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塩見 智のブログ一覧

2011年07月11日 イイね!

日産のルーツのひとつ

日産のルーツのひとつ現在の日産自動車のルーツとなった快進社の創業100周年を記念する企画展が、東京・上野の国立科学博物館で開かれている。11日、創業100周年を祝いシンポジウム「人のために、社会のために、受け継がれる自動車技術の未来」が開かれ、日産のエンジニアや大学教授らが、自動車技術の過去と未来についてパネルディスカッションを繰り広げた。この日は休日とあって、多くの家族連れが展示に見入っていたほか、シンポジウム会場ではクルマ好きがエンジニアの話に熱心に耳を傾けた。記念展は7月24日まで。……と、久しぶりに新聞の地域版リードみたいに書きだしてみた。いや、地域版でリードにこんなに行数使ったら怒られるか。

■快進社とは
1911年、愛知県岡崎市生まれの橋本増治郎が現在の渋谷区広尾に快進社自働車工場を設立する。橋本は1895年に現在の東京工業大学を卒業後、農商務省海外実業練習生として渡米、石炭から石油への転換を体感し、自動車製造の夢を抱く。帰国後に勤めた越中島鉄工所が九州炭鉱汽船に買収され、そこで橋本の実力が経営陣の目にとまり、同社の後ろ盾を得て快進社自働車工場を設立する。橋本は社名に「自動車」じゃなく「自働車」を使った。設立から3年後、橋本は東京大正博覧会に「DAT」乗用車を出品する。DATとは橋本のパトロン3人の頭文字。九州炭鉱汽船社長の田健治郎男爵のD、逓信省技師、青山禄郎のA、九州炭鉱汽船役員の竹内明太郎のTだ。後年のダットサンのフロントグリルにはうさぎのエンブレムが付いているから、途中で「脱兎」の意味も込められたのだろう。

1911年の快進社自働車工場設立時の写真。会社は広尾に設立されたが、ほどなく豊島区南長崎のあたりに工場を建設したそうで、この写真がどっちかは不明。

■DATの息子
その後も快進社は乗用車やトラックなどを製造するも、不況、関東大震災、フォードの日本進出などによって経営状況は厳しく、1925年、橋本は社を解散してダット自動車商会に組織を縮小した後、翌26年に大阪の実用自動車製造と合併、社名をダット自動車製造に変更する。橋本は心機一転、大阪を拠点に自動車開発を続け、31年に会社を退く。その年、ダット自動車製造は乗用車「DATSON」(ダットソン=ダットの息子の意。「ソン」の響きが「損」を連想させるとして、後に「DATSUN」<ダットサン>に変更)を完成させるとともに、鮎川義介率いる戸畑鋳物の傘下に入る。この後、もう少し紆余曲折があって、1934年の日産自動車誕生へつながる。

ダット自動車製造時代に販売された「ダットソン號小型自動車」のカタログ。当時はDATSUNではなくDATSON。

■戦前の自動車産業
ところで、前述した関東大震災は1923年に発生する。その2年後にフォードが横浜に工場を建設し、日本でも自動車製造を始めたほか、全国に代理店を整備し始める。ライバルのGMはそのまた2年後の27年に大阪に工場を建設する。その結果、震災のあった23年に1万2765台だった日本の自動車台数は、フォード参入の25年に2万9164台に、GM参入の27年には5万1762台へと倍々ゲームで増える。機を見るに敏という言葉が適切かどうかわからないが、アメリカの二大巨頭は復興需要を見逃さず、よちよち歩きの国内自動車産業をあざ笑うかのように日本で自動車をバンバン作って売ったことになる。30年代、日本の自動車の台数は10万台を超えるが、その多くがフォードやGM(これらも統計上は国産車)製だったという。その後に第二次世界大戦に突入するも、戦後、日本の自動車産業は目覚しい発展を遂げるが、やはりそれはミラクルで、アメリカ資本を中心とした自動車産業になっていたとしても不思議じゃなかったのではないだろうか。

1920年代の軍用保護自動車の写真。軍用保護自動車とは、普段は民間が使い、有事の際には軍に差し出す契約になっている自動車のこと。左上は東京瓦斯電気製、右上は石川島造船所自動車部製、下は左右ともにダット。ちなみに東京瓦斯電気も石川島造船所自動車部も現在のいすゞのこと。

それはともかく、戦前の日本の自動車産業がアメリカに席巻されていたことを、恥ずかしながら今回のシンポジウムで初めて知った。国立科学博物館さん、ありがとう。
Posted at 2011/07/11 16:25:13 | コメント(2) | トラックバック(0) | よもやま話 | 日記
2011年07月05日 イイね!

