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2017年02月05日

SKYACTIV-D はどうやって煤(スス)を減らしたのか

以前にブログで「SKYACTIV-D は煤(スス)の発生が多いのか」という記事を書いたのですが、もう少しシツコク書こうかと思います。

まあ、なんでしつこく書くかというと、技術的に詳しいそぶりで「SKYACTIV-D は多量のEGR(排気再循環)をしているからNOxは抑えられているが、その分、煤(黒煙)の発生が多い」とかいう知ったかぶり記事を見かけて、辟易としているからです。

SKYACTIV-G の発売が 2011 年頃、インタビュー記事によると 2006〜2007年頃から本格的に始まった様なのですが、先行開発(要素技術開発)はそれ以前から行われていて、NEDO(国立研究開発法人:新エネルギー・産業技術総合開発機構)広島大学共同研究を行なっていました。

NEDO フォーラムでも NEDO での研究が SKYACTIV として結実したという発表はされています。

 ― 社会を変えたNEDOの技術 ― クリーンディーゼルエンジン Mazda SKYACTIV-D の開発

ここでの研究開発成果は、マツダで更に改良され、下記の様な形で製品化にも役立っています。



まあ、具体的に何をやっていたかは資料に目を通していただくとして、実際の研究開発体制としては、マツダと広島大学で分担して行なっていたとのこと。



上記資料(プレゼンテーション)の発表者である志茂大輔さんは、広島大学で博士論文を2013年11月に発表しています。

 混合気濃度と温度分布および着火と熱発生率の制御によるディーゼル燃焼改善に関する研究

で、紹介したいのはこの部分です。



左から Case 1、Case 1'、Case 2、Case 3 と並んでいますが、少し詳しく説明します。

【Case 1:普通のディーゼルエンジン】



このグラフから、ディーゼルエンジンでの燃焼と、それによってどんな排気ガスが出てくるか、を読み取ることができます。。

縦軸は当量比と呼ばれるもので、簡単に言えばピストン内の酸素の量(燃料と酸素の比率、数字が大きいほど酸素が少なくなる)だと思ってください。

横軸は燃焼温度です。

重要なのは、

 赤い「Soot」と書かれている部分で燃焼すると、煤が出やすい
 水色の「CO/HC」と書かれている部分で燃焼すると、一酸化炭素や未燃焼ガスが出やすい
 黄色の「NO」と書かれている部分で燃焼すると、NOx が出やすい
 緑の「Ideal Oxidation」と書かれている部分で燃焼すると、正常な燃焼となる

ということです

この「普通のディーゼルエンジン」のグラフからは、過剰な酸素によって、黄色い領域での燃焼が多い、つまり多量の NOx が発生するということがわかります。
しかし過剰な酸素により燃料はよく燃えますので、煤の発生は比較的抑えられています。
(少し赤い領域にかかっているので、全く無い訳ではありませんが)

【Case 1':普通のディーゼルエンジン+多量のEGR】



多量のEGR(排気再循環)をかけることで、酸素を減らして燃焼温度を下げています。
燃焼温度が下がっているので、黄色い領域にかからない様になり、NOx の排出はほとんど無くなっています。
しかし、酸素を減らしたため燃料の濃い所での燃焼が増え、赤い領域(当量比で最大3付近)に大きく被っているため、多量の煤が発生しています。

ここまでが一般的に言う「NOx と 煤の発生は相反する、片方を減らすと片方が増える」の理由です。

【Case 2:PCCI/LTC 予混合型燃焼+極めて多量のEGR】



予混合型ディーゼル燃焼(Premixed Charge Compression Ignition) と、極めて多量のEGR(Low Temperature Combustion)の組み合わせです。

極めて大量の EGR によって酸素量を更に減らし、着火前に燃料と酸素を良く混ぜて、燃料の濃い部分での燃焼を減らしています。

結果としては NOx を減らし、更に Soot(煤)の発生も減らしました。素晴らしいですね。
しかし、今度は燃焼温度が下がり過ぎ、CO/HC が大幅に増加してしまっています。

【Case 3:ITIC-PCI 着火時期制御+予混合型燃焼】



Case 2 よりも短い予混合時間、(EGRによる)適切な酸素量、吸気温度の最適化などにより、NOx の発生量は減らし、同時に煤の発生も減らし、更に CO/HC の発生も Case 2 よりも低減しています。

つまり、CO/HC の増加量を抑え、NOx と煤の発生を同時に減らした、ということです。



更に、前述の NEDO の資料には、この NEDO プロジェクトでの成果(ITIC-PCI 予混合型燃焼)に、マツダが開発した「多噴孔ノズル+高性能インジェクタ」を組み合わせて、CO/HC を減らした、という発表資料もあります。



加えて、SKYACTIV-D 1.5 に搭載された LP/HP EGR も、 NOx と煤を共に低減し、そして CO/HC の低減に役立っています。



そして最後に低圧縮化です。


(出典:SKYACTIV 開発と今後の展望

左側に概念図、右側にグラフが載っています。
グラフの縦軸は煤(Smoke)と NOx、横軸は着火タイミングです。
従来モデル(MZR-CD だと思われます)の煤の発生量は、着火タイミングによって大きく増加していますが、SKYACTIV-D では煤(Smoke)の発生量と NOx の発生量の両方が低減されているのが読み取れます。

前回は「本当に煤が多かったら EGR再生の頻度が従来型ディーゼルエンジンよりも増えるはず」という演繹的推論から、煤の過剰発生を否定しましたが、今回は「どうやってNOxと煤を同時に減らしたか」という研究成果を紹介しました。

最後に。
いや、うちの SKYACTIV-D は DPF再生間隔が短いよ、という方がいたら、個別の問題ですので、ディーラーに相談することをお勧めします。
故障や不調を否定するつもりはないですし、燃料噴射量学習で改善したという話も聞きますので。
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Posted at 2017/02/05 21:32:43

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