五橋駅前交差点の歩道橋

仙台駅前を通る愛宕上杉通り(奥羽街道)の途上、東へ向かう連坊小路・西へ向かう五橋通りとの交差点が「五橋駅前交差点」。五橋駅は、この交差点の直下にある仙台市営地下鉄の駅名。
「五橋(五ツ橋)」という地名は、愛宕上杉通り(旧清水小路)中央に流れていた水路と、交差する連坊小路・五橋通り両側を流れていた水路を渡る都合5つの橋から来ている。五弁の花になぞらえて「梅花橋」と呼ばれていたこともある。
現在「五ツ橋交差点」と呼ばれているのは、愛宕上杉通り西側を通る東二番丁通り(国道4号線)と五橋通りの交差点。何やらこちらがオリジナルのような印象だが、地名の由来となった五つの橋があったのは「五橋駅前交差点」のほうである。
ちなみに正式な地名や地下鉄の駅名・路線バスのバス停名は「五橋」となっているが、交差点名称や廃止された市電電停の名称には「五ツ橋」が用いられている。
仙台の市電が廃止されて長い年月が過ぎているが、ごく稀にニュースとして報道されることがある。
大概、愛好家の方が写真展を開いたとか、使用されなかった切符が大量に見つかったとか、そんな話題だが中にはシビヤなものもある。
例えば市電廃止後、お手軽に軌道敷をアスファルトで埋め戻してしまったがために、埋められた枕木が腐食。道路が陥没してしまった件などは、交通事故につながりかねず非常に危険だ。
比較的規模が大きいが特段ニュースにもならず、ひっそりと市電廃止後の年月を過ごしてきた遺構が、この五橋駅前交差点の歩道橋に残されていた。
現在の五橋駅前交差点の北側に、かつての「五ツ橋電停」があった。
電停の安全地帯(路面電車のプラットホーム)へは、一般的には横断歩道を介して歩道から接続するのだが、五ツ橋電停は直近にある横断歩道へ階段で接続していた。
つまり五橋駅前交差点の横断歩道には、両端歩道への階段とは別に、電停安全地帯へ降りる階段が上下線それぞれ2本設けられていた。
当然、市電の廃止で軌道や安全地帯は撤去。歩道橋から接続する階段も外されてしまったが、歩道橋の桁には階段があった頃の構造が残されている。
画像中央、歩道橋手摺下のH型の突起がそれだ。こちらは仙台駅方面の安全地帯へ降りる階段。反対方向(長町駅方面)へ降りる階段部分も、信号機の向こう側にある電照式標識の裏に隠れている。
他にも確証はないが、架線を吊っていたらしきブラケットや、階段撤去に伴い歩道橋高欄部分を継ぎ足して塞いだと思しき溶接痕が見られる。
私はこの歩道橋から程近い五橋2丁目に住んでいたことがあるが、世は既に平成。現在営業中の地下鉄南北線に加え、東西線の建設が既に始まっていた頃のこと。
かつて広島でも暮らしたことがあり、仕事でもプライベートでも路面電車を大いに利用してきたので、この五橋駅前交差点の歩道橋を見るたびに、仙台にも市電が残っていた頃に来てみたかったなぁと思う。
「五ツ橋電停」は、直下に地下鉄駅ができ名称と機能は引き継がれたが、地上出入口から地下コンコースに降り、さらにその下にあるプラットホームに降りなければ地下鉄電車には辿りつけない。歩道橋を上り下りするだけで乗れた市電と比べると、高速鉄道になったことで速達性は高まったが乗降まで含めた利便性で考えると、改善されたとは言い難い。
私の経験でも、仙台暮らしに慣れないうちは地下鉄を利用していたが、慣れてくると路側からダイレクトに乗れるバスのほうが便利なので、すっかりバスのへヴィー・ユーザーになってしまった。
東北随一の大都市にして、東北経済の牽引役を自認する仙台にとっては、地下鉄は必要欠くべからざる都市インフラだったのだろう。
その一方で、余所者の私ですら利用するのが面倒な地下鉄になってしまっていることを、行政の側ではどう考えているのだろうか。
今さら路面電車の時代に戻してくれなどと言うつもりはない。路面電車を捨てた代わりに、莫大な税金を投じて折角整備された地下鉄なのだ。もっと利用しやすく、活性化する工夫が必要なのではないかと思っている。
住所: 宮城県仙台市青葉区五橋1丁目6
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