× 閉じる
夕暮れの峠を、ひと筋の風が駆け抜けて風のゆく先 ― 軽さの記憶と未来へいく。光は低く、空気には秋の粒が混ざりはじめていた。路面を拾うタイヤの音が、どこか懐かしいリズムで心に響く。アクセルを踏み足すと、
峠の入り口で、一瞬、息を止めた。朝の空気は薄く、路面の匂いがまだ湿っている。ハンドルの芯が、掌の奥にそっと重なる。軽いはずのNDが、この瞬間だけ、ひどく静かに感じられた。一速、二速――エンジンの回転が