クルマはどうあれば魅力的?

■夏恒例のマニアック展示会
少し時間がたってしまったが、先日「ジープの機能美展」を数年ぶりに取材したので報告したい。「〜機能美展」は1995年から毎年夏に埼玉県入間市の市博物館で開かれているイベントで、主催者は石川雄一さん。かつて『4×4 MAGAZINE』を創刊し、数年前まで『CCV(クロスカントリー・ビークル)』という、非常にマニア度の高いオフロード車専門誌を発行していた方。許可を得たわけではないが、僕は勝手に弟子入りしたつもりでいて、オフロード車のことでわからないことがあったら電話する。

例年はお盆の時期に開催されていて、昔は「お盆の時期に進駐軍のクルマを飾るなんて!」という声もあったそうだが、最近では円満に開催されている。今年は最も電力需要が高まる真夏を避けたのだろうか。ともあれ、展示車はいつも通り、マニアックなクルマばかりだった。一部をご紹介。

くろがねオート三輪(1956)
マツダ、ダイハツと並んで戦前から三大オート三輪メーカーのひとつだった日本内燃(製造)機のくろがねオート三輪。それにしても、小道具として傍らに肥溜めを置くあたりに主催者のイタズラ心が垣間見える。



トヨタ・ジープ(1952)
自衛隊の前身、警察予備隊に制式採用してもらうべくトヨタが開発した四輪駆動車。結局、制式採用されたのは、実績のある本家ウィリス・ジープのライセンス生産版たる三菱ジープだったけど、トヨタはせっかく作ったのだからと販売した。発売直前まで「ジープ」と呼んでいたが、これは当然ウィリスやライセンス版の三菱が名乗るべき名前なので、トヨタは「ランドローバー」をもじって「ランドクルーザー」と名付けた。BJ(B型エンジンを積んだJEEP)という型式にその名残りが見られる。ちなみにより大きなエンジンを積んだタイプはFJと呼ばれ、現在のFJクルーザーの先祖だ。


ランドローバー・シリーズ3 コマンドカー(1983)
こっちが本家のランドローバー。後に「ディフェンダー」と呼ばれるようになったが、当時はまだ「ランドローバー」というモデル名だった。ランドローバーは1948年に登場し、長寿だと言われるミニや911なんかより、よっぽどそのままの姿で長く作られてきたのだが、愛好家はヘッドライトの間隔やラジエターグリルの形状などで年代やシリーズを識別する。残念ながら僕はその域に達しておらず、達する予定もない。



NSU ケッテンクラート(1944)
NSUの軍用車、ケッテンクラート……。我が家にNSUに関する資料が皆無で、ほぼ何もわからず。バイクの後ろに無限軌道のタンクがくっついていて半魚人みたいだが、当時はこれがユンカースから続々出てきて戦地で活躍したとか。当然、無限軌道の回転差で曲がるはずだが、バイク(の前半分みたいな)部分にどういう意味があるんだろう?


