こんにちは~
引き続き、欧州自動車博物館巡りの旅2014⇒2015をレポートしていきます!
4回にわたってお送りしてきた“ムゼオ フェラーリ マラネッロ(Museo Ferrari Maranello)”編のレポートも、いよいよ最後になりました。
今回はパート4として、ペブルビーチを模したエリアに展示されたフェラーリのワンオフ的なスペシャルモデルを中心にレポートします♪(今回も長編になってしまいましたので、お時間に余裕のある時にどうぞ~^^;)
フェラーリ 166 インター ベルリネッタ トゥーリング(Ferrari 166 Inter Berlinetta Touring)

“166インター(166 Inter)”は、レース用モデルの“166”のストリートヴァージョンで、1948~1950年の間に生産されました。
その際に、いくつかの異なるコーチビルダー(ボデー架装職人)が、フェラーリのために、ボデー製造を手がけました。なかでも、最もエレガントなボデーを架装したのが、この展示されている車両を手がけた“カロッツェリア・トゥーリング(Carrozzeria Touring)”でした。
パワーユニットは、ボア径 × ストローク:60mm × 58mm,1,992cc,90馬力のバンク角60°V型12気筒エンジンから最高速160km/hを実現しました。
ペブルビーチを再現した凝った展示エリアが災いして、エレガントな横からの画が撮れないのが残念ですが(笑)、まだレースカーとロードカーの境が曖昧だった1940年代独特のフォルムが素敵ですね!
1953年 フェラーリ 166MM スパイダー スカリエッティ(Ferrari 166 MM Spider Scaglietti)

このクルマは、1953年にモロッコ カサブランカのアントワーヌ・コース(Antoine Causse)にデリバリーされました。当初は、ヴィニャーレ製のレース用ベルリネッタ(クーペ)ボデーをまとい、1953年の“ツール・ド・フランス オート(Tour de France Auto)”で6位フィニッシュしましたが、その後ロードアクシデントによって破損したため、修理のためにフェラーリのファクトリーに戻されました。
ファクトリーに戻されたクルマは、破損したベルリネッタボデーを取り除かれ、新たなボデーを架装するプロジェクトが、エンツォ・フェラーリ(Enzo Ferrari)の息子ディーノ(Dino)によって、進められました。

ディーノは、そのプロジェクトをモデナのコーチビルダー セルジオ・スカリエッティ(Sergio Scaglietti)に託しました。このプロジェクトに強く興味を惹かれたセルジオは、この新しいデザインのボデーを架装しました。このデザインは、後の“750 モンツァ(750 Monza)”や“モンディアル”のプロトタイプとなるとても重要なモデルとなりました。
パワーユニットは、ボア径 × ストローク:60mm × 58.8mm,1,995cc,140馬力のバンク角60°V型12気筒エンジンを搭載しています。
今回の展示で見るまで、この個体の存在は知りませんでしたが、“166”(2リッターV12)の時代に、このスタイリングが出来上がっていたことにビックリしました。

確かに、
“Museo Enzo Ferrari Modena(ムゼオ エンツォ フェラーリ モデナ)”パート1でも紹介した4気筒レーサーの“750 モンツァ”や“500 モンディアル”のバルケッタスタイルは、突如登場したような印象がありましたが、このクルマが原型だったということですね。

そして、そのプロジェクトを指揮していたのが、小型車向けのエンジン開発を望んでいたディーノであったことも、“750モンツァ”や“500 モンディアル”が小型の4気筒ユニットを搭載して登場したことに、合点がいきますね♪
フェラーリ 250 GT ベルリネッタ (TdF) (Ferrari 250 GT Berlinetta (TdF))

“250 GT ベルリネッタ(250 GT Berlinetta)”は、GT(グラン トゥーリスモ)カテゴリーへの参戦を目指して開発されました。しかし、僅か約80台のみが製造され、ヨーロッパ市場及びアメリカ向けにデリバリーされたに過ぎませんでした。

