紳士は激怒した。
必ず、かの邪智暴虐の民主党を除かなければならぬと決意した。
紳士には政治がわからぬ。紳士は、国際魔法紳士連盟の諜報員である。
ミュージックソーを奏で、アニメを見て遊んで暮して来た。
けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。
きょう未明紳士は鴨川沖ファロスを出発し、野を越え山越え、
大都市東京の秋葉原にやって来た。
紳士には父も、母も無い。
女房はいる、二次元の。十八歳以上と但し書きのあるこの、内気な妹と二人暮しだ。
この妹は、紳士を、近々、花婿として迎える事になっていた。
結婚式も間近かなのである。
紳士は、それゆえ、花嫁の衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、
はるばる秋葉原にやって来たのだ。
先ず、その品々を買い集め、それから都の大路をぶらぶら歩いた。
紳士には竹馬の友があった。†マッパ先輩†中級魔法紳士である。
今は此の秋葉原で、エロゲを買いに来ている。
その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。
久しく逢わなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである。
歩いているうちに紳士は、まちの様子を怪しく思った。
まち全体が、やけに寂しい。のんきな紳士も、だんだん不安になって来た。
路で逢ったメイドをつかまえて、何かあったのか、
三年まえに秋葉原に来たときはまちは賑やかであった筈はずだが、と質問した。
メイドは、首を振って答えなかった。紳士は両手でメイドのからだをゆすぶって質問を重ねた。
メイドは、あたりをはばかる低声で、わずか答えた。
「民主党は、人を殺します。」
「なぜ殺すのだ。」
「思いつきでマニフェストを語り、実行できるか考えないのです。」
「たくさんの人を殺したのか。」
「これから沢山死んでいくでしょう。アメリカの言いなりのままTPPに参加すれば。」
「TPP?」
「加盟国の貿易で、関税撤廃をすることです。」
TPPに加入すると、諸外国の安価な農作物が入ってくることにより、
国内の農業が大打撃を受けてしまう懸念があるようです。
今でさえ日本の食料自給率は低く、
カロリーベースで39%、生産額ベースで66%しかありません。
多くの部分を輸入によって支えられていて、かつ年々比率が減少の傾向にあります。
ただでさえ減少傾向の食料自給率は、TPPが導入されると、一気に加速する見通しらしいのです。
安価な外国産が、高価な国産を駆逐する懸念があるそうです。
一次産業に従事する人にとっては大打撃となります。
更に、平時はまだしも、例えば戦争が起こったときなどの有事において、
国内で食料が賄えなくなると、日本全体に食料危機が訪れる懸念があります。
国内での食料生産量を増加させなければならない状況なのに、
逆の行いを民主党は推し進めているというではないですか。
これは、まちの人たちも浮かれていられないのは当然です。
紳士は、国産品需要の重要性を知るとともに、ある言葉を思い出しました。
かつて米田市長はこのように仰っていました。
「みなさん、お米です! お米こそ私たちの宝です。
我々の力で、この街から、お米以外の炭水化物を追放しましょう!」
追放を訴えて、条例まで制定するのは流石にやりすぎですが、方向性は悪くありませんね。
国産米の推進運動なら良いでしょう。
「ブレックファーストニ、パンヲタベテイルヒトハ、ドースレバイイノデスカァ?」
米で出来たパンを食べれば良いのです。
一般的なパンは小麦粉から作られていますが、
近年米を挽いて作られた粉、米粉で作るパンが流通しています。
減反政策という、1970年代からはじまった米の強制的な生産調整があります。
政府の指導により、米の生産量を抑制する方針により、日本の田地の多くが放置されています。
一応、休耕地を使って、米以外の農作物の育成は認められているのですが、
長年稲作のみをやってきた人にとって、畑違いの野菜の育成は難しく、
なかなか手をつけられない状況になっているのです。
そこで、救世主となるかも知れないのが米粉パンです。
減反政策に引っかかるのは、米飯用の稲作で、加工食品用の稲作は該当しません。
昨今、休耕地を有効活用するのに、米粉用の稲作が始まりつつあるようです。
米飯用と、米粉用では作る品種に違いが有りますが、従来の稲作のノウハウを応用できる分、
野菜などを作るより、農作地の転用が簡単らしいです。
他にも、米を原材料としている食品では、ビーフンなどもありますね。
米飯、米粉パン、ビーフン、それに餅。
国産米の食品は、こんなにもあります。
これだけ揃えば、主食は概ねカバーできるでしょう。
ゴーマンかましてよかですか?
日本人なら米を喰え!
TPP参加する未来は真っ暗だ!
いけない、紳士という者が熱くなりすぎて取り乱してしまった。
まず、服を脱いで熱を冷やしましょう。
そして、肩に入った力を抜く為に、脱力するようなアニメを見ることにします。
そうですね、『お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ』辺りがいいかな。
紳士たるもの、『おにあい』の主人公姫小路秋人見習って、
どんな突っ込みどころがあったとしても、涼しげな顔をしてやり過ごせないと。
この秋人さん、凄いクールな紳士なんです。
たとえ、
本妹(近年国語辞書に登録予定)が迫ってきてもスルー。
妹に愛の告白を受けてもスルー。
妹のファッションセンスが抜群でもスルー。
まさに紳士の鑑ですね。
大分良い具合に力が抜けてきました。
ヒロインの姫小路秋子が素敵だからでしょうか?

