ゴールデンウィークのこと。
タイトルの通りの出来事だった。
その日は,5/13のブログにも書かせてもらったが,1時間足らずだけど,息子と一緒に熊野川を漕ぎ下るという,「ついにこの日が来た!」という達成感の,その日の晩のことだった。
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そこは熊野川の,それこそそこらじゅうにあるキャンプ適地・・・・広大な河原,きれいな水,人家から離れた隔絶感,明かりもなく星がよく見え,さらに車の乗り入れもできる・・・・の中でも,自分たちがキャンプをやり始めてから15年来足繁く通っている河原だ。
見渡す限り人工物がなく,空がまあるく見える。
誰にも気兼ねすることなく,自由を感じることのできる場所だ。
これまで,鮎のシーズン中に,地元の漁師だろうか,わなを仕掛けるために通りがかる人をごくたまに見かける程度で,秋に鹿と出くわすことの方が多いほどの無人地帯だ。
その晩,高揚した気分で,息子と二人で幾分大きな焚き火を上げ(?)つつ,食事などもあらかた終わった頃,薄暗がりの中,遠くから明るいヘッドライトを点した人が近づいてくるのが見えた。
特にやましいことをしているわけでもないのだが,こういうシチュエーションで人が「あっちから会いに来る」ということはあんまりない。しかもその光跡からすると,それは真っ直ぐにこちらへやってくるようなので,嫌な感じがしていた。
近づくにつれて分かったのは,それが犬連れの男性で,こざっぱりと都会的でカラフルな衣装をまとった,なんだかこのエリアには似つかわしくない,あたかも
東京からやってきて,店をやってますー,
雑貨屋兼夜はスナックなのでー
一度お試しくださ~い♡
みたいな風貌の男性だった。
その人曰く,
自分は「そこの住民」なのだが,今日昼間,ここらで焚き火をしていた人がいて,消防署がやってきたりと,ちょっとした騒ぎがあった。なので,ここでキャンプしてるんなら念のため,119番に電話して,
許可を取っておくとよいと思いますよ。
だそうである。
それには自分にも思い当たることがあって,明るいうちにこの河原のずっと岸(というか中州にある林側)にごく近い所に,大きな焚き火痕があったのだ。燃えかすの中には真っ黒に焼け焦げた缶が残されており,
ああ,またやなもんを見ちまったな,
しかもまあなんでこんなに広い河原を選んどきながら,
こんな端っこの,林に近いとこでやったんだろう,
しょーもないなぁ,
などと気になっていたのだった。
おそらくそいつが原因で,
誰かが通報→消防車出動→地元民ピリピリ のような図式ではないかと思ったのだ。
それで,「はい,気をつけます。川からも林からもこんだけ(100メートルは)離れてますし,防火用水もバケツに汲んであります,風向きも計算してます。
それにしてもここはいい河原ですね,うらやましい・・・・」などと答えた。
彼もそれを聞いて去って行った。
彼との話の中で,「焚き火台を使うんならまだしも」のような言葉があったりとか(なんでこのシチュエーションで台がいる?),「住民だ」とのたまうその彼と,これまでほとんど顔を合わせたことがないなあなどと考えていたら,彼は少し離れたあたりで,川をバックにわざわざ犬の写真をデジ一でストロボ撮影し,どうしてただの犬の散歩で,歩きにくい河原を,デジタル一眼を持って、こんなに大回りしてやってきたのかという不自然さを取り繕うように,広大な河原を見えなくなるまで去って行った。
きっと今夜あたり,
「○○○ワンコの熊野川生活♡」みたいなタイトルで,インスタかフェイスブックあたりにアップするんだろう。テーマは「最近のキャンプのマナーについて,みなさん考えてみましょう~」とか・・・・
あるいは、何かやましい所があったら、証拠写真でも押さえようか
みたいな勢いで来たのか。。。
彼の後ろ姿を見送りつつ,息子と話す。
(父) 「ねぇ,ここまで消防車これたんかなあ?オフロードのなんて,あるのかな?」
(子) 「しょうぼうしゃがスタックしたら,だれがきゅうじょにくるんだろね。」
(父) 「水は川から取るのかな?」
(子) 「サイレンとかもならしたのかな?」
河原の道をここまで来る道は,レガシィだから安心して来られるくらいの悪路だ。そこを,はしご車などが大挙してきたらどうなるか,想像してしまった。
そして翌日,こぢんまりと朝の焚き火をしながら,のーんびり朝飯を食べていると,本当に消防署員がやってきた。きっと昨晩の彼が通報したのだろう。ただし,はしご車ではなく,グレーのパジェロみたいな四駆に男性が二人,一人は車から降りて来さえしなかったが,話しかけてきたのはえらく低姿勢な「田舎のあんちゃん」というふうだった。
全くご苦労様なことである。今日だってGWの最中なのに。
