいが偉そうによー。ぶっこんじまうぞ,くそ専務がこら。」
「言っていいことと悪いことがあんだろ。」
「言っていいことだの何だの能書き垂れるんだったら,やっていいことと悪いこともわかんねーのか,くそ野郎がよ。シャブの通報者に食って掛かるなんて,ごみかてめーら。」
そして,「こんな奴ら,まじで会社にとって良くない。パトカーに縄でくくって川かどぶ池に沈めとけよ。」と指示し,くるっと表情を変えて,
「すいません。うちの同僚どもが。お話も十分に伺わないで身の程知らずで。」
通報者が話し始めた。
「ここから正面2キロくらい先に跳び跳ねながら歩くシャブ中を見掛けました。」
現場からはアーケードが見渡せた。被疑者はアーケードの先の2キロくらい行った先を歩いていたんだそうだ。
「ここから見付けられるっつーことは,奴も相当食ってそうですもんねー。」
「ピョンピョンピョンピョンピョーンって感じだったよ。」
「そんなにですか。今の話聞いて,あのバカコンビは何にも共感しなかったんですか?」
「そうだよ。勘弁して欲しいよねー。」と呆れた様子で返した。
「すいません。我々が最初にくればその様な落ち度は無くて,通報者さんにもご迷惑,不愉快な思いをさせなかったと思うのですが,なにぶん110番の指令センターがあほで痴漢事実と言う内容だったので。最初から覚醒剤だの麻薬だのと無線が来てれば突っ走ってきたんですが。本当に申し訳ありません。」
会話を中断して無線を取り出した。
「畑115から田園本部,畑,田園165,田園170,並びに覚醒剤捜査対応の各局。先程の4771の件,痴漢では無く覚醒剤使用の目撃通報でした。対象は歩行状態でした。まだ捕捉可能と思われます。大至急,初動展開実施せよ。
通報者からの事情聴取によれば,対象はかなりの酩酊状態。一瞬で判別可能と思われます。田園本部の無線指令も捜査念頭で願いたい。以上,畑115。」
無線を終え,再び頭を下げた。
「いや,すいません。無線指令の奴,責任者は同期なのでしっかりと叱っときます。
もう,最近はどこもそうなんですが,初動活動がやたらだらだらしてて,うちらも今回みたいのがあるから困るんですよ。頭数に入れちゃいけないバカが何人か居ますんでね,実際。
一般企業だったらクビですよね。それであの,」
携帯電話を取り出して,電話番号を呼び出した。
「これ,私も勤務中使ってる電話番号です。とりあえず私しか使いませんが,非番の時に妙なのが出たら,すいませんが110番か#9110をお願いします。」
「お巡りさん,それにしても随分こなれてますね。」
「いえ,私も覚醒剤とか暴力団の専務を2年くらいやってましたからね。最近は自らで住宅街対策やってて,たまたまこっちに回されたんですよ。元々,新任の頃からシャブばっかりでしたからね。だからじゃ無いですかね。」
「警部補。」
アイキンの巡査が来た。路駐の車を指差している。シャブ中の車である。500メートルくらい先に斜めに止まっていた。
「覚醒剤使用の照会掛けろ。奴のだろ。」
「畑115から照会センター。」
「畑115どうぞ。」
「路駐車両の薬物確認で照会一本願いたい。ナンバーは」
「畑115,取り扱い留意して下さい。茨城からシャブ取りでB号中です。薬物,強盗,殺人未遂でA号が6発。」
「まじですか。やば。ありがとうございました。以上畑115。」
「以上照会センター。」
程なくして,警部補の元部下の自ら隊の巡査部長が,付近で同一人物を緊急逮捕してきた。これで一件落着である。
それにしても,最近は能無しの警察官が増えて特に薬物事件の対処は緊急の課題である。
Posted at 2015/03/22 05:51:46 | |
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2015年03月15日
「停まってくださーい。警察でーす。お願いしまーす。はーい,ありがとうございましたー。そんままお待ちください。」パトカーから制止を図る声がこだまする。
「どうもこんにちは。顔色が分かんなかったからお止めしました。」
相手はフロントカーテンを付けた軽乗用車だ。シートベルト違反が分からなくするために付けている犯罪者も居るが,自ら隊が何より困るのは,顔まで隠れる事があるからだ。
車体の外観が問題なくても,実際は麻薬や覚醒剤の影響で酩酊状態で運転する奴が居るので職質していく。
「ごめんよ。たまにカーテンを付けた車で覚醒剤打ってる奴居るから停めたんだよ。前はあるんですか。」
