2013年08月09日
JTSというエンジン
JTS(Jet Thrust Stoichiometric)ジェット・スラスト・ストイキオメトリック
というエンジン。
最高出力 166ps(122kW)/6400rpm
最大トルク 21.0kg・m(206N・m)/3250rpm
種類 直列4気筒DOHC16バルブ
総排気量 1969cc
内径×行程 83.0mm×91.0mm
圧縮比 11.5
この記事は、2.0JTSエンジンのコンディションについてのレポートです。
かなり長くなりますので、2部に分けましたので興味の無い方はスルーしてください。
また、間違いに対するご意見等は大歓迎なのでよろしくお願いします。
項 目
1.不具合の原因(直噴エンジンのメリットとデメリット)
2.JTSのネーミングの意味(三菱のGDIエンジンなのか・・・)
3.各ショップの記事(半ば脅しとも思える、一部の症例を大々的にアピール)
4.手軽に出来る普段のチェック(負圧計・空燃比計の活用でわかる)
5.不具合の対処方法(エンジンOILのチェックと洗浄剤)
1.不具合の原因
はじめに直噴エンジンの構造です
GDIエンジンに代表されるリーンバーンエンジンでは、シリンダー内の気流を利用して、
点火プラグ付近に燃焼可能な混合比の層(成層燃焼)を形成することで、シリンダー内
全体としては『空燃比20:1から55:1』※1の超リーンバーンを可能にしています。
【メリットとしては、出力の向上と低燃費】
ポート噴射エンジン従来型ではノッキングの問題から やたら圧縮比を上げられないが、
直噴は燃料噴射を行うまでは空気のみを圧縮するため、ノッキングをそれ程気にせず
圧縮比を上げることが可能。
さらに、直噴は燃料噴射の際に発生する気化熱を利用できるので、筒内温度がポート
噴射に比べ下げやすいというメリットもある。(インジェクターで噴射された燃料が気化
する時に周りの熱を奪い筒内の温度を下げる)その結果、圧縮比を高め低回転域でも
必要十分なトルクを得ることが出来るため、低燃費と出力向上の両立が実現可能と
なります。
アルファロメオ 各グレードの比較
JTSの面白さは鼻先の軽さと、この低回転で最大トルクが発揮される加速感!
【デメリットは、高コストと煤の堆積】
高コスト
高温・高圧に耐える、噴霧を最適化した専用のインジェクターや高圧の噴射ポンプ、
特殊な形状(冠面がくぼんだ)のピストンなどを必要とする為、エンジン全体のコスト
が上がる。
燃焼室内における煤の堆積
ポート噴射式エンジンに比べて、シリンダー内にガソリンの燃えカスが溜まることが多い。
空燃比『40:1』※2を超える超希薄燃焼ではすすが発生しやすく、その煤がインジェクタ
ーノズルに付着すると適正な燃料噴射ができなくなることが主な原因である。
さらに、ポート噴射式に比べ燃料噴射のコントロールがシビアで、燃料噴射量が狂うと
更に煤が発生しやすくなるという悪循環が発生してしまう。
吸気系における煤の堆積
吸気側への燃焼ガスの吹き返し(主にオーバーラップ時に発生)により、マニホールド
~吸気バルブ間にカーボンが堆積する。
通常のポート噴射エンジンでは、オーバーラップによる吹き返しなどでマニホールド~
吸気バルブ間に堆積したカーボンを、噴射された燃料が洗い流し、混合気と一緒に吸
い込み燃焼する。
しかし、直噴エンジンの吸気バルブは空気しか通らない為、マニホールドからバルブま
での間で付着した汚れが落ちることは基本的にない。
燃料添加剤やハイオクガソリンで謳われる吸気マニホールド~バルブ間の洗浄作用も、
直噴エンジンであるが故に意味がない。
この為吸気系にカーボンがより堆積し易く、渦流生成用バルブにカーボンが付着してバ
ルブが故障し、必要な渦流が発生しないため燃料がうまく空気と混合せず異常燃焼を
起こしたり、点火プラグが燻るなどしてエンジン不調に陥る事例もある。
