• 車種別
  • パーツ
  • 整備手帳
  • ブログ
  • みんカラ+
イイね!

伊勢神宮

神々も魅せられた理想郷
2014年07月30日
 皇室の祖神を祀り、我が国の鎮守として古代より崇敬を集める神社。正式名はあくまで「神宮」であり、「伊勢神宮」の名は、他の御社と区別するための通称に過ぎない。

 伊勢神宮は交通機関が発達する以前、旅行即ち苦難そのものだった時代から、日本人の旅先としてメジャーだった場所である。
 後述する式年遷宮の年は若干ならず参拝客が膨れ上がるが、例年は年間700万人程度。それが江戸時代の推計でも400万人を超えていたとされる。絶対数では現在より少ないが、当時の人口規模が4000万人前後だった点や、公共の高速交通機関が整備される前だったこと、旅行そのものを規制していた政治的軍事的背景を考え合わせると、驚異的な数字と言える。



 伊勢神宮は大きく2つのエリアに分かれており、トラックメーカー名の由来となった五十鈴川に架かる宇治橋を渡ってお参りする「内宮」は、太陽を神格化した天照大御神を、近鉄/JR伊勢市駅に近い「外宮」は、農耕や産業をつかさどる豊受大御神を、それぞれ祀っている。

 もともと宮中にあった内宮が、伊勢へ移された理由は諸説ある。その一つが、伊勢湾の海の幸。伊勢は畿内から見て東方、日の出ずる場所にあり、気候温暖で穏やかな海からイセエビ始め穣かな恵みを得られる理想郷。国家安泰・五穀豊穣をもたらす神を祀るに、これ以上の場所はない。

 もしかしたら神々自身が、美味しい食べ物の数々に魅了されてしまったのかもしれない。
 豊受大御神を祀る「外宮」も最初からここに鎮座していたのではなく、かつて丹波に在ったとされる(こちらも諸説あり)。
 或る日、雄略天皇の夢枕に天照大御神が現れ、「一人で食事をするのは寂しい」と告げられた上で、御饌(=神々に供えられる食事)の神でもある豊受大御神を伊勢へと移すようご宣託があったと伝わっている。


 神々も一人では食べきれない程の海の恵みは、現在に生きる私たちの舌をも楽しませてくれる。
 イセエビの他には、岩牡蠣・石鯛・カワハギなどをお勧めしたい。中でもカワハギは、新鮮な肝を醤油に溶き、紅葉おろしと和えて食するのが絶品。 下関の方には申し訳ないが、超高級魚たる河豚よりも、伊勢で気軽に味わえるカワハギの方が美味しいのではと、本気で思っている。



 伊勢神宮は2013(平成25)年、「式年遷宮」のハイライトを迎えた。
 「式年遷宮」とは20年に1度社殿の全てを建替える、伊勢神宮最大のイヴェント。「内宮」「外宮」とも、既存社殿の隣に全く同じ敷地が用意されており、そこへそっくり同じ社殿を新築する。
 古い社殿は解体されるが、神様がお引越しをする「遷御」のあと暫くは、新旧両社殿が並び立つ貴重な光景を目にすることができる。


 巨大で壮麗な社殿を20年で建替えてしまうのは、個人の木造住宅ですら数十年は持つことを考えれば、一見勿体ないようにも思える。
 これは常に清らかで穢れ無きを期する、宗教的精神的な要請が大きく影響しているのは当然だが、建築の技術的な側面も無視し得ない。
 
 20年毎に更新工事を行えば、前回の更新に従事した職人がまだ現役で現場を主導してくれるだけでなく、次の更新工事を主導するであろう若い職人を現場で鍛え上げることができる。

 大量の用材(檜の大木・檜皮・和鉄の金物等々)調達に要する時間と、職人の代替わりのサイクルが一致する最大公約数が「20年」なのだ。


 同じ更新思想は、やはり20年毎に架け替え作業を行ってきた山口県岩国市の名勝・錦帯橋でも連綿と採用されている。
 
 なお旧社殿に用いられていた用材は一切無駄にされることなく、内宮入口の鳥居に転用されたり、伊勢神宮社殿の有難い部材として全国の神社に払い下げられて活用される。
 


 そして「20年」というサイクルは、参拝者の人生にとっても一つの節目となる。

 2013(平成25)年の第62回遷宮は、まだ幼き我が子と訪れた。
 その前、1993(平成5)年の第61回遷宮は、学生時代の友人とお詣りした。
 この後、2023年の第63回遷宮は、孫と参拝することになるのだろうか。
 できればその次、2043年も頑張って出掛けたいところだが、その頃の我が家および日本はどうなっていることやら。

 
 清々しい緑濃き森をバックにに、神の居所を引き継いだ真新しい社殿と、務めを終えて消え去る古い社殿が並び立つ光景だけは、永遠に残していって欲しいものだ。

 





住所: 三重県伊勢市宇治館町1
電話 : 0596-24-1111

関連リンク

イイね!0件




タグ

地図

関連情報

この記事へのコメント

コメントはありません。

プロフィール

「育児 http://cvw.jp/b/1043160/47663127/
何シテル?   04/18 19:29
 建設業界で禄を食む文系出身(経済学専攻)のプロフェッショナル・エンジニアが、愛車整備・政治経済・文化学術・スポーツそして土木施工の現場で日々記した野帳を公開し...
みんカラ新規会員登録

ユーザー内検索

愛車一覧

メルセデス・ベンツ Gクラス カブリオ メルセデス・ベンツ Gクラス カブリオ
 G320カブリオ(V6・ミッドナイトブルー)を愛車にしています。  息の長いGクラスで ...
その他 その他 その他 その他
 サントレックスの軽規格折りたたみトレーラーです。以前所有していたキャンピングトレーラー ...
メルセデス・ベンツ Gクラス (ハッチバック) ジュラシックワールド・オフィシャル (メルセデス・ベンツ Gクラス (ハッチバック))
G550 as a movie star! Coming soon.
メルセデス・ベンツ Gクラス (ハッチバック) ドイツ連邦軍多目的車輌「ヴォルフ」 (メルセデス・ベンツ Gクラス (ハッチバック))
 ドイツ連邦軍が1989年~1994年にかけて10,000両以上もの大量調達を果たした軍 ...
ヘルプ利用規約サイトマップ
© LY Corporation