■四駆界のみつを発見
足利四駆会なる愛好会の方が会場に相田みつをっぽい“書”を掲示していた。筋金入りの四駆愛好家にしか思いつかないような内容ばかりでおかしかったので、いくつか掲載したい。










シニカルあり、自虐あり、AKB(!?)あり。会場でゲラゲラ笑ってしまった。なお、もっと艶っぽい作品もあるのだが、市博物館というちびっ子も訪れる公的な場所のため自粛したらしい。

■魅力的なクルマとは?
この展覧会を取材するたび、ともすると「速い」「美しい」「乗り心地がいい」あたりに偏りがちな僕のクルマ価値観というか視野がガバっと広がる。毎年、ここには「遅く」「不格好で」「乗り心地を一切考慮していない」クルマがゴロゴロしているが、どれも例外なく魅力的だ。いったい魅力的なクルマってどういうクルマなんだろうか。そんなの人それぞれだし、自分の中でも何度も考えが変わるが、目的に対して忠実かどうかという尺度は重要なんじゃないだろうか。

それにしても「機能美」っていい言葉だな。
Posted at 2011/07/05 02:59:07 | コメント(4) | トラックバック(0) | よもやま話 | 日記
2011年06月24日 イイね!

ジュークターボ結構好き

ジュークターボ結構好き前々からその個性的な顔とコンパクトなサイズを憎からず思っていた日産ジュークに乗ってみた。借りたのは、1.6リッター直噴直4ターボエンジン、6速マニュアルモード付きCVT、4WDが組み合わせられる16GT FOURというトップグレード。245万1750円。

ジュークは全長4135mm、全幅1765mm、全高1570mm、ホイールベースは2530mmと、結構小さい。世間には、依然「高さ1550mmまで」という立体駐車場が少なくないが、かつて杓子定規に「シトロエンお断り」という規約を守り、AXでも入れさせなかったような管理のおじさんにさえ出くわさなければ、入れることができるだろう。



コンパクトだと気になるのは居住空間。借り出して真っ先に後席に座ってみた。広くはないものの、膝前も頭上も窮屈とは感じない。つま先も前席下へ入れられるし、背もたれの角度も自然なので、数時間座ることになっても大丈夫だろう。絶対的サイズといい、そのサイズを効率よく居住空間に割り当てたところといい、このクルマは結構真面目に作られている。奇抜な外観からは想像しにくいが。



ジュークに搭載されたMR16DDTエンジンの最高出力190ps/5600rpm、最大トルク24.5kgm/2000〜5200rpmというパワースペックを、日産に従来からあるエンジンから探すとなると、エクストレイルが積むQR25DE(2.5リッターNA)あたりになる。つまり、この1.6リッター・ターボ採用は、世界的トレンドながら日本車には珍しい“ダウンサイジング+過給”コンセプトと言える。



車重は1380kg。パワースペックと車重の関係だけでいえば、1.4リッター直4ツインチャージャーエンジン(160ps/5800rpm、24.5kgm/1500〜4500rpm)を積むゴルフTSIハイライン(車重1340kg)あたりに近い。そう書けば、だいたいどの程度の速さかわかっていただけるだろうか。いやいや、クルマの運動性能はスペックからだけでは想像できず、乗ってみないとわからない。そうでないと自動車メディアの仕事も減ってしまう……と書きたいが、パワー(トルク)・トゥ・ウェイトレシオは、数値から想像しても大きく外すことはない。で、ジューク16GT FOURの7.3kg/ps。このくらいだと、遅いはずはないのだ。



実際、ジューク16GT FOURは相当にパワフルだ。踏めばどこからでも力強く加速するという、トルクバンドの広い過給エンジン特有のパフォーマンスを発揮する。常に最大トルクを発生するゾーンにエンジン回転数を保ち、必ずしもアクセル開度と加速感が一致しないのはCVTの嫌なところであり、しかしながら高い効率を追求する本来の姿なのだが、ジューク16GTに積まれるCVTは、効率の高さを追求しつつも、アクセルを踏み増しているのにエンジン回転数はじわじわ下がり、それでいてスピードは上がっていくような違和感を、ドライバーになるべく感じさせない。最近モデルチェンジしたメガーヌにも同じCVTが採用されたが、このCVTは結構好きなほうだ。CVT自体は好きじゃないが。

10・15モード燃費は14.0km/リッター。実際走ってもそれくらいだった。燃費のよいクルマも増えてきたので特別すごいとも思わないが、10年前、いやわずか5年前に売られていたクルマの基準でいえば、かなりよい。