このクルマの正式名称は、“フェラーリ 250 GT ベルリネッタ(Ferrari 250 GT Berlinetta)”であり、車名に“TdF”という文字は含まれていません。この“TdF”という名称は、1956~1959年の“ツール・ド・フランス オート(Tour de France Auto)”での輝かしい活躍から、ファンの間で呼ばれるようになったニックネームです。

この美しい姿を保っている展示車両は、フィンランドのレーシングチーム“スクーデリア アスコリン(Scuderia Askolin)”にデリバリーされた個体で、今日でもフィンランドのオーナーのもとで所有されています。
パワーユニットは、ボア径 × ストローク:73mm × 58.8mm,2,954cc,240馬力のバンク角60°V型12気筒エンジンから、最高速250km/hを実現しました。

“250シリーズ”のコンペティションモデルと言えば、あの伝説的な“250 GTO”が有名ですが、あの“GTO”に続く250GT系コンペティションモデルの始まりは、この“Tdf”と言えます。“Tdf”は、1959年に改良型の“250 GT ベルリネッタ SWB”に進化し、その後“250TR(テスタロッサ)”のドライサンプユニットを搭載した“250GTO”へと続きました。
トーマシーマⅢ(Thomassima III)

“トーマシーマⅢ”は、その名の通りモデナのアメリカ人 トム・ミード(Tom Meade)によって製作された3番目のモデルになります。トム・ミードは、60~70年代のフェラーリに独自の解釈を加えたスタイリングを与えました。
このモデルは、“フェラーリ 250GTクーペ(Ferrari 250 GT Coupe)”をベースに造られたクルマで、彼の作品の中でもっとも有名なモデルでもあります。それは、伝説的なスポーツレーシングカー“330 P4”を、彼なりの最高の解釈でフロントエンジンのクルマとして表現したモデルでした。

パワーユニットは、ボア径 × ストローク:73mm × 58.8mm,2,953.211cc,240馬力のバンク角60°V型12気筒エンジンを搭載し、最高速200km/hに達したそうです。
パッと見で、なんか“ホットホイール(Hot Wheel:アメリカのミニカー)みたいなクルマだなぁ(笑)”と思ったら、やはりアメリカ的な解釈のもとに造られたクルマでした^^;
フェラーリ コラーニ テスタ ドーロ(Ferrari Colani Testa D'oro)

このクルマは、一人の男が独自の解釈で造り上げたテスタロッサ(Testarossa)です。それは、ルッツ “ルイジ” コラーニ(Lutz "Luigi" Colani)によって設計されました。

このワイルドなクルマには、ターボチューニングで有名なドイツの“ローテック レーシング(Lotec Racing)”の手により、2基のターボチャージャーで加給された水平対向12気筒エンジンが搭載されました。

1991年、アメリカのユタ州 ボンネヴィルのソルトフラット(Bonneville Salt Flats)において、マイク・ストラスバーグ(Mike Strasburg)のドライブによって、触媒付き車両のクラスで351km/hの世界速度記録(World speed record)を樹立しています。
パワーユニットは、ボア径 × ストローク:82mm × 78mm,4,942cc,750馬力のバンク角180°V型12気筒ツインターボチャージドエンジンで最高速351km/hを実現しました。

こちらも独特なスタイリングのクルマですが、未来派デザインで知られるルイジ・コラーニの作品のようです。

コラーニ流のデザインが主体ですが、このような↑“365 GTB/4 デイトナ”と思しきモチーフも確認できます♪
2002年 フェラーリ 360 モデナ(Ferrari 360 Modena)