「うん。毒劇。」
「それは持ってただけ?いや,はっきり言ってとっぽい感じはするけどよれてる感じは無いですから。」
「17の頃,先輩に持たされて対策班にやられた。」
「あーそう。手配はかけられてる?」
「今?無いよ。」
警察官は免許をじろじろ見ていたが,手配が無いと聞き,雰囲気を観察した。
「まぁいっか。免許返すよ。ありがとねー。」
その時,背後の行き交う幹線道路の不審車両にアイキンが気付いた。
巡査部長も気付いた。
アイキンは30歳の脱サラ巡査だった。頭のいい男で,覚醒剤の発見がかなりうまい。警察署の地域課で有名になり,最近は本部に派遣されていた。
「今,信号が赤になったとこ,水戸ナンバーの奴,見えます?」
「あーよれてる奴?」
黒色のアルファードが停まっている。よく見るとどうやらシャブ中っぽい。
二人は30メートルほど歩いて近付いていった。
「よー!免許くれよ。」
「あ?んだよ。無免中なんだよ。」
「そうなの?まぁいいから左寄せるか,そこの路地に停めろよ。」
車は黙って路地に寄せて左側に停まった。
話の続きをした。「シャブ中なら知ってるけど無免中って何だよ。」
「交通違反で免停中なんだよ。」
「えー?そりゃまずいべよ。詳細調べるから,名前と生年月日頼むよ。」
「何で教えねーといけねーんだよ。」
「免停の事実確認だって。」
「逮捕すればいいだろ。さっさと警察連れてけよ。」
被疑者は逮捕されることは抵抗しないが,それにしてはやはりおかしい。
「お前な,免停も確認できねーのに逮捕なんて会社の方が困んだよ。」
「ばかやろー。じゃ,家に帰せよ。」
「それはおかしいだろ。まぁ落ち着けよ。」
運転手はやはりよれだした。よれとは,酩酊による,「ほころび」の事である。
ブレーキも踏んでないのにシフトレバーを無理矢理操作しようとしている。
巡査がナンバーを照会センターに伝えてから運転手に言った。
「てめー分かってんだろ。いい加減にしろよコノヤロー。車の該当がねーんだ。そっちでやっちまうぞ。シャブ中野郎。」
「あー?悪い奴だな。盗難車なの?」
巡査部長はやややんわりとした物腰で問い掛けた。対して30歳の脱サラ巡査は署内でシャブの警部補の専務と揉めた事があり,マルボー専務から一目置かれるくらい迫力のある人物だった。
「めんどくせー野郎だな。しょうがない。2台くらい車頼むか。」
それで巡査は車を回しながら本部に応援要請した。
5分ほどすると4台の自ら隊と警察署の地域課のパトカーが到着した。
「おい。請求やるだろ?お前ら行けよ。」と警察署の同い年の巡査長が言うので,脱サラ巡査は
「そんな先輩,やっぱ裁判所には慣れてるあなたが行ってくれよ。」
とは言うものの,職質にプライドのあった巡査は裁判所どころではなく先輩巡査長に頼んだのだった。
地域課のパトカーが近くの裁判所に急行していった。
しびれを切らした巡査部長が助手席のグローブボックスを開け,「おい。蓋があいてる。ここ。こん中にシャブとポンプ入ってるけど?」
「てめー。この野郎。勝手に開けやがったな。てめーよ。俺は否認する。」
「何言ってる。壊れて勝手にあいてきたんじゃ無いか。」
「てめー。とりあえず名前だけは語っとけよ,いい加減によー。」
巡査がまた凄む。
自ら隊がそっと声を掛ける。「部長,そりゃまずいよ。」
「国産車なんてこんなもんだ。俺が大学入ってすぐ買った,キャデラックのローライダーだってこんなちゃちじゃ無かった。」巡査が言うと,
「そうだ。アルファードなんてカローラよりちゃちな工場で造ってんだから,部品なんてぶっ壊れやすい。俺の会社が勝手にどうのこうのなんてつったら承知しねーぞ,この野郎。」
遂に普段は温厚な巡査部長までキレた。やけに詳しいのは10年前に高速隊に居たからだ。交通警官は車やバイクにおたくのようなマメさがある。
二人に圧倒された水戸ナンバーの運転手は観念し,名前も教え,シャブの容疑も認めたため,逮捕してやった。
Posted at 2015/03/15 21:00:51 | |
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2015年03月08日
名古屋の自らの前じゃ,あえてブッ飛ばしていくと,全く追ってきません。所轄と交機の前じゃ自殺行為だけど。
余裕でR41でもいっちばん前に行けるじゃんね(笑)自信満々で交通違反する車はあいつら,眼中に無いから!
