
PTが世に出る迄。
他のクルマがどんなんかは知らないが、
意外と奥の深い経緯があるのだ。
コイツが『見てくれ』だけのパイクカーでは無いって事を
今回は紐解いてみよう。
俗に『ミニバン』ってカテゴリのクルマが世に出て久しく、
何がミニやねん!!と心の中では皆思っているんだが、
そのルーツが米国で、フルサイズバンより小さいからミニなんよ。
で、このミニバンの元祖『ヴォイジャー』を創り出したのがクライスラー。
ミニバンが北米で流行し、『Mam's Van(だったかな?)』と呼ばれる様になったものの、
女性が運転に疎いのは万国共通。
もっと小型で使い勝手の良いクルマを…という世間のニーズを受け、
頭上空間を広げる必要があるものの、着座姿勢を立ち気味にすれば
室内が広がる(様に錯覚する)事を発見したクライスラー。
『neon』という手頃な大きさのプラットフォームもある事だし、というノリで
PTへと続く『アップライト』で『トール』なクルマのスタディが始まったんである。
1994年1月。デトロイトモーターショーでコンセプトカー『Expresso』が発表。
90年代っぽいヌメッとした気味の悪いフォルム(当時で云うポップな感じ?)。
残念な事だが、こいつがPTの始祖モデルである。
と云っても、面影を辛うじて残しているのが
垂直気味に切り落としてあるインパネ位ってのが救い。
1997年1月には『Pronto』が登場(プリムスブランド)。
今で云うクロスオーバーの先駆けっぽいスタイル(クロスポロとか)。
『アップライト&トール』を遵守しつつ、大分クルマとして無理の無いスタイルに
磨き上げられている。
同年世に出た『プロウラー』の顔をパクった逆三角の特徴的なグリルと、
後付けした様なバンパーにPTの面影を見ることが出来る。
(が、多分レトロとかホットロッドを狙った訳じゃなく、単にデザイナーの趣味だと思う)
続く1998年、随分アールデコったいでたちの『Pronto』がジェノバモーターショーでお披露目。
3ドアだしアップライトでもトールでも何でもないのが玉に瑕だが、
ここでようやくPTの持つ『レトロ感』が醸し出されてきた。
VWのニウビートルに対するクライスラーの回答(挑戦?)って触れ込み。
先のProntoとは顔が若干似てる位なのに何故同じ名前かと云えば、
この車種がいつの間にやらグローバル戦略車という役割まで持たされてしまい、
「世界で勝負するにはどんなスタイルを持つべきか?」という命題を背負わされた事に起因。
「どうせなら世界中で愛されてる『Coca Colla』や『Levi's』みたくしたいよね」という思いから、
「これがアメリカじゃ!!」と強気に出てく方向へ。
という事で、アメリカ独自のクルマ文化である『ホットロッド』を売りにしよかと相成った。
(本国で成功してたプロウラーの存在もそれを後押ししてたと見ている)
評判はかなり良かったらしく、これでエクステリヤの方向性が確定。
そして1999年、5ドア版として『Pronto Cruiser』の名を授かった其れは、
現在のPTほぼそのままの姿で世に登場。
(違うのはルーフ部がカンバストップってトコ位)
その後は推して知るべきだが、これらの経緯から浮かび上がるのは
パッケージとしてのコンセプトが先に在り、外観は後から付いてきたと云う事。
この点が他のレトロチックカーとの大きな違いであり、
120万台という結構な生産台数を弾きだすに至った大きな要因だと思う。
あと、企画から生産開始まで6年位を費やしている点も素敵だ。
今時(でも無いけど)そんなクルマって中々無いよ。

Posted at 2011/05/10 21:35:07 | |
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