北陸新幹線第2魚津トンネル
トンネル技術者の、誠実かつ情熱的な仕事
2014年06月23日

2015(平成27)年の開業を目指し、工事が佳境に至っている北陸新幹線。
うち富山県内区間の「第2魚津トンネル」は、土被り(トンネルから地表面までの厚さ)が極めて薄く、地盤沈下等の影響を及ぼさぬよう細心の注意を払いながら掘削が進められ、5年の工期を経て2008年に貫通を果たした。
私は以前、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(旧鉄道建設公団)の業務に携わり、またここのように土被りの薄い現場や、直上に他の線路や道路・住宅地がありミリ単位の沈下も許されないトンネル掘削に用いる「補助工法」の材料を扱った経験を持つので、この工事にも僅かながら関わりがある。
北陸新幹線の開業を心待ちにする石川県に本社を置く地方紙・北國新聞社が、2014(平成26)年に挙行されたレール締結式の報道に関連して、『「1分」のトンネルに5年 』なるタイトルの記事を掲載した。
一般紙(誌)の土木関係記事でありがちな表現が、上記のように橋やトンネル通過に要する時間(概ね分単位。長くても数時間程度)と、施工に要した時間(間違いなく年単位。どうかすると10~20年以上経る)を対比する方法。書き手の意図としては、字面でコントラストを演出したいのだろう。
しかし、比較しようにも余りに格差があり過ぎてピンと来ないのに加え、そもそも比較対象として並べること自体無理がある。というか、意味が無い。
1分で通過してしまう短いトンネルであろうと、そのトンネルがなかったが故に今まで延々遠回りを強いられてきたのである。また5年・10年(別項・北越急行線「鍋立山トンネル」は23年)かかろうが、必要性・緊急性があるからこそトンネルが穿たれ橋が架けられたのであり、本来は「難工事区間に5年の工期を掛け、この区間が○○分から1分にまで短縮された」と書き著すべきなのだ。
トンネル屋さんの心情に寄り添うなら、「1分」という通過時間だけが強調され過ぎるのは、「短い区間に5年も時間を掛けやがって」「一体幾ら税金を使っているんだ」との批判が潜んでいるようにも読み取れる。
勿論、公共事業の投資効果を極大化するには、工期を可能な限り短くして直接投資額を縮減し、投資効果を早期に発現させるしかない。また投資効果の見込めない区間に新幹線や高速道路を通す……なんて事業は、国鉄末期の惨状・道路公団の解体プロセスを見るまでもなく絶対にやってはならない。
トンネル技術者の立場では、勤務先または元請企業が受注した仕事を、精一杯短工期で、かつ無事故で設計通りに仕上げる以外に「出口」はない。
「1分」に要した工期・投資額が効果に見合うものだったどうかは、納税者の立場で行政もしくは政治家と議論すればいいことであって、トンネル屋さんにぶつけるのは筋違いである。
何はともあれ、かつて補助工法を用いた別の整備新幹線区間で発生した陥没事故や、断層破砕帯・高土圧区間での施工における進捗停滞もなく、私個人の印象としては極めて順調に貫通したトンネルの竣工を、ひとまず祝うこととしよう。
誠実で情熱的なトンネル技術者の仕事を「価値ある投資」にするか、「無駄な公共事業」に貶めるかは、引き渡しを受けて新幹線の運行に携わるJR各社および沿線自治体の手腕に掛かっている。
住所: 富山県魚津市湯上地内他 ※電話番号は鉄道・運輸機構鉄道建設本部北陸新幹線第二建設局魚津鉄道建設所
電話 : 0765-88-2700
関連リンク
タグ
地図
関連情報