Posted at 2015/03/08 08:29:38 | |
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2015年03月08日
自らの警部補ともなると,統計的な確証は無いが大体半分くらいは高速隊や刑事の経験者で構成されているため,経験則が数段上と思って間違いない。怪しいか,手配があるか,人にしろ自転車にしろ自動車にしろ,見たときから確信があって職質するものなのである。
だが,今夜は違っていた。警察庁出身の若い巡査部長を連れていた。本部の地域部からも「お前ら,期間中だけでもいいからバカでも職質やってるなと思われる様な大袈裟な事情聴取,抑止活動を実施しなさい。」と強い通達があった。
だから,仕方無くいつもやっているかのように,ヤンキーの乗る整備不良自動車や,チンピラの歩行者を職質していった。薬銃絡みの事案が得意な自ら隊警察官には真面目にきつい。自らの意味がないと思っていた。
...だが,分からないものである。
「すいませーん。車なのに前まで窓真っ暗なんで,職務質問です。」
普段なら絶対にマルB車両には声を掛けない警部補がフルスモークの路駐車両に話し掛けた。
「噂じゃ,この辺の人はうちみたいのは基本スルーって話だけど?整備不良はやんないんじゃないの?」
「いや。いつもの日はね。ほれ,今日は金バッジの若いの連れてるから見せ掛けだけでも協力してくれませんか。」
警部補は,背後に立つ若い巡査部長を指差した。
「こっちも勝手な話だけど,会社の中じゃある程度は立場を固めとかないといけないからご協力をお願いします。」
運転手は,「そしたら,もうちっと窓下げて。」と言う要請に従ってやった。
「免許,こっちにチラ見さして?」
運転免許証に覚えがある。
「俺,初めてだけど,やっぱり知ってるよ。無線か何かで,一時期,すげー流れてたんで残ってたよ。そん時,俺はそこで専務やってたけど。」
警部補は,車内に二人で乗っていたのに気付いた。よく見ると,美人な彼女は少しヨレている。高級な服装だが,なりきんと言う感じがしない。
覚醒剤かな,と思った。
警部補は研修警官では無いアイキン者にポンプの操作で合図した。
アイキンの巡査部長がパトカーに戻って無線で警察署を呼び出していた。
その間も,警部補は男には目もくれず,女から目を離さない。こう言う時は,高級バッグ,高級衣類がかなりよれて見える。一般人の健康な人が同じ趣向の服装をするのと,いかにもよれている者の服装はよく見ると結構違うものなのである。
分かり易過ぎて参考にもならないが,例えば,買い物やコンビニに突っ掛けにジャージやスウェットで出掛ける奴の服装も,一種のシャブよれである。高級衣類の服装では,きちんと着こなしていないのを見咎めて追及していく。
女には服装の乱れがあった。普通,服装が乱れればどこかへさささっと行って直してくるものだが,シャブ中ではそう言うことをしない。本人も気付いていてもそのまんまなのだ。
警察の専門家から見ればこうなれば確信がある。どんどんどんどん突っついていく。シャブを挙げるのは簡単である。
実際にはトラブルが付きまとうので有り得ないが,完璧なら日に20人くらいは逮捕できるのではないか。ほぼ,
「弁護士を呼べ」だの
「持ってるワケねーだろ。頭おかしいんじゃねえの?」
とまず抵抗するし,専務がなかなか来てくれないと逮捕まで真面目に時間がかかる。東京でも緊急走行で来なければ,多摩地方などは現場と警察署が遠いこともしばしばだからだ。
自ら隊の仕事は,保育園や託児所のはたち過ぎの若くて美人な保育士が幼い子供をあやすようなもので,シャブ中から「ほらほらほら。内ポケとポーチから出しちゃいな。」と言ってやる。今夜の逮捕もそんなところだ。
Posted at 2015/03/08 04:04:04 | |
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