オートバックス286根岸店

　伊坂幸太郎のベストセラー・ミステリー「ゴールデンスランバー」が映画化された際、物語中盤の展開を支える重要なアイテムを、ヒロイン竹内結子が購入するシーンの撮影が行われた場所。

　そのアイテムとは、2代目カローラのバッテリー。

　首相暗殺犯の濡れ衣を着せられたかつての恋人(堺雅人)の逃走を助けようと、学生時代に告白された場所である空地の放置乗用車を復活させるべく、竹内はバッテリーを購入しにこの店を訪れる。

　ところが、自動車用バッテリーに数多種類があることを知らなかったため途方に暮れてしまう。

　ふと口を突いて出てきたのが、堺と車内で歌った「♪ひとり それもいい～」の歌詞。この歌がヒントになってクルマが2代目カローラであることが判明し、竹内は交換のレクチャーを受けた上でバッテリーを購入。赤い乗用車で娘と放置乗用車のある場所へ向かうが、その後を警察の黒いセダンがピッタリマークして・・・・というシーンだ。



　40年以上前のCM曲「ちょっとうれしいカローラ」は、作詞阿久悠・作曲小林亜星という豪華な顔ぶれの作品。非売品ながらプレスされたレコードジャケットには、カローラと共にジェリー藤尾がファミリーで写っている。
　テレビCMには若かりしマイク真木と前田美波里が起用され、今思えばベーシックカーの広告とは思えない力の入れようである。

　小さくても非力でも、マイカーで家族とドライブすることが庶民の夢だった時代ならではの広告展開なのだろう。


　そんなにも古いカローラ、しかも長年放置されていた車輌が、バッテリー交換程度で復活するとは到底思えない。とは言え、そこをファンタジーと割り切ってスルーすれば、非常に見応えのある堺と竹内の演技が観客を愉しませ、物語に深く惹き込んでくれる。


　
　私にとってここは、仙台での1週間を始める場所だった。
　高速1000円制度をフル活用して、日曜深夜～月曜未明にかけて夜通し東北道を走り仙台に向かう。仙台南ICを降りて国道286号を仙台方面に進むと、仙台市街地に入る手前の広瀬川に面した「宮沢橋交差点」東側にこのオートバックスと、駐車場を共有しているロイヤルホストがある。
　オートバックスはまだ開店していないが、ロイヤルホストは朝0700時から営業している。運転で疲れた体をソファーに預け、朝食を摂ってエネルギーを補給し、コーヒーをお替りして目を覚まし、そのまま月曜日の職場に出勤する。


　「ゴールデンスランバー」の公開は私が仙台在勤中の最末期だったので、ちょうど仙台市内のいろいろな場所でロケをしていた頃にすぐ近くで仕事をしていたはずだ。
　しかし、そんな映画撮影をしているなんて情報を得ていなかったため、公開された映画を観てから、このオートバックスや別項の定禅寺通りなど、日頃利用していた場所で撮影されていたことを知った状態だった。

　それでも、公開当初に映画館で観た際はもちろん、ケーブルテレビで映画が放映される度、私が親しんだ景色を舞台に俳優が演技しているのを愉しみながら鑑賞している。
　「ゴールデンスランバー」は私にとっては永遠の「仙台土産」なのだ。




住所: 宮城県仙台市太白区根岸町6-40
電話 : 022-308-3231