SUVとはいっても、コンパクトカーのシャシーを流用して開発され、全高も前述のとおりそんなに高いわけじゃないから、コーナリングや車線変更の際に上屋の高さが気になるようなことはない。一般道ではキビキビと走り、高速道路ではサイズから想像するよりどっしりとしていた。このどっしり感はどこからくるのか。おそらく4WD化による重要増加がよい方向に作用しているのと、レイアウト上の都合から4WD車のみに採用されるマルチリンク・リアサスペンションが、乗り心地に貢献しているのではないか。

日産が好きで、マーチよりもう少しいいのが欲しいけど、だからってティーダはな……という向きが、ハッチバックの気軽さと実用性を求めて買っても何ひとつ困ることはないと思う。若者向けの匂いがぷんぷんするが、オッサンがこのクルマから降りてくるのを見ても悪くなかった。そういう意味では懐の深いクルマかも。個性を求めて300万円未満の輸入コンパクトばかり乗ってきたが、近頃、イタリアにもフランスにもこれ! というのがないとお嘆きの人は試乗くらいしてみてもいいと思う。ジューク自体は162万150円からある。
Posted at 2011/06/24 12:26:37 | コメント(2) | トラックバック(0) | クルマの記事 | 日記
2011年06月05日 イイね!

レッドブル、東日本に翼をさずける

レッドブル、東日本に翼をさずけるレッドブル・レーシングによる一般公道でのF1マシンのショーランが、横浜市元町の元町ショッピングストリートで開かれた。日本で初めてF1マシンが公道を走るということで、多くのファンとたまたま買い物に来てい(て巻き込まれ)た人合わせて1万1000人(主催者発表)が走行を見学した。


写真はすべてレッドブル・ジャパン

「東日本大震災で被害を受けた日本にエナジーを届けるべく」(プレスリリースまま)、レッドブルが地元商店会と共同で開催。レッドブル・レーシングはルノーエンジンを搭載してF1を戦っている→ルノーと日産はグループ→日産の本社は横浜市ということで、日本初の公道走行が実現した。さすがはかつて日産やBMWの販売会社などで活躍した林文子市長(だけじゃないだろうけど)、話がわかる。


左が林横浜市長(書かなくてもわかるか)

元々週末には買い物客で賑わう元町ショッピングストリート。午前9時半すぎの走行を前に、すでに早朝から特設コース(つまり道路。幅4m)脇に大勢の観客が駆けつけ、大げさじゃなく身動き取れないほどごった返した。早い人は前日から場所取りしていたとか。約500mのコースを2往復する予定が、これ以上人が集まっては危険と、直前になって1往復のみということがアナウンスされた。ピエール北川さんの直前の煽り実況もほとんど聞こえず、まだかまだかと待っていると、エグゾーストノートが聞こえてきた。眼前を目測で40km/hくらいでセバスチャン・ブエミドライブのF1マシンが通り過ぎた。昨年のマシンに今年のカラーリング。





広い場所ならスピンターンで戻ってくるのだろうが、商店街は狭い。折り返し地点でスタッフが押して引いて切り替えし。再び戻っていった。観客が実際にマシンを見たのは行きと帰りでおそらく数秒ずつ。さすがにもう少しなんか見たい! とかえってフラストレーションをためた人も多かっただろうが、それでもF1の大きな魅力のひとつである爆音は楽しむことができたはずだ。


今季RBRは日産のプレミアムブランド「インフィニティ」のスポンサ
ードを受けている。パレードカーもフーガじゃなくちゃんとインフィ
ニティMが用いられていた


モナコでポイントゲットしてご機嫌のS・ブエミ。イベント終了後
すぐカナダに向けて飛び立ったらしい


この音を聞いて、1994年、当時のTIサーキット英田で開かれたパシフィックGPで、生まれて初めてF1を観戦した時のことを思い出したのであった。あの音は何物にも代えがたい。いま、FIAは電気自動車による国際格式レースを検討していると聞く。それはそれで技術博覧会的な意味合いがあるだろうし、速さだってF1に劣らないか、上回るようなマシンで争われるのだろう。コンペティションもストーブリーグも同じようにファンをわくわくさせるだろう。けれど、電気F1にはこの音がないじゃないか、音が。帰路そんなことを考えていた。

東日本にエナジーが届いているといいな。

Posted at 2011/06/05 20:43:57 | コメント(2) | トラックバック(0) | よもやま話 | 日記
2011年05月28日 イイね!

