ホルモン亭大ちゃん
老舗ホルモン焼き屋で得た人生を左右する大ヒント
2019年10月05日

神奈川県厚木市が誇るB級グルメ「シロコロ・ホルモン」の銘店。地元の紹介サイトでは、並み居る有名店の数々を押し退けて筆頭を飾っている。
シロコロ・ホルモンとは、食肉処理されたばかりの豚の腸を、割いて平板状にすることなくリング状に切り分け、かつ洗っただけの生で提供される焼肉。
新鮮な食感と、豊潤な脂身の旨味を堪能できる。
年に一度、近隣の文化施設を会場にしての仕事があり、終了後に当店で挙行する慰労会は恒例行事となっている。
焼肉と酒を堪能するのみならず、この店では人生を左右する大きなヒントを与えられた。
当店の東側は、建屋の前に駐車スペースを備えた貸店舗となっているが、2017(平成29)年当時は老朽化した建屋を解体した後、大型の杭打機を入れて基礎工事の真っ最中だった。
例の通り慰労会で訪れた際は、既に夕刻でその日の工事は終了していたが、機動性を欠く杭打機は現場に残されたまま(クローラを装備しているが、現場内移動が限界)で、焼肉を食べているうちに暑くなって窓を開けたら、まさに目の前に鎮座していた。
「うわっ」
その存在感に圧倒されると同時に、万が一こちらへ倒れてきたら逃げ場がないなぁと、圧迫感を覚えた。
翌2018(平成30)年の夏。かねてからチャレンジし続けてきた技術士建設部門の2次試験にて、このような問題が出された。
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住宅地を通る幹線道路(幅員25m)の区域内に、15m四方、深さ30mの立坑築造工事を、ソイルセメント地下連続壁による開削工法で計画している。当該箇所は地下水位が高く、軟弱地盤である。
(1)当該工事を実施するに当たって、周辺の環境に影響を与えると考えられる事象を3つ挙げ、それぞれについて着目した理由と事前に調査すべき項目を述べよ。ただし、振動と騒音は除くものとする。
(2)前項で上げた事象のうち2つについて、環境への影響の低減に効果的と考えられる具体的な対策と施工管理上の留意点を述べよ。
(※筆者注)
ソイルセメント地下連続壁:
巨大な3軸または5軸の掘削機で現場土砂とセメント系固化剤を攪拌し、地中に構築された壁体。
開削工法:
地上からバックホウ・クラムシェル等で掘り下げて地下空間を築造する方法。掘削現場周囲の土砂が崩落せぬよう、土留壁として鋼矢板やソイルセメント地下連続壁を施工する。
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現場経験が少ない技術者は、巨大な重機が発する騒音と振動が周辺環境に及ぼす影響は想像できても、その他の問題については思い至らず、試験中に頭が真っ白になってしまったかもしれない。
この問題に接した私は、真っ先に思い浮かべたのが前年に見た、「ホルモン亭大ちゃん」に近接して留め置かれた杭打機の光景だった。
あの圧迫感・不安感は、まさに周辺環境への(悪)影響である。
そして論文では、巨大な掘削機が現場入りすることに伴う圧迫感・不安感に加えて、日照への影響を指摘。
具体的対策として、高架下など高さ制限のある現場で用いる低空頭の掘削機械で施工することを記した。
試験結果は、その他の論文を含め最高の「A評価」。初冬に実施された口頭試問も突破し、晴れて技術士となることができた。
美味しいお肉とお酒を堪能させてくれるのみならず、国家資格合格に至る重要なヒントをあたえてくれた「ホルモン亭大ちゃん」には、感謝に見合う言葉が見つからない。
またエンジニアたるもの、単に欲望に任せて鯨飲馬食するのみでは能が無い。
目にするもの、体験することを須らく血肉にする程に、知識獲得に貪欲でなければ務まらないのだと思い知った。
そしてまた今年も、エンジニアとしての感謝の気持ちと、ホルモンの滋味への渇望感を胸に、「ホルモン亭大ちゃん」の暖簾を潜るのである。
住所: 神奈川県厚木市旭町1-8-8
電話 : 046-228-9333
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