旧ブラッスリー銀座ライオン松坂屋別館店

サッポロビール系列の老舗ビヤホール「銀座ライオン」が出店していた飲食店。
銀座で「ライオン」と言えば、地下鉄銀座駅直結・日産ギャラリー地下の5丁目店か、現存するビヤホールとしては最も古い銀座7丁目店が有名で、両店舗とも週末は猛烈に混雑する。
しかしここ「松坂屋別館店」は中央通りから1本奥に入った路地に面しており、比較的混雑度合いが緩く入店し易いだけでなく、ロケーションの悪さを補うべくランチ時間帯に独自のポイントサーヴィスを実施するなど、穴場的な良店だった。
松坂屋銀座店跡地の再開発(別項「銀座六丁目10地区第一種市街地再開発事業」参照)スタートを前にして、この「松坂屋別館」も全面改装のため2012(平成24)年8月末を以て一旦閉鎖。残念ながらこのお店も退去を余儀なくされてしまった。
現在の同ビルは大幅に模様替えがなされ、メガバンク・三井住友銀行銀座支店が移転・入居している。
なお隣接店舗だった銀座5丁目店も、フロアを確保していた自社所有の「サッポロ銀座ビル」建替えに伴い、2014(平成26)年3月末から長期休業入り。2016(平成28)年に予定されている新ビルの竣工・店舗再開まで、銀座の中心地から「ライオン」の看板が消えてしまうのは、超々ビール党を自認する酒呑みとしては寂しい限り。
「ランチのチョイスに迷ったらライオン」が、同僚との合言葉になっていたほど、毎週1~2回は通っていた中で、今でも忘れられない一風変わった客がいた。
恐らくは代紋ではない、会社のものらしき襟章をつけた上着を纏い、しっかりとネクタイを締めた若い男性2人が食事をしている。
しかし食事中一言も口をきかない。仕事の話をするでもなく、バカ話をするでもなく、ひたすら黙々と食べている。
奥に座った側が比較的早く食べ終わったが、黙ってもう1人が食べ終わるのをじっと待つ。そちらも食べ終わると、どちらともなく立ち上がり、やはり黙ったまま片方が勘定をまとめて払い、出て行った。
仕立のいい背広を着ている割には、持ち物はリュックサックに何故か脚立。一体どんな仕事をしている人なんだろうと、2人が出て行った後で同僚と話題にしてしまった。
世の中には、世間一般に知られていなくても重要なお仕事をされている人は数多いる。私自身も建設業界に属しつつ、保守本流ではないニッチな、されど必要不可欠な分野の仕事をしており、我が子に仕事の概要や意義を説明するのに苦労する。
安易に不思議だとか変だとか、思考を短絡しないほうがいい。
きっと個人の狭い見聞や価値観だけでは推し量ることのできない、特別な何かを担われている人々なのだろう。
とは言え、やはりユニークな方々も中にはいらっしゃる。
私が今までレストランで見かけた人のうち、最も衝撃的だったのは、料理を挟んで真剣に世界征服について語り合っている初老と中年の男性2人組。
世界征服を「仕事」といっていいものかは議論の余地があろう。また残念ながら、その後世界が何者かに征服されたという話は、寡聞にして存じ上げない。
あの2人は今でも何処かの空の下、いやレストランの屋根の下、テーブルを囲って世界征服のプランを練り続けているのだろうか。
「ブラッスリー銀座ライオン松坂屋別館店」で見掛けた男性客を思い出しついでにそんなことを連想し、独り笑いしてしまった。
住所: 東京都中央区銀座5-8-10 銀座松坂屋別館2F(現三井住友銀行銀座支店)
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