鶴見橋西詰

昨今セクハラや、更に深刻な性犯罪に於いても、男性が男性に対し暴言を吐く・男性が男児を襲う…といった例が少なからず発生している。
厚生労働省も、職場環境の維持や雇用保護を指導・監督する立場から、同性同士の性的嫌がらせについて注意喚起を促している状況。また我が子が通っている小学校において、現職警察官を招いて開催された防犯講習会の場でも「男の子さんだからといって安心できない世の中になっている」と釘を挿された。
男が男に対して性的な欲望の捌け口を求めるのは、別に今に始まったことではない。
私自身、悪名高い埼京線の車内で痴漢に遭った経験と、ジョギング中に初老の男性に付きまとわれて怖い思いをした苦い思い出がある。
これまで埼京線の車内で痴漢に遭い困っている女性を2度ばかり助け出し、痴漢に強く警告したことがある(駅員および警察に突き出すのは、女性の申し出で差し控えた)。
しかしいざ自分が「触られ」ていると、声を出せないものである。性的な意図のもとで触っているのか、偶然手が入ってしまったのか、明確な区別が付け難い。また猛烈に混んでいると誰の手が何処から伸びているのか全く分からない。
あぁ女性が声を出せないのはこんな状況なのだなぁと妙な納得をしつつ、結局不快な手触りの原因を掴めぬまま、電車を降りることになってしまった。
初老のストーカーに襲われたのは、まだ20代だった前世紀の広島在勤時代。
旧市街を流れる京橋川(太田川の支流)沿いの遊歩道を周回する、3キロないし4キロほどのコースを毎日走っていた。
コース脇にラブホテル街があったり、時に売春目的で立っている人物がいるようなポイントもあったので、そもそもあまり風紀が良い場所だった訳ではない。
そんな区間はさっさと走り過ぎ、交通量の多い平和大通りに面した鶴見橋西詰の広場で15分ほど休憩を兼ねたストレッチをして、橋を渡って対岸のコースで戻るのが日課だった。
或る夜のこと。ストレッチをしている私に、声を掛けてくる人物がいた。
暗いので表情を完全に読み取ることはできないが低めの穏やかな声で話し、小ざっぱりした身形の初老の男。
最初は、暇な老人が散歩がてら暇つぶしをしているのだろう程度に考え、別に気にも留めていなかったのだが、その日からほぼ毎日ストレッチの場所で出逢うようになった。
他愛のない会話を求めてくるだけだが、さすがに毎日声を掛けられるのが疎ましくなり、ジョギングの時間を思い切って夜半過ぎに繰り下げた。
前の日よりも3時間ほど遅れてストレッチ場所に着いたので、まさか今夜は来ないだろう思ったら、「今日は遅いんですねぇ」と、例の男が声を掛けてきた。
偶然ということもあるかもしれないし、もしかしたらランニングコース上に家があって見張っているのだろうかと考え、次はコースを変えてみた。右岸→左岸で走っていたのを、左岸→右岸と逆回りにし、スタート時間を再び早めにしたのだが………
その日もやはり「こんばんは~」……。
その後も折り返し点を一つ下流の比治山橋に変えたり、スタート時間をランダムにしたり、的を絞らせないよう努力しても、毎回のように声を掛けられる。
会話の内容も、どうでもいい世間話から
「どんな仕事なのぉ」
「鍛えるっていいよねぇ」
「どこに住んでいるのかなぁ」
「いいガタイしてるよね。背も高いしぃ」
と深入りしてくる。
こっちもストレッチに夢中になっているので、適当にあしらっていたのだが、とうとう聞き捨てならない言葉を口にした。
「ねぇ、君の裸が観たいんだけどぅ」
その日を最後に、私はジョギングを止めた。
自分の怠惰で続かなかったのならまだしも、ストーカーが原因で走れなくなるとは想像すら及ばず、剥き出しの欲望を垣間見た恐怖とともに悔しさが募った。
我が家の近所でも、夜間に走っている/歩いている人が多いが、世代・性別を問わずお気を付け願いたいものである。
住所: 広島県広島市中区東平塚町10 ※電話番号は当地を管轄する広島中央署弥生町交番
電話 : 082-243-8949
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