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中銀カプセルタワービル

建築家は死して何を残すか
2011年08月06日
カテゴリ : 東京都 > 観光 > 建物・史跡


 銀座といっても南の外れに位置し、汐留の再開発地区に面した8丁目に建つ外観が特徴的なビル。
 首都高都心環状線内回り汐留ジャンクションからKK線に入ると間もなく右側に見えてくるので、ドライブ中にご覧になった方も多いだろう。

 ドラム洗濯機を積み重ねていったように見えるが、構造上はそうではない。
 丸窓を一つ配した住居ユニット(合計140個)を、ビル中央に2本あるSRC造のシャフトにボルト留めしている。
 ユニットは独立性が高く、老朽化や陳腐化に伴い更新することも可能な設計となっている。

 若き日の黒川紀章の設計で、当時属していた建築家グループ「メタボリズム」が意味する"新陳代謝"を具現化した建物だった。


 しかし、ビルの名の「カプセル」が示すとおり、まさにカプセルホテルのようなインテリア。テレビや冷蔵庫は造りつけで、洗濯機を置くスペースは無し。現在の日本人の体格からすれば狭小なベッドなど、使い勝手の悪さが目立ってきてしまった。
 接合部からの雨漏りや、建築当時は禁止されていなかった石綿の使用が判明するなど、住人の安全に係わるような問題も発生。ついに2007年、管理組合の総会で建替えが決まっている。

 ならば構造上可能なのだから「カプセル」を更新すれば良いではないか、と部外者は考えるが、それはも未だ一室も実現していない。住人からすれば、使い勝手が悪いまま更新しても無駄だと思われたのだろうか。


 それでも銀座近辺で、建築家はじめクリエイティブ系の仕事をされている方にとっては、現在でもカルト的な人気を誇る建物であるようだ。
 自宅は別に持っていて、銀座における個人事務所のような使い方をする住人が多いという。


 土木でも建築でも、基礎的なインフラ整備は一巡し、これからは維持管理の時代に入っていく。
 40年も前の、まだ「イケイケドンドン」だった時代に、斬新な構造と手法ながら維持管理までを見据えた建物を生み出した黒川紀章のアイデアは、未だ色褪せない。

 ただ、街全体でビルごと「新陳代謝」してしまうダイナミズムの前には、マンションの狭小な個人居室を交換していく発想は活かされなかった。


 古来、木と紙の文化に親しんできた日本人は、鉄やコンクリートという長寿命の新たな建材を得てもなお、スクラップ&ビルトの発想から抜けられない。数多くの建物が、人間のライフサイクルよりも短い期間で潰されていく。
 日本家屋を形作ってきた木や紙なら、燃やしてしまうか埋めてしまえば土に還るが、同じことを鉄やコンクリートでやろうものならどうなるか、自明である。

 もう間もなくこのビルは、建築史に輝かしい足跡を残して消え去るだろう。
 建築家の功績として、建物そのものが残るのかいいのか、普遍的で色褪せない設計思想や構造工法が残るのがいいのか。
 残念ながら理系の才能がなく、憧れながらも建築家になれなかった私には縁のない問い掛けではあるが、一度どなたか有名な方に尋ねてみたい。




住所: 東京都中央区銀座8-16-10

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