見てください、この素敵な笑顔。

こんな表情もできますが、

悪巧みしている顔が可愛らしい。

お兄ちゃんに言い寄ってくる女には威嚇しつつ、

自分は猫耳装備。
とても驚きの規格外なヒロイン像なのですが、
更に、驚くのは役者さんに有ります。
こんなにも素敵な演技をしているのは、なんとまだ15歳の少女!
初主演なのに、この演技力。
年上なのに演技がアレな人たちに、
爪の垢煎じて呑ませてやりたいものです。
ねぇ、アナさん?
って、秋子ちゃんすごーい!とか思っていたら、更に凄い子が出てきました。
六話から登場の鷹ノ宮ありさちゃん。
なんと、驚きの13歳が演じているとか。
本作中で一、二を争う演技力をしているのに……
こんな素敵作品に、素敵な演技をするのが年若き乙女達とは、
日本の未来は真っ暗どころか、希望に満ち溢れて輝いているのではないでしょうか。
素敵な子達ががんばっているなら、善良ないち紳士として応援するのに吝かではありません。
取り敢えず、応援の基本、グッズ購入から始めることにしましょうか。
公式サイトに出発進行、アラホラサッサー!
原作小説に、BD・DVDソフト、CD、抱き枕カバー。
定番なものは揃っていますね。



どれも素敵で目移りしてしまいます。
ん?
「あきここまち」?
このタブは何だろう?
なんと、まさかの米!
アニメのキャラクターグッズに白米の販売とは前代未聞にも程があります。
はっ!
これは、日本の未来を憂う、良く出来た妹の計らいに違いありません。
凄い、日本の食料自給率を上げるために、こんな素敵なお米を作っているとは!
民主党なんかより、ずっと日本の為になる素敵な妹だ!
これはもう、民主党に代わって、妹が政権を握った方が絶対に良い筈!
そう、妹たちの妹たちによる妹たちための政党を立ち上げよう!
新党『妹』結成だ!
目指せ、政権奪取!
「万歳、妹万歳。」
紳士は思わず声を上げた。
すると、どこかから男の声がする。
「万歳、妹万歳。」
ひとりの男が、トレンチコートを紳士に捧げた。
その男は、竹馬の友†マッパ先輩†であった。
紳士は、まごついた。
佳き友は、気をきかせて教えてやった。
「の☆い、君は、まっぱだかじゃないか。早くそのトレンチコートを着るがいい。
俺は、の☆いの裸体を、皆に見られるのが、たまらなく口惜しいのだ。」
紳士は、ひどく赤面した。