“360 モデナ(360 Modena)”は、フェラーリとして初めてフルアルミニウム製モノコック構造を採用したロードカーで、以降のフェラーリのプロダクションモデルの礎を築いたモデルと言えます。
アルミニウム製モノコックには、それぞれの箇所に生じる荷重や応力に耐えられるように材質の異なる数種類のアルミニウムが使用されています。
パワーユニットは、ボア径 × ストローク:85mm × 79mm,3,586.2cc,400馬力のバンク角90°V型8気筒エンジンから最高速296km/hを実現しました。
車両解説には特に記述がないですが、この個体は“360 モデナ バルケッタ(360 Modena Barchetta)”というクルマで、当時フィアットグループの会長だったジャンニ・アニエッリ(Gianni Agnelli)から、フェラーリ社長(2002年当時)のルカ・ディ・モンテゼーモロ(Luca di Montezemoro)に結婚祝いとして贈られたワンオフのスペシャルモデルです。
低められた専用のフロントウインドが特徴のこの“360 モデナ バルケッタ”ですが、実は2002年に東京 木場の東京現代美術館で行われた“ARTEDINAMICA 疾走するアート:フェラーリ&マセラティ”展にて、ワールドプレミアされたモデルでもあります。
2007年 フェラーリ 612 スカリエッティ セッサンタ(Ferrari 612 Scaglietti 60th)

“612 スカリエッティ(612 Scaglietti)”の名称は、セルジオ・スカリエッティ(Sergio Scaglietti)に由来して付けられました。セルジオ・スカリエッティは、モデナのカロッツェリア(ボデー架装工房)“スカリエッティ(Scaglietti)”の創業者で、“スカリエッティ”は60年代後半にフェラーリに吸収されています。
“612 スカリエッティ”は、4シーターフェラーリのフラッグシップモデルであり、2011年に“フェラーリ FF(Ferrari FF)”にその座を受け渡しました。

この展示車両は、2007年のフェラーリ創立60周年記念を祝って、60台のみが製作された特別限定モデルで、その60台はそれぞれ異なる独自のディテールで仕上げられました。
パワーユニットは、ボア径 × ストローク:89mm × 77mm,5,748cc,540馬力のバンク角65°V型12気筒エンジンから最高速315km/hに達しました。
続いて、ムゼオ フェラーリ マラネッロの最終セクション“技術展示エリア”を見ていきましょう♪
フェラーリ 360 モデナ(Ferrari 360 Modena)

車両解説は、前述の“360 モデナ バルケッタ”と同じ内容なので(笑)省略しますが、現在のフェラーリ各モデルの礎を築いたアルミニウム製モノコックを初めて採用したクルマとして、クーペモデルも展示されていました。
当時、“F355”からモデルチェンジした際には、その変貌ぶりに驚きが隠せないほどの衝撃を受けた“360 モデナ”ですが、今ではすっかりモダンフェラーリの象徴といった感じになりましたね。
フェラーリ F12 ベルリネッタ ベアシャシ(Ferrari F12 Berlinetta Bare chassis)

このメカニカルコンポーネントは、現在(2014年当時)のフェラーリの最上級モデルに位置する“F12 ベルリネッタ(F12 Berlinetta)”のベアシャシです。フェラーリ最速のロードカーの、通常では見ることのできない詳細なメカニズムを見ることが出来ます。
フロントエンジンでありながら、低重心と優れた重量配分を保証するために小型化され、エンジンルーム後方へと搭載された車両レイアウトがよく分ります。

パワーユニットは、ボア径 × ストローク:94mm × 75.2mm,6,262cc,740馬力のバンク角65°V型12気筒エンジンから最高速340km/hを実現しています。

個人的には、やはりシャシ構造に興味がありますが、フロントには3本のアルミ角断面フレーム↑が使用されていて、エンジン側面からファイヤーウォールに向けても1本角断面フレームが通っていますね。

