“欧州自動車博物館巡りの旅 2014⇒2015”は、“Museo Enzo Ferrari Modena(ムゼオ エンツォ フェラーリ モデナ)”パート1として、エンツォの生家を改装した展示エリアのクルマをレポートしていきます。(このミュージアム、車両解説も大変充実していて、思いのほか超大作になってしまったので(爆)、お時間に余裕をもってどうぞ~^^;)
1903年 ド・ディオン・ブートン(De Dion Bouton)
1898年2月18日に生まれたエンツォ・フェラーリ(Enzo Ferrari)は、父 アルフレッド(Alfredo)がフランス製の“ド・ディオン・ブートン(De Dion Bouton)”車の購入によって、モデナで初めて自動車を所有した人物であったため、“自動車(Automobile)”と呼ばれる新しい輸送手段に直接触れて、その魅力(magic)を味わう機会に恵まれていました。
このド・ディオン ブートンは、942cc単気筒,8馬力のパワーユニットを搭載しているそうです。
ちなみにこの“ド・ディオン・ブートン社”は、駆動軸を持つリヤのサスペンション方式の1つとして有名な“ド・ディオン アクスル”を発明したメーカーでもあります。
1924年 アルファ ロメオ RL タルガフローリオ(Alfa Romeo RL Targa Florio)
エンツォ・フェラーリは、1924年に南イタリアのペスカーラ市街地サーキット(Circuito di Pescara)で開催されたグランプリ“コッパ アチェルボ(Coppa Acerbo)”で、アルファ ロメオのワークスドライバーとしてこのクルマを駆り、彼の経歴で最高の勝利を挙げました。
また、前年の1923年には消耗戦として知られる“タルガフローリオ(Targa Florio)”でも、1923年仕様のこのクルマをドライブしました。
パワーユニットは、3,620cc,125馬力の直列6気筒エンジンを搭載し、最高速度180km/hを実現したようです。
このクルマに限ったことではないですが、下の画像は戦前のクルマによく用いられていた摺動式のショックアブソーバ↓
シャシ側とリーフスプリングのアクスル側の2点間に固定されて、2点の伸縮によって生じる回転時の摩擦を利用したシンプルな構造になっています。機能面やメンテナンス性などの面で、現在主流のオイルダンパーが優っていたために淘汰されたのだと思いますが、このシンプルなアブソーバは個人的に“好きな戦前車アイテム”の1つです^^;
1932年 アルファ ロメオ 8C2300 スパイダー コルサ(Alfa Romeo 8C2300 Spider Corsa)
1932年のミッレミリア(Mille Miglia)に優勝した“8C 2300”は、その勝利を祝って“ティーポ ミッレミリア(Tipo Mille Miglia)”とも呼ばれるようになりました。
“8C”は、このブレシアを起点とする伝説的なレースで、続く1933年,及び1934年と勝利を収めたことで、アルファ ロメオはミッレミリア通算6勝を実現しました。
また、この“8C2300 スパイダー コルサ(8C2300 Spider Corsa)”は、エンツォ・フェラーリがドライバーとしてのキャリアの最後に乗ったクルマのようです。エンツォが最後に出場したレースは、1931年8月9日ボローニャ郊外で開催された“ジロ・デッレ・トレ・プロヴィンチェ(Giro delle Tre Province)”で、タッツィオ・ヌヴォラーリ(Tazio Nuvolari)に次ぐ2位でフィニッシュしています。
パワーユニットは、2,336cc,165馬力のDOHC直列8気筒を搭載して、最高速度195km/hを実現しました。
昨年訪れた“ムゼオ ミッレミリア(Museo Mille Miglia)”で、戦前最強を誇ったアルファロメオについてレポートした際、展示車が“6C”のロードカーのみだったのが記憶に新しいですが(笑)、このクルマが正真正銘ミッレミリア最強を誇った“8C2300”です^^;
特徴的な3連のドライヴィングランプ↑に、リヤのスペアタイヤには空力を意識したカバー↓が設けられています。まだ、ラジエーターグリルはフロントに直立しているあたりを見ると、ちょうど流線型がクルマに取り入れられようとしていた狭間の時代の造形が興味深いですね♪