ルノー・ウィンド

ルノー・ウィンド「大門にある『山本屋本店』本店の味噌煮込みうどんを食べにこない?」という殺し文句で僕を名古屋へ呼び寄せたのは、フランス車、とりわけルノーを得意とする並行輸入業者「RENO」。これが「山本屋総本家」なら東京にもあるし、麺の硬さが物足りないのでお断りするところだが、愛知か岐阜でしか食べられない「〜本店」となれば話は別だ。品川から新幹線に乗った。

名古屋コーチンをトッピングしたバリカタ味噌煮込みうどんを完食した後、RENOのオヤジが切り出す。「実は乗ってみてほしいクルマがあるんだ」。「ふっ、味噌煮込みうどんのためだけに僕を呼ぶわけないと思っていたよ」と僕。「でもうどんの話をしただけでホントに来たよね」(オヤジ)というやりとりはともかく、この度、ルノー・ウィンドなるクルマを輸入したんだという。



◆トゥインゴCC
「ミストラル」だの「シロッコ」だのマセラティやVWが風の名前を大事に大事に車名に使ってきたのに、ここへきてルノーがざっくり「ウィンド」。それはさておき、ウィンドはリトラクタブル・ハードトップの2シーター・クーペだ。ベースはトゥインゴ。全長3828mm、全幅1698mm、全高1415mm。ホイールベースは2368mm。 2+2と2シーターという違いがあるが、プジョー207CCより少し小さい。ヘッドランプやフロントグリルなど、ディテールのあちこちにトゥインゴを思わせる形状が見られる。写真で見るとクーペというわりにはずんぐりしたように見えるが、実際に見ても、天地に厚く、ホントにずんぐりしている。



RENOが入れたのは、ベルギー仕様のエクセプシオンというグレード。エンジンは直4の1.6リッターNAを積む。最高出力133ps/6750rpm、最大トルク16.3kgm/4400rpm。トランスミッションは5MT。日本に正規輸入されているトゥインゴRSと同じエンジン、トランスミッションの組み合わせだ。ほぼフル装備で、オートエアコン、ブルートゥース付きオーディオ(電話も可)、17インチアルミホイール(タイヤは205/40/R17のコンチネンタル・スポーツコンタクト3)などが備わる。なお、本国には直4、1.2リッターターボ仕様もある。


ルノーおなじみのBCBGなインテリア

トゥインゴRSと同じエンジン

◆リトラクタブル・ハードトップ考
突然だが、ここでいったんウィンドの話から外れることを許してほしい。世にリトラクタブル・ハードトップ車が増えた。一時はすべてのオープンカーが硬い屋根になっちゃうんじゃないかと心配したものだが、頑なにソフトトップにこだわるモデルもあり、棲み分けができた。格納できるハードトップ自体は戦前からあったし、SLKや206CCがブームを起こす以前にも、ソアラ・エアロキャビンやCR-Xデルソルなど、愉快なルーフのクルマがいくつかあったが、ここ10年くらいでオープンカーのなかにリトラクタブル・ハードトップという新ジャンルが確立された感じだ。

ハードトップにもソフトトップにもメリットとデメリットがある。ハードトップの短所のひとつは開閉に時間がかかること。複雑なアクションでトランスフォームする様子は見ていて楽しい。が、それも10回も見れば飽き、信号待ちでさっと開閉できるほうがありがたいと思うようになるはずだ。しかも、最近のソフトトップ車は走行中に開閉できるものも多い。赤信号中に開き切らず、走りながら完了させる姿はとてもキザだが魅力的だ。キザが嫌ならそもそもオープンになんか乗るなという話である。

