Bagnole3月号では「カチカチ価値観」と題し、価値観について考えてみました。なぜ頭に「カチカチ」とつけたか。「あなたの価値観はカチカチに固まっていませんか?」という呼びかけの意味を込めよう……というのはだいぶ経ってから思いついた後付けの理由で、実際にはほぼ100%言葉の響きです。
例えば。例えばですが、使えるお金が300万円あったとして、クルマ好きなら、まず「新車ならこのクルマが買える」「中古車ならアレに手が届く」などと考えるのではないでしょうか。僕もよく考えます。けれど、“クルマ好き人間”=“クルマしか好きじゃない人間”とは限りません。むしろ、クルマがいろんな“好き”のうちのひとつであることのほうが多いでしょう。その場合、他の”好き”、あるいは他の“必要”に300万円を投じたら何を実現できるかということを考えてみたかったのです。
改めていくつか調べてみると、300万円あったら結構いろんなことができることがわかりました。ひと晩の食事とワインに投じればとんでもない一夜になります。素敵な物件も手に入ります。「モノより思い出」とばかりに旅行すれば、一生忘れようのないメモリーが手に入ること請け合いです。300万円というのはあくまでモノのたとえで、30万円でも3000万円でもいいのです。クルマ購入を検討する際、印鑑を押す前にひとつ深呼吸を入れて、その資金を他に使えばどれほどのモノ、サービスが買えるか、考えてみるべきではないでしょうか。
そりゃBagnoleは自動車雑誌ですから、300万円でどんなクルマが買えるかについても言及しています。そのなかのひとつとして「トヨタ・マークXなら新車で、諸費用を含め十分に300万円で買えるよ」という提案を盛り込みました。マークXをひと言で表現するなら、排気量2.5ℓのV6エンジンを縦置きし、後輪を駆動するセダンということになりましょうか。
こんな贅沢なスペックがこの価格で買えるのは世界でもマークXを除いて他にありません。もちろん、数値化できるスペックだけで価格が決まるわけではありません。“クルマはスペックではない”というのは、むしろ我々クルマ雑誌がよく使う言葉です。ですが、まるっきり無視できるファクターでもありません。例えば、世のFFがどんなに進化しても、前輪に駆動と操舵を同時に担わせる以上、前輪で操舵、後輪で駆動させるFRにかなわない領域があると思います。

マークXがダメといっているわけではなく、Xジャンプの着地でもなく、マークXのグリルのマネ。
マークXがどういうクルマかについて、みんカラのスペシャルブログでもおなじみの島下泰久さんに原稿を寄せていただきました。島下さんはその原稿でクルマの善し悪しに触れるとともに、このクルマを例に「今の国産車で、日本のユーザーを第一に考えたクルマがどれだけあるだろうか。その問いかけこそ、私が年末のCOTYでこのクルマにポイントを投じた理由である」という主旨の問題提起を盛り込んでいます。
モノの価値は定まりません。人それぞれが決めることです。その平均的なところをとって市場での価格が決まります。だから買い物は難しい。同時にだから面白い。Bagnole3月号の特集「カチカチ価値観」、読んでみてください。
ブログ一覧 |
お知らせ | 日記
Posted at
2011/03/02 04:23:10