1935年 アルファ ロメオ ビモトーレ(Alfa Romeo Bimotore)
このクルマは、名前の通り2つのエンジン(Bi=2つ,motore=エンジン)を備えたシングルシーターのグランプリカーで、1つ目のエンジンはフロントに搭載され、2つ目のエンジンはドライバーの背後に搭載されました。この2つのエンジンは、1つのトランスミッションを介して後輪に伝達されています。
この“ビモトーレ”はアルファロメオの後援の元、“スクーデリア フェラーリ(Scuderia Ferrari)”のエンジニアによってモデナで製作され、ルイジ・バッツィ(Luigi Bazzi)によってテストが重ねられました。
高速サーキットで行われるグランプリでの勝利を目指して造られた“ビモトーレ”は、ドイツ ベルリン郊外の超高速サーキット“アヴス‐レンネン(Avus-Rennen)”で行われたグランプリにおいて、ルイ・シロン(Louis Chiron)のドライブによって周回平均速度260km/h近いペースで走り、メルセデスに次ぐ2位を獲得しています。
当時のドイツと言えば、ナチス政権の国威発揚プロジェクトとして開発されたメルセデス・ベンツ“W25”やアウトウニオン“P-Wagen(Pヴァーゲン)”といった強豪がひしめくホームグランプリでの2位は大健闘と言えるでしょう。
また、タッツィオ・ヌボラーリのドライブで、1935年6月15日フィレンツェ(Firenze)- マーレ(Mare)間のアウトストラーダで、321.420km/hの世界速度記録(World speed record)を更新しています。
フロントに搭載される3,165cc,270馬力のルーツ式スーパーチャージャーで加給されたDOHC直列8気筒ユニット↓
同じくリヤに搭載される3,165cc,270馬力のスーパーチャージドDOHC直列8気筒ユニット↓
“ビモトーレ(ツインエンジン)”ということで、当然タコメーターも2つ↓装備されていました♪
そして、2つのエンジンによって行き場を失ったガソリンタンクは、ラダーシャシ脇のスペース↓に収められています。
1937年 アルファ ロメオ 158(Alfa Romeo 158)
シングルシーターのこのクルマは、“1,500ccクラス(ヴォワチュレット)”での勝利を目指して製作されましたが、戦後は“F1カー”として変貌しました。
この“158”もアルファ ロメオのエンジニア達の支援を受けて、ジョアッキーノ・コロンボ(Gioachino Colombo)によって設計され、モデナの“スクーデリア フェラーリ”で製作されました。
“158”のデビューレースは、1938年7月31日にリボルノ(Livorno)で行われた“コッパ・キアーノ(Coppa Ciano)”で、エミリオ・ヴィロレーシ(Emilio Villoresi)が1位,クレメンテ・ビオンデッティ(Clemente Biondetti)が2位に入る快勝を挙げました。
1,479cc,195馬力のルーツ式スーパーチャージドDOHC直列8気筒ユニットは、改良と共に出力向上し、1952年のF1カー仕様(改良型の“159”)では、425馬力にまでアップデートされていました。
1947年 フェラーリ 125 S(Ferrari 125 S)
エンツォ・フェラーリは、ジョアッキーノ・コロンボの設計でマラネロ(Maranello)で製作する“最初のフェラーリ(Ferrari)”は、V型12気筒エンジンを採用することを決めました。
そして、その当時のレーシングシーンにおいて、極めて稀であった“V型12気筒エンジン”を採用したことが、瞬く間にフェラーリに成功をもたらし始めました。その成功は、シングルシーターの“F1”や“F2”のみならず、スポーツカーレースやGTカー、そしてロードカーに至るまで継承され続けることになりました。
この展示車両は復刻されたリプロダクションモデルで、オリジナルの“125 S”は、デビューレースとなった1947年5月25日の“ローマGP(Rome GP)”で優勝を果たして以来、現在まで行方不明のままだそうです。
