タッチセンサによる車の盗難防止装置を試作してみた
1.はじめに
車の電子化と盗難事件の現状としては、車メーカの盗難防止装置の進化にもかか
わらず盗難事件が頻発
試作の概要としては、GitHubにホスティングされているマイコン用ライブラリ
を検索し静電容量の変化を検出するタッチセンサライブラリを見つけた
このライブラリを利用し、車のボディに接触すると自動検知および通報するがで
きる盗難防止装置(仮称:オートアラーム)を試作したのでその概要をまとめる
2.測定原理
GitHubでホスティングされているCapacitiveSensorライブラリ適用
CapacitiveSensorの動作は、RC回路の充放電特性の変化を利用
マイコンのSendPin①とReceivePin②間に高抵抗R(例えば数MΩ)を接続
②に金属板を取り付けて人体とGND間の静電容量の変化を検知する方式(図1参照)
3.実験回路での動作確認
実験回路の構成と動作確認方法
ARDUINOデジタルピン4を出力に設定し図2の①と抵抗10MΩを接続
図2の②をGND間に0.001μFのコンデンサを接続し、ARDUINOからの矩形波①
と抵抗Rと容量CによるRC充放電特性②をオシロスコープで波形観測
(図1と図2は、Capacitive sensing on Arduino – A better way(Capacitive sensing on Arduino – A better way – Charrette & Beget)の解説論文に記載の図を引用)
実験回路での動作確認
矩形波の出力とRC回路による波形の変化(図3参照)
入力矩形波①に対してコンデンサの充放電特性が観測された
指を触れたときの波形の変化と課題(図4参照)
人体の誘導磁界により波形が高速に変化している
この状態では、タッチセンサとしての動作が不定となる
4.CapacitiveSensorライブラリの特徴
1)CapacitiveSensorライブラリは、キャパシティブセンサの高速な変化を精度
良くで測定するためRC回路の充電と放電制御を高速で複数回充放電を繰り返す
直接レジスタとビットを操作し、より高速なピン制御を実行
2)周囲の環境変化や指で触れたときのキャパシタンスの変化を的確に捉えるた
め閾値を超える充電および放電にかかる時間(ナノ秒からマイクロ秒の範囲にな
ることが多い)を各サイクルで計測
capacitiveSensor のコンストラクタsenseOneCycleで各サイクルの充電および
放電時間が測定、その平均値が判定基準とするアルゴリズムのようだ
5.タッチセンサ装置の試作(送信機)
1)マイコンにARUINO NANOを適用
2)デジタル出力ピンと入力ピン間に10MΩの高抵抗を接続
3)デジタルピン2を車のボディにアクセサリソケットのマイナス側に接続
4) 計測データの判定結果表示用にカラーLEDを搭載
5)測結果を無線通信モジュール(nRF24)で受信機に送信
6)タッチセンサ送信機の電源
車のバッテリから直接電源を取るとバッテリ上りを懸念
太陽電池パネル(DC6V1W)を充放制御モジュール(TP4056)経由でリチュ
ウムイオン電池に充電
この電池にDC-DC昇圧モジュール(MT3608)によりDC5Vをマイコンの電源
として供給
6.送信部のブロックダイアグラム(図5-1)
1)タッチセンサ送信機から送られてくる計測データを無線通信モジュールで受
信
2)マイコン(ATMega328P)で判定後にOLEDディスプレイに状態を表示
3)車に人が触れたと判定された場合
MicroSDに書き込まれた警報音(MP3方式の音声データを記録)を
スピーカから発音する方式
OLEDにEMERGENCY!ほかの文字を表示(下記図を参照)
7.受信部のブロックダイアグラム(図5-2)
送信機の外観と内部の説明(図6-1、図6-2)
受信機の外観と内部の説明(図6-3、図6-4)
実際の動作状況
送信機の外観と動作状況(図7-1)
受信機の外観と動作状況(図7-2)
8.まとめ
タッチセンサによる盗難防止装置の有効性
1)太陽電池による充放電制御によりバッテリ上りの心配がない
2)LEDの移動点滅表示による威嚇効果がある
3)離れた場所で音とLED表示機能により監視できる
その他の利点
1)ライブラリ活用で効率の良いプログラム開発が可能
2)必要機能部品をモジュールとして安価で短納期に入手可能
3)製作時間および動作検証の短縮化に貢献
今後の改良点と展望
1)動作の信頼性の検証および拡張性について検討を進める
(タッチセンサ受信機から別の個所にスピーカや照明を遠隔制
御するなどの拡張性も検討)
2)WiFi通信の利用によりスマートフォンでの受信機能も検討
以上