埼玉県坂戸市で2001年、大学生だった正林幸絵(まさばやし・さちえ)さん(当時19歳)が酒酔い運転の車にひき逃げされ死亡した事件で、遺族が、運転手の元会社員(37)(危険運転致死傷罪などで懲役7年確定)と、運転前に一緒に飲酒した同僚(33)などを相手取り、計約8100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が28日、東京地裁であった。
佐久間邦夫裁判長は、同僚についても「深酔い状態にあることを知りながら、運転を止めなかった責任がある」と賠償責任を認め、元会社員と同僚、車の所有者だった勤務先の会社に、計約5800万円を支払うよう命じた。
原告代理人によると、飲酒運転による事故で同乗者の責任を認めた判例はあるが、直前まで一緒に飲酒した者の責任を認めた判決はほとんど例がないという。
判決によると、元会社員は01年12月28日夜から29日未明にかけ、同僚らと計3店で飲酒した後、駐車場で同僚と別れ、会社の車で帰宅する途中に正林さんら3人をはねて逃走した。正林さんと女子短大生(当時20歳)の2人が死亡し、もう1人が重傷を負った。
訴訟では、元会社員と勤務先の会社は責任を認めたが、同僚は「法的責任はない」と主張した。この日の判決は、「正常な運転ができないほど飲酒を勧めた者には、運転を制止する義務がある」とした上で、同僚について、「長時間にわたり一緒に飲酒しており、飲酒を勧めたのと同一視できる」と指摘。「深酔い状態で運転すると分かっていたのに、元会社員を駐車場に残して帰宅したのは、飲酒運転をほう助したと言える」と、結論付けた。
原告側は、元会社員の妻についても、「夫が飲酒運転の常習者で、酒を飲んで帰ると知っていた」として賠償を求めたが、判決は、「帰宅途中の事故を回避させる方策はなかった」として、認めなかった。
(2006年7月28日21時16分 読売新聞)
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