
2025年をなんとか迎えられました。また一つ年をとり健康寿命が短くなるわけですが、身体もケアしながらなんとかDucatiを楽しんでいこうと考えております。
さて、昨年試乗したオートバイや、試乗が動画等で提供されているオートバイのインプレを見ると、気になる傾向がある。それは「乗りやすい」と言うこと。果たしてオートバイは乗りやすい方向に進化してゆくべきなのか?!
乗りやすさ、とは何だろう。むろん様々な技術要素の着地点の総合でこの言葉が生まれるのではあるが、私は以下の点が大きいのではないかと考える。主にエンジン特性だ。
①エンジン1回転の特性にトルク脈動がなく、スロットルを開けただけスムースに出力が出てくること。
②振動が極力抑えられていること。
③エンジンの低回転から高回転まで1つのギアでの守備範囲が広いこと。
④操舵や体重移動に対する車体の反応がリニアで予測をしやすい。
⑤ブレーキの絶対的な制動力と制御性が良いこと。
⑥操作が簡単で、面倒がないこと。
我が国では未だに直列4気筒(IL4)信者のような人がいる。好みにケチをつける気はないが自分は1気筒当たりの容量が大きければ大きいほど面白いという考えなので例えば250ccのIL4なんかはふけ上りのかったるさやアクセル小開度時のギクシャクの大きさが許容できない。さらに大型クラスになると今度はクランクマスも大きくバンクがドッコラショとなる。ただIL4は一般的に乗りやすいと言われる。それはそうだ、気筒容積が小さいので1燃焼での発生トルクが小さいうえにフライホイールマスが大きいのでトルク変動はさらに小さくなり御しやすく感じる。1次振動もない。ただ巨大な2次振動はバランサーで抑えるしかないし、スロットル開閉でのフリクションによるギクシャク感は消し難い。
正直言うと私はIL4には飽きてしまった。
話がのっけから逸脱した。振動などのことだ、私が言いたいのは。
たとえばGSX-8Rのエンジンは新開発のパラ2で、スズキとしては廉価版エントリースポーツと言う位置づけ。上位にはIL4のモデルを持つからだ。これ、270°クランクの設計ながら"新開発"バランサーにより実用域での振動がほとんどないそうだ。また、カワサキの650ccも振動が同じく小さい。これは実際に試乗したのでその通りだ。またW800はあのスタイルから想像もつかないが、異様と表現してよいほどにスムーズかつ振動がない。これらオートバイ、皆さん乗りやすい乗りやすいとおっしゃる。
私が気になるのは、この低振動・無振動・ウルトラスムーズなオートバイが果たして良いものなのか?ということ。この特性はもうお気づきの方もいるかもしれないが電気モーターを使えば完璧に実現できる。サウンド?はマツダ車みたいにスピーカーから出せばよい(笑)。
しかし、それでは内燃機関を操る楽しみというもっとも根源的なものを置き去りにしてしまうことにならないか。本来内燃機関は乱暴で非線形でうるさくて振動もひどいもの。だが大昔から我々の先輩はこのエンジンを掌中とし御していくことに喜びを感じていたのだ。だから実用車以外の多種多様な自動車・2輪車が世に出てきた。
モビリティの実用面だけ考えれば4輪車にかなうわけがなく、2輪車市場は急速かつ明確にある程度のオトナが趣味嗜好で購入する楽しみの道具になっている。趣味のものなんだから少しハゴタエがあるモデルのほうが面白いんじゃないか?低速でギアが合わずエンジンが文句を言うならシフトダウンして正確に車速に合わせるよう操ればいいし振動で手がしびれれば休息をとって景色を眺めればよい。クラッチ操作に疲れても同じことだ、第一ツーリングなんて走る合間の休息が目的になっているようなものだ。
趣味の道具は面倒くさい方が絶対的にいい。プリウスは趣味車足り得ないが、MTの軽トラはそれなりの楽しみがある。あんがい軽トラは味わい深い。
だからメーカーのマーケッターたちよ、ライダーから楽しみを奪わないでほしいのだ。スムースなエンジン、超低速から引っ張っても何も文句を言わない特性、勝手に変速するミッション、何の振動もなく音でごまかす偽の鼓動感、こういったものはユーザフレンドリーと言いつつその実内燃機関を操るという根源的な楽しみをライダーから奪い、バイク文化を蝕みいつか破壊してしまう危険なものだとさえ思うのだ。
ヤマハのMT09に試乗した時、その音と振動に好感を持った。ざらざらとした振動を残し、吠えるが決してうるさくない吸気音の作りこみなど、さすが楽器会社をDNAに持つ組織が作ったものだ、と感じた。MT09はスタイルが好きではないが、XSRは購入したいモデルだ。
一方トライアンフ765の試乗では、エンジンへの感慨は何もなかった。爆発間隔なども違うが、こうも差が出るものかと思った。
(私は楽器の方のYに十数年勤務したがあそこの企業文化は独特。一言でいうと「脳筋が浮く職場」。半分趣味で楽しみながら自分の好きなものを緻密に作りこんでいくことが好きな連中が多い。2輪のYも話は聞いていたがやはり似た文化)
ドゥカティのテスタストレッタ系のエンジンも実に面白い。なかなかいうことを聞かないが、きちっと操れた時の楽しさは格別。弾けるようなエンジンだ。
逆に、もっともっと「感性・官能」に訴えかけるオートバイづくりはできないものだろうか。奇抜だったりメッキピカピカなどの見た目の美しさも結構だが、振動や癖までもを作りこんだらそれはきっと熱狂的なファンがつくと思うのだがどうだろうか。逆にそれができないメーカーは早晩死に絶えるように思う。むろんそれだけではダメなのがHDを見ても悩ましいところではあるが。
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オートバイ | クルマ
Posted at
2025/01/03 14:21:36