“125 S”のボデーワークは社外のカロッツェリア(ボデー架装工房)で製作されたものではなく、ジョアッキーノ・コロンボのスケッチを元に、フェラーリ社内の板金職人による叩き出しで製作されました。
パワーユニットは“125”の名が示す通り“1気筒あたり125cc”×12気筒で、1,500cc(厳密には1,497.6cc),100馬力のSOHC V型12気筒ユニットを搭載して、最高速度は170km/hだったようです。
ボア径:55mm×ストローク:52.5mmの1.5リッター 12気筒ということで、シリンダー高さがギヤボックスのフライホイールハウジングの膨らみより低く、隠れて全く見えないですね^^;
これだけの小排気量マルチシリンダーユニットだと一体どんなフィーリングなのか、とても気になります(@o@ )y
社内デザイン,社内製作ということも影響しているのか、この“フェラーリ1号車”はその後の“フェラーリ(Ferrari)”の持つ華やかで優美なイメージとは反して、武骨で機械的な一面が多く見られますね。
個人的に、その度合いが顕著に表れている部分だと思うのがコクピット回り↑で、機能性に特化した工作機械の操作盤のような潔さすら感じられます^^;
1952年 フェラーリ 500 F2(Ferrari 500 F2)
アルベルト・アスカーリ(Alberto Ascari)は、このシングルシーターの“500 F2”を駆って、1952年と1953年に出場したグランプリ(1952年と1953年のF1世界選手権はF2規格で実施)で15戦中11勝と圧勝し、2度のワールドチャンピオンに輝きました。このことが決めてとなって、フェラーリは創立からちょうど5年でグランプリになくてはならない“決定的なコンストラクター”のポジションを勝ち取ることになります。
パワーユニットは、アウレリオ・ランプレディ(Aurelio Lampredi)設計の1,985cc,185馬力の直列4気筒DOHCエンジンを搭載して、最高速度260km/hだったようです。
シングルシーターのため、ドライバーの下を通ったドライブシャフトは、ドライバーズシートのすぐ後ろに配置されるデフを介して後輪に伝えられています。
1954年 フェラーリ 750モンツァ(Ferrari 750 Monza)
1954~1955年に製作された“750モンツァ(750 Monza)”は、前述のアルベルト・アスカーリによって1952年,1953年のワールドチャンピオンシップを獲得した“500 F2”に搭載されていた2リッター4気筒を、3リッター,260馬力に拡大したエンジンが搭載されました。
このエンジンの設計も“500 F2”同様にアウレリオ・ランプレディによって行われ、3リッター化の主な狙いは、燃料消費率の向上とトルク特性の改善であったようです。
ボデーワークは、モデナのボデー架装工房“スカリエッティ(Scalietti)”が担当しました。
また1955年5月にモンツァ サーキット(Autodromo Monza)で行われたスポーツカーレースのテストで、アルベルト・アスカーリのドライブする“750 モンツァ”が不可解なブレーキングによるクラッシュで命を落としてしまう悲劇的なエピソードでも知られています。このクラッシュがあった場所は、“アスカーリ シケイン(Variante Ascari)”の名称で呼ばれています。
こういった装備品↓は、50~60年代バルケッタの典型的なアイテムで美しいですね♪
個人的に気になったのが、このテールランプ↓
よく見ると、一体のランプの中にテールランプとリフレクター部分があるように見えますね。550のテールランプも、このように大きめのレンズの中にテールランプとリフレクターを一体型にさせることで、ワンテールにできないかなぁ~^^;
1964年 フェラーリ 500 スーパーファスト(Ferrari 500 Superfast)
“500 スーパーファスト(500 Superfast)”は、成功していたグランドツアラーシリーズ“400 スーパーアメリカ(400 Superamerica)”に代わって登場しました。1964~1966年の間生産された“500 スーパーファスト”は、総生産台数わずか36台にとどまりました。