こんなところでキャンプする奴がいるからだ。
仕事とはいえ申し訳ない。
でもそれでやっと,ことの次第が明らかになった。
思った通り,昨日の昼,乾燥注意報の出ているさ中,林に隣接するところで盛大に焚き火している人がいて,しかもかなり風も出ていたにもかかわらず,恐らく日陰を選んだらそうなったのだと思うが,知らないというのは恐ろしいことで,それはもうやばい状態だったらしい。
そこへ,川を行き来するジェット船が通りかかり,お客さんが発見,危ないと言ってちょっと騒ぎ,そしたらその船の船長がたまたま地元の消防団員だったので,通報→出動,ということになったらしい。
その日は全国ニュースでもあちこちで山火事が報じられている,まさにそんな日だったのだ。
そんな騒ぎが日中起きたとほぼ同じ地点で,知らずに自分たちが,またまた焚き火をしていたわけである。それで,おしゃれな犬連れが出動した,ということだろう。
所員さんは,自分たちのセッティングを確認して,一応ちゃんとしている事を理解して下さったようだった。
自分も,日本のいろんな所で見た「焚火事情」について少し話し,彼は普通に去って行った。
キャンプや焚火に決まったスタイルと言うものはなく,それ自体は自由であっていいと思う。
その中でも,自分は「自由になるためのキャンプ」が好きだ。
思いっきり叫ぼうが石を投げようが,川で流れようが誰にも気兼ねすることのない,爽快感を味わう,だからこういう所へ来るのだ。
石垣島の「ちゅらねしあ」の主,八幡暁さんという冒険家に連れられてキャンプをした時には,実に多くのことを学んだ。無駄なくスマートで静か,道具はあえて少ない。タープさえ張らず,燃料の薪も数本しか使わず,おかずは現地(海!)調達。そんな最小限のキャンプでは,神経が研ぎ澄まされ,いつもは聴こえない音が気配として感じられ,星がより近くに感じられた。
そこまで本格派ではなく,また「アースインパクト」みたいなこざかしい環境保全主義をふりかざすわけでなくとも,
大人だったら,ごく普通に「人の迷惑」を想像する心の余裕というものは,必要だと思う。
「無邪気」と「無知・無神経」とは違うのだ。
さて,あの河原はその後どうなったか。あの日,河原を後にするときは,いつもより入念に,痕跡を残さないよう気を付けていったが,心配である。
次にあの場所へ行ったとき,もしも,河原への進入口に「ここでキャンプされる方は,○○の許可をとってから・・・・・」みたいな立て看が立っていたりしたら・・・・
否,明確に「○○町内,キャンプ場以外でのキャンプ禁止」という川はいくつもある。多くは水源として利用されている小河川だ。
いつかこんな大河の広大な河川敷が「焚き火禁止」「車の乗り入れ禁止」「キャンプ禁止」「釣り禁止」「川遊び禁止」のようになっていき,しかも,川との有意義な関わり方を知らない,ただ近くに住んでいるというだけで,その川の価値や魅力のほんの上っ面しか知らないような「住民」が,こんな別天地を「飼い殺し」にしてしまう,そんな日が来てしまうのかも知れない。
「キャンプとはキャンプ場でするもの」と思い込んでいる人の実に多い,何かというと「責任は誰が取るんだ」を口にする,わけ知らずの日本のアウトドア環境である。
やりかねない。
締めくくりがうまくできないが,なんとなくそんな感じで,この記念すべき幕営に思わぬケチがついたという,つまらなーい話だった。
笑い話になってくれればいいのだがな,と思う。
追伸:2020.3/22
このブログを書いた頃と今とでは随分,アウトドアにまつわる状況や「質」が変わってきている気がします。アクセスが(比較的に)多い理由も分かってきましたが,ネットの「負」の部分が散見されるようになってきていますので,近々削除するかもしれません。
追伸:2020.8.16
おそれていたことが現実になりました。
字体からして,この方からのお達しでしょう。
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隠れている部分は「日本一ショボい土産物屋」です。
いろいろよからぬキャンパーがいらんことをしていったことに地元が怒った,ということなんでしょう。でも,見方を変えれば,
この河原は「誰のもの」なんでしょう?縄張りの主張?レジャー客じゃなく,釣り人でもなく,バーベキューでもなく「キャンプだけ」を禁止というのは?
かつてさだまさしまで呼んでコンサートを行った河原です。
ここをどうしたかったんでしょう?
人を呼びたいのか,遠ざけたいのか?
そしてこの協会さんたちに聞いてみたい。
あなたたちはカヤックをしますか?川を利した遊びの素晴らしさを
どこまで知ってらっしゃいますか?と・・・・
他に方法はなかったんですか?と!!