だから、リトラクタブル・ハードトップにはできる限り開閉の速さを求めたい。例えば、外苑西通りや国道134号の赤信号でバッチリ決められる秒数で完了してほしい。イチかバチかトライして、間に合わなかったらしばらく「只今トランスフォーム中」のまま走らなくてはならないのだ。これ以上の罰ゲームはない。

◆開いて裏返って閉まるだけ
話をウィンドに戻そう。気になるウィンドのルーフ開閉所要時間は12秒と短い。これならたいていの交差点で大丈夫だろう。カタログで調べると、マツダ・ロードスターRHTが12秒で並ぶが、その他のモデルは軒並み20秒以上を要する。12秒は開口面積の小さな2シーターでないと実現不可能な秒数だろう。





短時間で開閉できるだけでなく、ウィンドの開閉の仕組みがシンプルかつユニークだ。まずトランクリッドが荷物の出し入れ時と逆に開いてルーフを迎え入れるのは他のリトラクタブル・ハードトップ車と一緒。次に、他のモデルはたいていルーフをZの形に格納するが、ウィンドはルーフ後端を支点に180度裏返るだけ。あとはトランクリッドが再び閉まって完了。リトラクタブル・ハードトップ車には、結構高いモデルでも閉じる際にルーフとフロントシールドがぶつかってガタンと音を立てるモデルがあるが、ウィンドはルーフそのものが軽く小さいため、何事もなかったかのようにパタンと閉まる。

一般的なリトラクタブル・ハードトップのモデルのようにリアウィンドウも格納されるわけではなく、シート後方のロールバー部分はそのまま残り、ロータス・ヨーロッパ並みの天地しかないリアウィンドウも、開けていようが閉めていようが同じ状態で残る。解放感はタルガトップ並み。風の巻き込みは少ない。


背(座高)の高い人だとクローズド状態での頭上空間はギリギリ

この薄い空間にルーフが収まる。トランク側のヒンジはこんなにシンプル

トランク容量はルーテシアと同じ270ℓを確保
私物のZEROがいい味出してますね。ポリカーボネートだけど

◆安っぽさは微塵もなし
ルーフが開いていようと閉じていようと、ウィンドは、そのスタイル、サイズから期待する通りの走りを見せる。133ps、16.3kgmに車重1248kg(フランスの公式webサイトより。計測方法が違って日本の計測方法より幾分軽く表示される)だから、速くはないが、かといって遅くもなく、トゥインゴではRSに用いられるエンジンだけにレスポンスは上々かつ回せば気持ちよく吹ける。

ルーフが開くといっても、シンプルな機構で開口面積もほどほどのためか、オープン/クローズ時で体感的な剛性感に変化はない。コンビニ駐車場の入り口にある段差を斜めにゆっくり通過しても、ルーフの状態に関係なく低級な音は皆無だ。スピードを上げて走ると、小さな屋根開きグルマとは思えぬ乗り心地に驚く。

シャシーカップ(2種類あるうちの硬い方)を採用した日本仕様のトゥインゴRSの乗り心地は特別に硬く、街中では閉口気味だが、ウィンドはシャシースポール(柔らかい方)を採用した日本仕様ルーテシアRSに近く、ソフトじゃないけどイヤじゃないタイプの乗り心地にしつけられている。血相を変えて走りたいならトゥインゴRSの方が気分は盛り上がるだろうし、実際に速いだろうが、何度も彼女に乗って欲しいなら断然こっちだ。屋根開くし。ド新車の売り物だけにビュンビュン走らせるわけにはいかなかったが、この感じだとワインディングロードも苦手ではないはず。

◆275万円
RENOではルノー・ウィンドに275万円のプライスをつけている。好きモノが指名買いするモデルに対して高い安いと決め付けるのはナンセンス。気になったらとにかく一度見にいこう。この力の抜け具合、遊べる屋根、 でもきちんと走る基本性能……(2シーターが候補になる環境にあるなら)ちょっとグラっとくるモデルだ。
Posted at 2011/05/28 21:17:38 | コメント(4) | トラックバック(0) | クルマの記事 | 日記
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