主要顧客は上流階級であり、その価格は当時の新車のロールスロイス2台分に相当したそうです。その顧客には、当時のイラン国王やイギリスの俳優ピーター・セラーズ(Peter Sellers)も含まれていました。
パワーユニットは、ジョアッキーノ・コロンボ設計の4,961.57cc,400馬力のSOHC V型12気筒エンジンを搭載して、最高速度260km/hを実現しています。
このエリアには、エンジン単体も多く展示してあり、中には興味深いものもあるので紹介していきます
1994年 モトーレ F134(Motore F134)
1,347cc,216馬力の2ストローク スーパーチャージド直列3気筒エンジン。詳細は不明ですが、1994年に開発された試作エンジンのようです。ベルトで駆動されているヘッド一体のスーパーチャージャーが革新的ですね^^;
1981年 モトーレ F110A(Motore F110A)
4,943cc,340馬力の180°V型12気筒の512BBに搭載されたエンジンです。
カットモデルのため、エンジンの下にギヤボックスが配置されてる2階建て構造が、よくわかりますね♪
1987年 フェラーリ F1-87 ♯28(Ferrari F1-87 ♯28)
エンツォ・フェラーリ(Enzo Ferrari)が1988年8月14日に他界してから、ちょうど“28日後”に、モンツァ(Monza)で行われたイタリアグランプリ。
この年、未勝利で不成功のシーズンを送っていた“スクーデリア フェラーリ”でしたが、ゲルハルト・ベルガー(Gerhard Berger)とミケーレ・アルボレート(Michele Alboreto)のドライブするカーナンバー“28”と“27”の“Ferrari F1-87/88C”が、このイタリアグランプリでワンツーフィニッシュを成し遂げました。
この勝利は、エンツォ・フェラーリ(Enzo Ferrari)自身が望んでいた、最高の“さよなら”となりました。
パワーユニットは、1,496ccから880馬力を絞り出すDOHCツインターボチャージドV型6気筒エンジンを搭載していました。
2002年 フェラーリ エンツォ(Ferrari Enzo)
エンツォ亡き後、フェラーリ社の社長を引き継いだルカ・ディ・モンテゼーモロ(Luca di Montezemoro)は、2002年に399台のみ生産されたこのモデルを、創始者“エンツォ(Enzo)”に捧げました。かくして、“エンツォ(Enzo)”は今以って、世界中のコレクターが熱心に探し求めるモデルとなりました。
“エンツォ(Enzo)”には、その当時ミハエル・シューマッハ(Michael Schumacher)とともに、数々のワールドチャンピオンシップで勝利した、フェラーリの至高の技術が惜しみなく包み込まれました。
パワーユニットは、5,998cc,660馬力のバンク角65° DOHC V型12気筒エンジンを搭載して、最高速度350km/hを実現しました。また、当時ピニンファリーナ(Pininfarina)に在籍していた日本人デザイナー奥山 清行(Ken Okuyama)氏がデザインを担当したことも話題になりましたね。
“欧州自動車博物館巡りの旅 2014⇒2015 Museo Enzo Ferrari Modena(ムゼオ エンツォ フェラーリ モデナ)”パート1は以上になります。
ちょうど、訪れた時はマセラティ100周年記念展“Maserati 100 (A Century of Pure Italian Luxury Sports Cars)”を開催中だったため、エンツォ・フェラーリにまつわる展示は今回のホールのみでしたが、十二分に“エンツォ(Enzo)”と“スクーデリア フェラーリ(Scuderia Ferrari)”の偉大な歴史を振り返ることができたと思います。
そして、フェラーリが鳴り物入りでオープンさせた“ムゼオ エンツォ・フェラーリ モデナ(Museo Enzo Ferrari Modena)”だけあって、車両解説も充実していて見応えのあるミュージアムです。
次回は、マセラティ100周年記念展についてレポートしていきます。
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