
BBSホイールで有名な
ワシマイヤー他3社が会社更生法を申請したそうです。
非常に興味深いところは、
通常経営者側からなされるこの申し立てが
メインバンクであるところの福井銀行からなされたと言うところです。
さて、
BBSホイールに関しては
私たち世代には憧れのホイールですので、
その思い出を書き出せばきりがないのですが、
(注※BBSホイールが無くなるわけではありませんし、
ましてや更生法適用申請であり倒産でもありません。)
今回は趣向を変えて申請3社の親会社にあたる
小野グループについて考えてみたいと思います。
小野グループは工作機械で財を成し、
ドイツ製工業製品のライセンス生産で成長を遂げた北陸地方屈指の製造業者です。
BBSホイールをはじめ、カールツアイスブランドでのメガネレンズを製造していたりもします。
福井県に在住の方は小野グループのことに関して知らない方はいないでしょうし、
またその経営者一族のことも知らない方はいないでしょう。
ひょんなことから小野グループとかかわりのある方にこんな話を聞いたことがあります。
「自宅に食事へ招待されると、フルコースの料理が出て来るんですよ。」
「食事の後は皆で楽器の演奏や歌を披露します。」
「最後は生演奏でドイツ民謡をみんなで合唱したりするんですよ。」
「そんな食事が日常のように行われているんですよ。」
まさにドイツ貴族のようなお食事会だったそうです。
北陸の方から見ればまさに雲上の方というかいわゆるセレブだったわけですね。
また小野グループ社長は各種文化的活動や海外からの勲章授与など、
まさに地域の名士的な存在であったことは言うまでもありません。
そのグループ会社が事実上の倒産(会社更生法)の申請ですから、
このニュースを見たときに私もかなり驚いてしまいました。
とはいえ、会社更生法適用の申請自体は特段驚くことではありません。
というのも企業はいずれその終焉を迎える時が必ずやって来るからです。
国税庁のある調査によれば、20年以上続く企業は全体のわずか0.3%だそうです。
これが50年、100年となるといわずもがなです。
そんなことより私が一番驚いたのはこの申請を申し立てたのが、
「メインバンクである福井銀行」
であったということ。
もう一つは、申請の理由の一つに
「10年以上に及ぶ不正経理が発覚した。」
と言う事でした。
上記2つのことに驚くと同時に、なるほどと思った側面もあります。
というのも、以前よりとある違和感をこの企業に感じていたのも事実だからです。
自動車雑誌などで日本BBS社の広告を見ると、
知名度の高いメーカーにしてはその広告が非常に違和感を感じる物だったのです。
ある程度知名度のある会社になると広告はどうしてもイメージ広告になりがちです。
あまり性能どうこうとか、会社の自慢などは出てこなくなるものです。
その方が文字通り
「イメージが良い」
のでしょう。
しかしこのメーカーは違っていました。
いかに自社製品が優れているのかを訴求するのが主で、
自社がいかに優れているかをひたすら訴求する広告が主でした。
特に、
「自己資本比率・・・・・・・億円」
などと言う記載は、いるのかコレ?と正直思っていました。
企業の裏側では財務体質や各種経理上の数値が必ず出てきます。
キチンとそういう数字を示さないと銀行さんがお金を貸してくれないからです。
しかし、最近の企業でそんな広告を表に出すところはあまりありません。
なんだか昭和20~30年代の企業広告を見ているような違和感がありました。
「技術集団」
を社是とする企業ですから経営者の拘りなんだろうなあと思っていましたが、
今回の一件で私の中のモヤモヤがようやく晴れた気がしました。
少々失礼な言い方になってしまうかもしれないですが承知でハッキリいいます。
「ここもよくある企業の一つ」
だったのです。
何をもってよくある企業というか?
それは、
「体面」
です。
あの広告は技術よりも何よりも「体面」に則った広告だったと理解したわけです。
簡単に言ってしまえば、
「自慢」
したかったのです。
本社のホームページにしてもそうです。
代表の経歴を詳細に載せている企業は良くみますが、
ジュニアである副代表の経歴まで載せている企業はそうそうありません。
典型的な親族経営企業での世襲準備と思われても仕方ありません。
有能な参謀がいれば、
「まだ時期が早いのでは・・・・・」
と意見したでしょう。
しかし、それができる方は恐らくいらっしゃらなかったと思います。
広告にしても、各代理店は様々な提案をしたはずです。
しかし、出来上がるのは「いつもの広告」だったのでしょう。
穿った見方と思われるかも知れません。
しかし、私は同グループのホームページを見て確信しました。
曰くそこでは、
「会社更生法は倒産ではありません・・・・・・」
うんぬんとようは倒産じゃないんだということを懸命に記載し、
ご丁寧に説明の図表まで記載してあります。
かなり厳しい言い方ですが、
お客様は、「会社更生法」だろうが「倒産」だろうがあまり違いはありません。
「何かが起こった」ことに間違いは無いのですから。
ここで経営者は一つの失敗を犯したと思います。
倒産では無い!!と声高に叫ぶ前に、
「お客様にはご心配をおかけして申し訳ございません。」
とまず謝る姿勢が必要だったはずです。
なぜそれができなかったのでしょうか?
その答えが、
「体面」
だと思うのです。
これまでの順調な経営を思えば現実が受け入れられないのだと思います。
「体面」
が邪魔をして。
ここで、なぜ申し立て者が「福井銀行」だったかを想像してみましょう。
前述の通り、申し立てにいたった大きな原因は10年にも及ぶ不正経理です。
簡単にいえば「粉飾決算」を恒常的に行っていたのでしょう。
当然粉飾ですから、いずれはニッチもサッチもいかなくなってしまいます。
それがこの10月末に起ってしまうことになったようです。
9月に銀行はこの事実を知ったと言うことですから、相当短期での決断です。
そのまま生きながらえさせるのであれば、つなぎ融資などで延命させる方法もあったはずですから。
ここから先は全くの個人の想像です。
ここに至っても、
「体面」
が邪魔をしたのではないかと想像しています。
同社は最後まで銀行には内情は説明するが表沙汰にせず融資を依頼していたと考えます。
その対応に銀行側が、
「切れた」
というところが本当のところではないかと思うのです。
10年間も銀行をだましておきながら、まだ
「体面」
を気にするのか!!と。
最後まで会社更生法などは経営者側は拒否していたのではないかと思います。
そこで、銀行側の決断は債権者として変わって申し立てること。
それがこの異例の申請の裏側なのでしょう。
「体面」
は時として大事なものを失ってしまいます。
それがなんなのか企業は常に考えていなければいけないことなのだと思うのです。
それが、
「信用」
であり、
「信頼」
であることを企業は決して忘れては行けないと思うのです。
感謝より先に体面や見栄や自己顕示欲が出てくる企業はいずれ滅びるのでしょう。
表面的に感謝を装ってみても、内面に潜むそれらはいずれ表に出てくるのでしょう。
それは企業に限ったことではなく、人にしても同じこと。
ただ、一企業の「会社更生法」を超えて、自分自身を見つめなおすニュースでもありました。
BBSは今でも私にとっては憧れのブランドです。
これからもずっと高い技術の誇れる製品を供給し続けてくれることを期待しています。
だからこそ、厳しいことも申し上げましたが今一度何がおかしかったのかを
見直していただきたいと思います。
「何も見直すことはない。」
とおっしゃることがあれば、ここに書いたことの全てが私の妄想であることを祈ります。
そうすれば、私一個人が間違っていたのであって、
日本の多くの、いや大多数の企業が何も間違っていないと言うことになりますから。
その方がまだ救われるのかも知れませんが。