
前回、「久しぶりにレッドバロンでバイク買ったぜ」ということを書いた。
バロンさんとはまだ付き合い始めたばかりなので、一利用者の立場としては「スープの冷めない距離にある」ということ以上にどこまでありがたい存在になるのかまだ未知数ではあるけれど、レッドバロンという会社には日本のバイクカルチャーを守るインフラのひとつとしてぜひともがんばり続けてほしい。ファンドに買収されたり経産省に怒られたりといろいろあるけどさ。
実のところ、彼らの色気もへったくれもないけどユーザーのニーズに合理的に向き合ったビジネスモデルは、僕たちが車やバイクを趣味として楽しむための最後の砦なんじゃないかと思ってる。
何に対する砦か?っていうと、僕ら車好きバイク好きが知らぬ間にからめ捕られてしまった「囲い込み」に対する砦だ。
高級車ブランドを筆頭に、メーカーはディーラーを通してユーザーの使用環境へのコントロールを強めようとしているし、同時にメーカーからディーラーへのコントロールもますます強くなっていくであろうことを、僕らは気づいている。こんなのMBA企業戦略101レベルの話なので不思議なことは何もない。
ユーザーは今や、ディーラーでの定期点検を欠かさずやってないと新車保証すら適用してもらえない(というメーカーもある)し、バッテリー交換やオイル交換などささいなメンテナンスでも大掛かりな設備や特殊な工具がないとできなくなっているし(下手すりゃ自分で純正以外のものに交換したりなぞしたらまた保証対象外にするぞと脅されるし)、コンピュータ診断機を通さないと「はよメンテに来んかい」とメーターパネル上に居座り続けるスパナマークを消してもらうことすらできない。使用料を払わないと装備されてるシートヒーターすら使わせてもらえない(というメーカーもある)。そしてメーカーとディーラーが示し合わせて決めたらしき乗り換え推奨時期が来ると、メンテコストの上昇と下取り価格の下降をうまく操られて、その車にそのまま乗り続けるという選択肢をテーブルの上から遠ざけられてしまう。
ディーラーはディーラーで、メーカーの望むかなり具体的に規定されたブランド・ガイドラインを踏襲し、独立企業とは思えないくらい細かくKPIを管理され、定期的な店舗リニューアル工事(それも、ユーザーの目から見るとなぜ必要だったのかさっぱり分からないような瑣末な変更)に莫大な金額を投資し続けることを要求されている(ように見える系統がある)。逆らえば代理店契約の解除をちらつかせ、脅されている(ように見えることがある)。
このまま行くと、車やバイクに乗ること自体がどんどんサブスク化していくのが目に見えている。あるブランドの車を買うことはそのブランドを利用するためのメンバーシップに加入することと同義になり、ディーラーはただのブランディング発信基地・兼・顧客管理窓口になる。僕らは所有する喜びも自分でいじる楽しみも失い、自分の買ったものをこの先ずっと所有し続ける自由ですら奪われかねない。
どこの業界を見渡しても大手がこぞって夢中になっている、中間業者の排除とユーザーの直接的囲い込み戦略の行き着く先は、グローバル企業によるサプライチェーンの寡占だ。寡占が進んでやりたい放題できるようになると彼らは効率のよいマーケットへの「より好み」を始める。そういった連中(つまり大手企業の本社のエリート達)は数字でしか見ない(というよりむしろ数字だけで判断できるのがエリートの証だと思ってる)ので、人口が集まっていてコスパのいい都会に資源を集中し、効率の悪い田舎のことなんか無視しはじめる。
それでも国内メーカーは全国の販売ネットワークを維持して売上のボリュームを求めるかもしれないけど、高級輸入車なんかは「全国津々浦々」なんてことに興味がないので、都会にしかディーラーを置かなくなる。辺境地域の人間の相手をしてくれるのなんて、土着企業と物理コストのかからないネット企業だけだ。田舎の連中の娯楽なぞSNSとソシャゲとパチンコだけやらせときゃそれで充分だろ、とグローバル・エリートたちは思ってる違いない。
もっといえば、円の価値と購買力が下がっている日本自体が、グローバル・マーケットの中における辺境と見なされていくかもしれない。今はまだ日本仕向けの車やバイクは円安が進んだ今でも欧米に比べて低い価格水準に抑えられているケースも多いけど(おっと米国は今関税のせいで輸入品の価格はひっちゃかめっちゃかだったな)、そんなメーカー(あるいはインポーター)もそのうちバカバカしくなるに違いない。そんな儲からないマーケットをいつまで相手にしてくれることやら、保証はどこにもないではないか。
おっと、話を広げすぎた。要するに、僕らがこれまで車やバイクを楽しんでこられたのは、ユーザーに近いところにいる独立系販売店・サードパーティの多様性があったからなのだ。どのメーカーのものでも気軽に面倒見てくれる町の車屋やバイク屋、整備工場、パーツメーカー、などなど、車やバイク趣味の自由は彼らが支えてきた面が大きい。違法改造文化のような弊害もあったかもしれないけど、それでもユーザーは自由で、買った車やバイクは100%ユーザーのものだった。
前回のブログで、レッドバロンはメンバーシップ型ビジネスモデルだと書いたけど、今回書いたメーカーの「囲い込み」とレッドバロンの「囲い込み」は意味合いが全然違う。レッドバロンのは、ユーザーがリピーター化することでより大きな便益を得られるという「ユーザーの囲い込み」だけど、メーカーのは商品を特定のチャンネル・特定の使用方法でしか利用できなくする「車種の囲い込み」だ。
Z900RSの新車が買いたければカワサキプラザに行くしかなかったり(カワサキ買ったことないけどさ)、アストンマーチンのバッテリーがディーラーでしか交換できなかったり(やろうと思えば他の手もあるのかもしれないけどさ)、BMWのサスを社外品に換えたらなぜか全然関係ないエンジンオイル漏れも保証が効かなくなったり(噂で聞いただけだけどさ)、その車種の買い方、乗り方、直し方、弄り方、すべてをメーカーの敷いたレールの上でしか楽しめなくなったら、それって僕らの心に生き続けてきた20世紀型の自動車文化とは様相がガラリと変わってしまうのではないか。
そんな世界では、町の零細バイク屋やチューニングショップは生きていけないし、中古車屋だってアフターメンテナンスまで含めた総合サービスとして生き残れるかどうかわからない(認定中古レクサスと野良レクサスの間にあるような格差が今後目に見えるレベルで広がっていくかもしれない)。もちろん環境や騒音などの法令の影響も大きいので、メーカーの囲い込みのせいだけとは言えないけどね。
そんなわけで、独立系でフルサービスで全国展開しているレッドバロン(元ヤマハ系だけど)みたいな存在は、僕らの自由なバイクライフ(それと自動車趣味)を楽しむ最後の砦のように思えて、ずっと残っていってほしいなあ、というのが前回と今回の趣旨でした。
あと、きちんと4連ツインウェーバーの同調が取れるオールドフェラーリ屋さんとか、FRPボディのきれいに直せるボディ屋さんとか、ゴニョゴニョをゴニョゴニョしてくれるゴニョゴニョ屋さんとかもね。
Posted at 2026/01/28 15:53:48 | |
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