第1回、
第2回の続き(最終回)。
ビーナスラインのさらにその先にあると言われる秘密の道、裏ビーナス。
バイクでビーナスラインに来るのは今回が3回目だけど、今回はじめて裏まで行く。
とにかく空いていることがこのルートのひとつのウリらしいが、はたしてその秘境度はいかほどのものなのだろう。「知る人ぞ知る隠れた名道」レベルなのか、「知られててもわざわざ行くほどでもない」レベルなのか。
ひとつ言えることは、四輪でここまで来る人はそれなりに目的意識のある人たちなのに違いない。なにせ道幅が狭いところが多いので、車でここまで来るのにはけっこう覚悟がいる。それに、基本的には「美ヶ原自然保護センター」がその終着地点で、そこから先はどこにもつながっていない。ハイキング客以外にはあまり用がない場所だと思われる。
とはいえ、終点の自然保護センターの駐車場はかなりの数の車が停まっていた。人の姿はまったく見えない。みんな山歩き中なのだろう。
この裏ビーナスライン(武石峠と自然保護センターを結ぶ県道62号線)は、本来は松本市と上田市をつなぐ道(美ヶ原公園沖線)の支線にあたるっぽいので、少なくともここに至るまでの本線にはそれなりに交通量があってもよさそうなものなのだが(長野の土地勘がないので詳しくはわからないけど)、その本線自体が狭くて細くてしかも長らく封鎖されてたような道なので、どう見ても幹線道路には思えず、あんまり日常的に使われている感じではない。
支線のほうに入ると、一気に視界が拓ける。なるほど、表ビーナスにも匹敵する眺めだ。
荒涼とした、この感じ。
いつか見た夢のような最果て感が半端ない。美ヶ原高原美術館あたりの時点ですでに、本州ではあまり見られないレベルの「はるばる来ちゃったぜ感」があるが、さらにその先まで足を伸ばしてこそ味わえる、このいくばくの心細さを伴った孤独な開放感は何物にも変え難い(もっとも、松本方面から来ると意外と近そうだけど)。
たぶん松本市街地方面。
順番は前後するけど、松本市街地から登ってくる途中の美鈴湖。
と、急勾配あり舗装林道あり抜けるような景色のオープンロードあり、と、ぜひおすすめしたい道でした。
今回みたいに、ナビ(BeelineMoto)のサジェスチョン任せでどんな地形を走るのか分からないまま突き進んでいくのは、実に楽しい。
やっぱりこんな道程こそ、ムルティストラーダの面目躍如である。バイクならではの機動性と、長距離移動の快適性が、ちょうどよくバランスしている。
箱いっぱい・タンクでっかい・背高バイク(つまり、巷で言うアドベンチャー・ツアラー系)の昨今の人気の源流はたぶん、90年代のヤマハTDM850あたりにあるんじゃないだろうか。
もちろんホンダ・アフリカツインや、さらに源流を辿ってBMW・GSの名前を挙げることが本筋かもしれないけど、それらはどちらかというと既存のオフロード愛好者が行き着く先、というポジショニングだったのではなかろうか。
日本のオンロードのスポーツバイクファン(2ストレプリカから大型SSに移行していった層)に「あれ?こっち系もちょっといいかも」と最初に思わせたのって(つまり、オンロードの世界とオフロードの世界が初めてクロスしたのって)、私の知っている限りだとTDMあたりが最初だったような気がする(このへん、当時の思い出だけで語っているので、「ちげーよ」という詳しい人がいたらご指摘ください)。
私がバイクの免許を取った90年代後半~2000年ごろ、TDMは「醜いけど乗れば良さが分かるバイク」という評価だった。流麗なフルカウルSSと伝統的ネイキッドが主流だった時代に、ああいうやけに背が高いプロポーションのオンロードバイクはあんまりなかったから、見た目だけで拒絶反応を感じた人も多かったはずだ。私なんかは、ビジネスバイクの延長線上の実用車、という位置づけで見ていた。スポーツカーに対するミニバンみたいな。そして、正直「うーん、たしかに醜いなあ」と残念に感じた。
しかしあれから30年くらいの時間が経ち、メーカーの提案するデザインも少しずつ洗練され(あるいはユーザーの目が背高プロポーションに少しずつ慣れてきて)、一方でかつてはセパハンスポーツバイクに傾倒していたライダーたちのほうも年齢を重ねて前傾がしんどくなっていった結果、一人、また一人とオンロード・アドベンチャー・ツアラーに改宗していき、今に至る。
ムルティに約1年乗り、泊りがけソロツーリングを2回やって、ああ、こりゃ一度使い始めたらこの手のバイクから離れられなくのも納得だよなあ、と思った。
なんでも放り込める、鍵付きの箱。
道を選ばず分け入っていける、SSやクルーザーよりはるかに高い機動力。
スポーツバイクほどじゃないものの、それなりの旋回の気持ちよさとトルク感。
軽量級オフ車やスクランブラーとは段違いの長距離快適性。
と、ツーリング中に求めたい要素が及第点以上でまんべんなく満たされているので、「マイナスポイント」がすごく少ないのだ。
とくに箱の利便性。
バイク乗りには「二輪の自由と喜びは不便さの中にあり」と発想しがちで、荷物をシートにいちいちくくりつけたり、風防に守られず全身で季節の風を感じたりということを魅力と考える。僕らは本質的に伊達と我慢と手間が好きな生き物なのだ。
だから、ネオクラ系やハーレー、そしてスポーツバイク乗りはスタイルを優先するあまり、「便利なのが欲しいんだったら車に乗ってりゃいいじゃん」と意地を張って、アドベンチャー・ツアラー系のバイクをどこか下に見る傾向がある、ような気がする。実を言えば私自身もそういう目線が全くないとはいえない。ハーレーやSSは偏愛の対象だけどツアラーはただの道具、みたいな。
でも一度この便利さ ーー 旅の途中のストレスから解放してくれる適度な便利さ ーー を知ってしまうと、これまで知らなかったようなバイクならではの自由が新たに見つかったみたいで、ツーリングの楽しみが何倍にも感じられる。
私自身、完全に改宗してしまうわけではないので、この先ムルティに何年乗るかは分からないけど、スポーツバイク派・クルーザー派の皆さんも、長いバイク人生の中で1台か2台はこれ系に乗ってみてもよいんじゃないだろうか。
帰り道、諏訪湖SAであんぱんを食べる。今回、高速道路を使ったのは松本からここまでの区間だけで、このあとまた高速を降り清里経由の下道で帰宅したのでした。
Posted at 2026/06/09 16:54:28 | |
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バイクでお出かけ | 日記