エンジンルームは基本的に角断面のフレームがメインのフレーム構造ですが、キャビン部分は角断面フレームとプレス材を併用する構造となっているようです。

モノコックの主要な接合部分は線溶接で結合されていますが、中間部分の接合にはリベットが使われています。

やはり、プレス鋼板をスポット溶接で留めてカタチ造る鋼製モノコックとは違い、アルミニウム製モノコックは主要な部分には、角断面フレームを使い強度を出していることが、よく判りますね^^;
フェラーリ FF(Ferrari FF)

“FF”は、フェラーリとして初めて4輪駆動システムを採用したロードカーで、モデル名(FFはフェラーリ フォー:Ferrari Fourの略)の“F”には、4輪駆動と4シーターの2つの意味が含まれています。この4輪駆動システムは、とても高度なシステムでフェラーリ社内で開発されました。
パワーユニットは、ボア径 × ストローク:94mm × 75.2mm,6,262cc,660馬力のバンク角65°V型12気筒エンジンから最高速335km/hを実現しています。
4回にわたってお送りしてきた充実の“ムゼオ フェラーリ マラネッロ”の内容は以上になります。
今回の企画展示は、“夢見るカリフォルニア(California Dreaming)”と題して、アメリカ及びカリフォルニアにおけるフェラーリをメインにした展示でしたが、なかなかユニークな企画設定で興味深い展示だったと思います。

この前に特集した“ムゼオ エンツォ・フェラーリ モデナ”もそうでしたが、欧州の自動車博物館は、このように定期的に企画展を開いて展示内容に変化を持たせることで、何度訪れても面白い点が良いですよね♪
“ムゼオ フェラーリ マラネッロ”を後にして、アベトーネ通りに面したフェラーリ本社の正面玄関にきました。

1日でモデナとマラネロのミュージアムを2件梯子したこともあり、辺りはすっかり日が暮れていました^^;

正面玄関の向かいは、おなじみ“リストランテ カヴァリーノ(Ristorante Cavallino)”です。通常は、この“リストランテ カヴァリーノ”から“ムゼオ フェラーリ マラネッロ”方面へ抜ける道があるのですが、訪れた時は画像左奥↑でフェラーリの新しい施設を建設中で、通り抜け不可となっていました。

“リストランテ カヴァリーノ”の向かいには、“フェラーリ ストア(Ferrari Store)”があります。公式の最新グッズやフェラーリ公認のレアアイテムなどは、ここで購入することが出来ます。

フェラーリストアには、ディーノ 246 gt(Dino 246 gt)↑と、1962年のルマンでオリヴィエ・ジャンドビアン(Oliver Gendebien)/フィル・ヒル(Phil Hill)のドライブによって優勝した“330 TRI/62”のフロントカウル↓が展示されていました!

マラネッロには、この公式のフェラーリストア以外にも個人経営のフェラーリグッズショップが点在していて、個人的には後者の方が年代物の掘り出し物などもあって、結構おもしろかったりします。

ここ↑は、“ムゼオ フェラーリ マラネッロ”のすぐ隣にあるグッズショップ“ウォームアップ(WARM-UP)”です。ここは、グッズ販売のみならずフェラーリの体験試乗プログラムもあって、聖地マラネッロでフェラーリ(新しめのモデルばかりですが・・・)をドライヴすることが出来ます♪

今回はもう時間も遅く、やっていませんでしたが、2011年にマラネッロに来た時には、ここで“430 スクーデリア(430 Scudeia)”をドライブしています^^;

※↑↓ともに2011年撮影

スタッフも同乗で、“ここは良いストレートだらか、ちょっと待って加速だ!”とか“対向車来てないから、前のフィアット抜いちゃいな!(笑)”など、楽しめるように英語でアドバイスしてくれます^^;
そして、このようなアングル↑で、自分が乗った時のオンボード映像をDVDに焼いてくてます!
欧州自動車博物館巡りの旅2014⇒2015 “ムゼオ フェラーリ マラネッロ(Museo Ferrari Maranello)”編は、以上になります。
次回は、いよいよマラネッロを後にして、次のミュージアムへ向かいます!