MR-Sの6速ミッション換装についての覚え書き
目的 |
修理・故障・メンテナンス |
作業 |
DIY |
難易度 |
初級 |
作業時間 |
30分以内 |
1
MR-SへのC60換装について、調べていくうちに微妙な互換性の違いが分かってきたので備忘録的に残しておきます。
まず基本的なおさらいとして、トヨタのマニュアルミッションの形式について。トヨタの横置きミッションでこの時代は大まかにC系列、E系列に分かれます。MR2だとAW11時代ではNAの4A-GにC52、S/C付きの4A-GZにはE51と分けて搭載されていました。
C系列は軽くコンパクトな所からAE8x以降のカローラ系やスターレットに始まり、MR-Sと同年代ではヴィッツやセリカにも搭載されていました。
MR-Sが発売された1999年当初、搭載されていたのはC56と言われる5速ミッションです。同じ形式で1ZZ搭載のZZT230セリカにも使われています。一方2ZZを搭載したZZT231セリカにはC60と呼ばれる、クロスレシオ化された6速ミッションが搭載されました。これは全く新しいミッションで、ギア比こそその直前に売られていたAE111カローラに積まれていたC160と一緒ですが、デフのサイズやシンクロの違いから互換性はありません。(正しくは作りは一緒だけど中身が違う)
このC60の亜種が、2002年8月のマイナーチェンジでMR-Sに搭載されたC65です。ギア比は別にクロスでも何でもなく、C56に高速巡航用の6速を加えただけという、当時ですら何のために6速化したのかサッパリ意味不明と言われた6速ミッションです。一方LOTUSの2ZZ搭載ELISE/Exigeに提供されたのはC64と呼ばれるC60直系のミッションで、こちらはC60の6速をさらにローギアード化しており、MR-SのC65とは正反対の性格をしています。
また、同じC60を搭載する車種にはZZE123等の俗にいうカローラ系(フィールダーやランクス、Will VSなど)は中身こそZZT231と一緒ですがシフトチェンジを行うベルクランクと呼ばれる部位がMR-Sと同じ位置にあり、セリカやLOTUSとは互換性がありません。
2
C系列のミッションですが、2003年の1月以前と以後でマイナーチェンジが実施されています。内容は3、4速のギア及びシンクロ、ハブスリーブの形状変更。ミッションケースのシフトコントロール部の形状変更、シフトセレクティブシャフトの長さも変わっています。ミッションケースの外観上の違いは画像の通り、2003年1月以降はシャフト貫通部に凹みが出来ています。
2002年8月のマイナーチェンジで6速化されたMR-Sもこの影響を受けており、2002年8月~2003年1月までに製造された個体はわずか半年と短い期間ではありますが、それ以降の個体とはシンクロ、シフト周りの形状が異なり互換性がありません。
なおこの凹みのあるケースですが、一部の車種は2003/1~2004にかけて、凹みの無いケースが使われている物があるようです。部品の在庫処分かわかりませんが、内部のベアリングの配置が変更されておりケースは前期、シャフトは後期みたいな作りになっています。
このおかげでMR-SへのC60換装がややこしなっており、C60ミッションを入手したら実物を確認して換装手段を考慮する必用があります。
3
これはシフトセレクティブシャフトと呼ばれる部品で、これをガチャガチャしてシフトチェンジを行う大事なパーツです。
左から、ZZE123ランクス(2004)、MR-S(2002)、ZZT231セリカ(2005)の順番に並んでいます。
MR-Sとランクスのシャフトは似た形状をしていますが、画像の通りミッションケースに入る側の長さが違います。
上のミッションケースの写真を見ると、2003年型のミッションは凹みがある分、シフトセレクティブシャフトも短くなっているのが分かると思います。一方MR-S(2002)のシャフトは突き出しが長いです。
その為、2003/1以降のMR-S用ミッションケースに2002/8のシフトセレクティブシャフトは物理的に装着出来ません。使用する為には先端を20㎜±0でカットする必要があります。
4
2003/1前後のシフトセレクティブシャフトの比較です。
左が2002/8-2003/1の全長の長いタイプ。
右が2003/1以降の全長が短いタイプです。
ストッパーリング端面からの突き出し量はそれぞれ59㎜、39㎜でした(手計測)
シフトセレクティブシャフトの部品番号は以下の通りです。
2002/8-2003/1迄 33261-17100
2003/1-以降 33261-17101
5