また、バルブとバルブシートの当たりが悪くなり、極端なパワーダウンなど、燃焼室が密
閉されないことで発生するトラブルも起こりうる。
燃焼安定性の悪化
燃焼室内に煤が付着すると燃料の気化速度が狂ってしまう。
主な症状としてはエンスト、アイドリングの不安定、異常な黒煙、不安定なエンジン音、
出力の低下、燃費の悪下などである。
新型のエンジンでは、ピストントップと燃焼室形状の最適化や、インジェクターの改良、
フィードバック制御の高度化などによりそれらの症状が出ることは少なくなった。
メンテナンス性
更にこの煤の一部は燃焼室内に残留してエンジンOILによって回収されるためオイル
汚れが激しいので、ポート噴射式に比べてオイル交換サイクルを短くしたほうがよい。
(俗に3,000km~4,000kmを目安としている)
私はJTSに箱替えした当初、有名なショップでOILは直ぐ汚れるので高価なOILは必
要ないと言われた事を今でも忘れない。
実際、GDIエンジンが登場した当時は現在のオイルほど清浄分散剤(すすなどを微粒
化させる)の添加量がなかったために、主にこの配合量を増やした「GDIエンジン専用
オイル」なるものが三菱のGDI車用純正オイルとして使用されていた。
アルファロメオのJTSにも指定OILはセレニアレーシング10w60になっています。
現在一般的に販売されている規格のオイル(SJ以上)ではどのオイルを使ってもほとん
ど問題はないとも言われているが、交換サイクルを短めにしたほうが良いことに変わりは
ないです。
ノイズ
ガソリン直噴エンジンに欠かせない高圧インジェクターが、ノイズを発生してしまう。
ガソリンエンジンの場合、元来騒音が少なく、その音が目立ってしまう。車室内ではほと
んど聞こえないが、車外で聞くと「カタカタ、カチカチ」という耳につく音となる。エンジンに
よってはディーゼルエンジンに近い音が聞こえる場合がある。
排気ガス(黒煙)悪化
筒内で混合気を作り出す関係で、ポート噴射エンジン以上に霧化が難しく、結果として
高圧多孔インジェクターで強制的に霧化させている。
ポート噴射エンジンでは、燃料は一度ポート壁面に付着し時間をかけて気化がされるが、
直噴エンジンでは燃料噴射後に気化する時間が十分に無い為、黒煙発生の素となる。
2.JTSのネーミングの意味
『イタ雑の森慶太』氏の記事に面白いのがあったので一部を抜粋し、要約しました。
http://www.italiazakka.co.jp/bookshelf/feelit/17/17.html
リーンバーンにAlfa、意地のスパイス
ナニ?あのエンジン。JTS、ヨカッタですよ。何年か前にフィアットが三菱GDIの技術をい
ただくという話があったのですごく心配していたけど、出てみたらさすがイタリア人という
かね。直噴は直噴でも、リーンバーン=希薄燃焼になるのは1200rpm以下。
つまり実質アイドリング付近だけだから被害なし。スカスカなトルクとか、そのスカスカな
トルクが突然太くなったときのイヤな段つきとか、そういうのを心配しなくていい。だいたい、
JTSのSってストイキオメトリー、つまり理論空燃比(燃焼効率が一番良いとされる空気と
燃料の割合)のSだから。空気とガソリンの割合が、質量比で14.7対1とか。
要するに、「リーンバーンでヘンなことにはなってないから心配するな」っていうメッセージ
をちゃんとエンジン名に込めている。
リーンバーンはアイドリング燃費の低減にだけ使って、でもって走っているときはストイキ
燃焼でちゃんとトルクを出しつつ排ガス浄化も理想的にやると。
やっぱ、わかってるねー。
という内容が書かれていたので、少し気が楽になりました。
一方、GDIなどのリーンバーンエンジンは、※1にもある様に空燃比『20:1~55:1』という
超リーンバーンになるようですが、JTSの場合では、空燃比計で測ってもアイドリング中
