11月、暮れもおしせまった会社からの帰り道。達成感もなくもやもやした気分のまま、車のシフトノブを無意識に操作する。かくれんぼは終わりみんな大人になってそれぞれの家に帰っていった。がんばれば幸せになれると勝手に思っていた。それは間違いではないけれど、どんなところにも落とし穴はある。そして這い上がってきたころには、もう誰もいない。僕に何ができるだろうと考え、数えては消してゆく。一人は怖くない。ただ自分に捨てられるのが怖い。春まではがんばってみよう。カーステレオは勝手に歌っている。僕は聞いていない。僕の乗った車はほぼ自動的に家にたどりついていた。