新富町駅

東京メトロ有楽町線の駅(駅番号はY20)。
1980年に銀座一丁目~当駅間が開業し、その後1988年に現在の終点である新木場駅へ延伸するまで、当駅が終点だった。
終点の役目を終える前年、有楽町線は東武東上線との直通運転を開始。有楽町線電車は埼玉県の小江戸・川越まで進出した(通常運用の折返しは川越市駅)。
川越駅に程近い商業集積地に「新富町」なる地名があり、地下鉄が乗り入れてきた当初は「新富町から新富町へ」と大書きされたバナーが新富町商店街(現「川越クレアモール」)上空で多数揺れていた。ただ、実際に新富町商店街がある川越から新富町駅行き電車が出発していたのは、10ヶ月ほどの期間でしかない。
新富町駅は、勤務先から十分徒歩圏内にあるものの、方向としては自宅寄りでないため利用頻度は高くない。新富町駅周辺に用事があれば使うかなぁという程度。
しかし個人的には好きな駅の一つである。
有楽町線の駅は島式ホーム(ホーム両側に列車が発着)が大多数なのだが、氷川台・麹町・銀座一丁目・新富町だけは方向別のホームになっている。
うち、麹町・銀座一丁目は敷地の都合で上下二段構造のため互いの列車は全く見えない。氷川台駅は同じレヴェルにホームがあるが、地下鉄駅の常で太い中間支柱が目障り。
唯一新富町駅だけは中間支柱が一本も無く、軌道敷を軸にホーム階全体が単一の広大な空間として誂えられている。
前後の本線区間トンネルを建設する際、複線分の円形断面で一挙に掘り進める方式(シールド工法)を採用。線路間に柱を設置するとトンネルの大きさにほぼ等しいシールドマシン移動の邪魔になるため、天井梁のピッチを詰めて強度を上げ柱を排したのだそうだ。
地下なので写真撮影の条件は厳しいものの、ホーム反対方向の電車サイドビューや床下機器・台車の観察にはもってこい。
並列する島式ホームの内側2線を使っている和光市駅でも同じように観察はできるが、線路の間隔がギリギリまで狭められていて、車輌全体を眺めるには距離が近過ぎる。
一方、新富町駅は線路の間隔に余裕があり、適度に離れているのが良い。
そんな新富町駅の光景も、或る工事で一変してしまう。
概ね2011(平成23)年迄に東京メトロ有楽町線の各駅ではホームドアの整備が進められたが、設置が大幅に遅れていた千川及び新富町以遠の各駅のうち、新富町・月島・新木場に2013(平成25)年春、ホームドアの機器が設置された。
安全性を向上させ、事故に伴う遅延および運休を防ぐためには致し方ないこととは言え、以前と比べるとホームドア機器が駅空間の視界を遮り、見晴らしが悪くなったのは否めない。
東京でも珍しい地下空間の光景が、時代の流れで変質してしまうのは惜しいことである。
東京メトロ副都心線~東急東横線の直通運転が始まる直前、東武鉄道へ乗務員訓練用に貸し出されていた東急5000系電車(10両固定編成の4000番台車) は有楽町線の運用にも就き、当然ここ新富町駅にも顔を出していた(現在は廃止)。
その時点で既に、ホームドア機器の根元を挿し込むための穿孔工事が終了。ホーム上には穴を仮に塞ぐための蓋が並んでいたが、まだ機器は搬入されていなかった。
まだ見晴らしが良かった新富町駅へ、ごく短期間乗入れていた東急線電車の記録を残しておくべきだったと後悔している。
ホームドアが稼働し始めても、大人の目線であればホームドア機器の上から電車を観るのに苦労することはない。
電車好きで、なおかつ銀座や築地に御用がある方。ちょっとルートを変えて、一度は新富町駅を利用されてみては如何だろうか。
住所: 東京都中央区築地一丁目1-1
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