で23前後、エンブレ時に29.4というのが最大でした。(この数値はあくまでも100,000km
近く走行している私の車での話なので みなさんのJTSだともっと良い数字になるのでは
思います)
また、※2の記載でも『40:1』を超える超希薄燃焼では煤が発生しやすく とある様にJTS
ではそこまでの希薄燃焼にはなっていませんのでGDIエンジンとは違うことが分かります。
3.各ショップの記事
直噴エンジンの事を調べていて私が感じたショップの記事。
↓↓
直噴エンジン=燃えかす(カーボン)が出やすくエンジン内部が直ぐ汚れる。
だからエンジンOILは直ぐに黒くなるから安物でいい。マフラーの出口も真っ黒け!、
とどのつまりは、吸気ポートの汚れでエアの吸い込みが悪くなって吸気弁に汚れが堆
積して密閉性が悪くなるなど、エンジンをオーバーホールしてみると見るも無残な光景
であると、半ば脅しとも思える一部の症例を大々的に紹介しているショップの多い事か。
だったら物申すけど、全てのJTSエンジンの末路がこんな風になるの?
って感じたオーナーさんは多いと思います。
私もその中の一人でした。
そこで、今回こんな風に調べて多少なりとも知識を得ようと考えた次第です。
というのも、
随分前に とあるショップで「イ〇っと」した事がありまして、仕舞いには早めにオーバー
ホールをした方が良いと勧められ帰ってきました。
作業終了後にエンジン掛けたら、へんな異音がしたので、(以前から症状は出ていて気
付かなかっただけかもしれませんが)、「これは、なんですかね?」
って尋ねました。(作業風景を見ていてあまり いい気持ちがしなかったもので)
すると
その説明が、ブローバイから戻ってくる空気が汚れていて(OILなどで真っ黒)で弁が汚
れて完全に閉じずに、空気が洩れているとの事。
(確かに空気が洩れている音がしました)
この時に使っていたエンジンOILが私のお気に入りの****5W40でした。
すると、そんな柔らかいOILだとJTSはダメだよ。
だからこうなるの! みたいな説明をされ、「ここでこんな状態ならエンジン内はかなり酷く
なっているだろう」と言われたのでマジで↑の様なショップの記事を頭に浮かべましたよ。
(オーバーホールっていくらなの…)
でもですよ!
これまで、点滴やエンジン洗浄剤をまめにやったり、エンジンぶん回したり、OILも
3,000kmでは交換して気を使ってメンテしていた筈でした。
ただ、不思議な事に純正指定の****10W60のOILよりも消費が少なく吹け上がりが
良いので****5W40は使っていましたが、アイドリングも安定していて、トルクもしっか
り出ていて、吹け上がりも最高だったのですよ。
このOILが原因なのかなと、マジで凹みましたね!
感覚的には良いと思っても実際はダメなのか、
あh 私は、
大学で物理学の専攻だったせいか目に見える結果や説明をされるとすぐに信じちゃう
おバカなんですよね!(笑)!
ところがその後、 随分してからいつも お世話になっているディーラーでセンサー類の交
換修理をした際に、サービススタッフにこの症状を聞いて驚きました!!!
なんと、
異音がしている個所は、ブローバイでも何でもなくて、ブレーキに関係がある場所だと分
かりました。
放っておくのは よろしくないですが、今すぐどうこうという場所でもなく、OILが付着して
いて当然です。という解答でした。
はぁ?なんじゃそりゃ!
いうまでもなく、そのショップには二度と行っていません。
後半へつづく
次回は、手軽にできる普段のチェックから
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Posted at
2013/08/09 04:46:58
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