ミッションケースの内側からシフトセレクティブシャフトが挿入される場所の写真です。ケースには画像のようにベアリングが圧入されており、このベアリングでシフトセレクティブシャフトを保持、回転、押引きがスムーズに行えるようになっています。
画像のように2005年式のZZT231セリカと2002年式のMR-Sではベアリングの場所が変わっています。MR-Sのベアリングはセリカより15㎜程手前に来ているのが見て取れると思います。このせいで、ZZT231用ミッションの流用が少し厄介な事になっています。
理由としては2003/1以降用の短いシフトセレクティブシャフトをセリカ用のケースに使用すると、リバースに入れた際にシャフトがベアリングから抜けてしまい、最悪そこでシフトがロックしてしまう可能性があります。2002/8-2003/1用の長いシャフトではこの不具合は発生しませんでした。
よって、ZZT231セリカのC60を流用する場合短いシャフトではなく、長い方のシャフトを用意する必用があります。
もし所有するMR-SのC65がシフトセレクティブシャフトの長い物だった場合、ZZT231用C60への換装はC65のシフト周りをのまま入れ替えるだけで済むので、おそらく一番簡単なC60の流用になるかと思います。
それ以外の、MR-S前期のC56、または2003/1以降のC65からZZT231用C60へ換装する場合、C65前期用の長いシフトセレクティブシャフトの新品を用意すれば部品のニコイチで完結出来ます。ケース外側のベルクランクはC56用、内側のバネ、シフトインナーレバー等はC60から移植する形です。
6
セリカ用C60のミッションケースを外から見ると、画像のようにシフトセレクティブシャフトの入る部分が貫通しています。本来セリカではここにダストブーツが装着されていますが、内径28㎜の貫通穴ですので、適当なプラグで埋めるか、JBウエルド等でアルミ板を接着するのが良いでしょう。
また、奥に見えるベアリング部はベアリングレースがスラスト方向に10㎜程度動きます。これを動かないよう固定出来れば、後期用の短いシフトセレクティブシャフトの利用が可能になるかもしれません。が、素直に長い方のシャフトを用意した方が簡単だと思います。
7
ZZT231用C60はひとまずおくとして、ZZE系カローラ用C60を流用する場合は以前記事として書きましたが、ベルハウジングにベルクランクを取り付ける穴を追加で加工する必要があります。ここはそれほど精度を必要とする場所ではありませんので、現物合わせでどうにかなると思います。
そしてシフト周りですが、やはりカローラ系でも前期、後期で分かれています。用意したミッションのシフトセレクティブシャフトを外してみて、その長さの違いによって前期用のシャフトを使うか、後期用のシャフトを使うか選択して下さい。
恐らくですがセリカ用と違い穴が貫通していない為、後期用の短いタイプのシフトセレクティブシャフトであれば前期後期問わずに利用出来ると思います。
セリカ系とカローラ系、どちらも流用に一長一短ある感じです。MR-Sの2型の初期モデルに乗っているならセリカ用、2.5型に乗っているならカローラ用から流用、といった感じが分かりやすいかも知れません。
8
さて、ここで「新品用意するなんてやってられるか!俺は純正のシフトセレクティブシャフトを加工してMR-Sに流用するぜ!」って方に残念なお知らせです。
結論からいうと、切断しての流用は不可能です。たとえばセリカ用のシャフトは長いので、突き出しをカットすれば流用出来そうな雰囲気を醸し出しています。ですが、残念な事にベルクランク側の長さが絶望的に足りません。画像だと分かりにくいですが、シャフトのベルクランク側はMR-Sが一番長く、次に長いのはランクスですが長く見えているのはレバーの部分だけで実際は短く、セリカ用のシャフトはカバーを外せば一目瞭然で短いのがわかります。
そんな訳で5速のC56からC60への換装を目論む方は、シフトセレクティブシャフトだけは新品を用意しましょう。
9
追記
左がMR-S前期純正5速のシフトセレクティブシャフト。
右は2002年MR-S6速のシフトセレクティブシャフト。
前期5速用のシャフト、もしかして全長が2.5型用の短いシフトセレクティブシャフトと同じ?リバースレバー用の穴を開け直して6速用のレバー移植すれば、もしかしたらカローラ系C60に使えちゃったりするかもしれないけれど、仮に使えても精度が必要な場所だしロックピンの篏合でリーマー通さにゃならんしで、割に合わなそう。
[PR]Yahoo!ショッピング
入札多数の人気商品!
[PR]Yahoo!オークション
関連コンテンツ
関連整備ピックアップ
関連リンク